純白のハート(3)
色々考えているうちに、バレンタインデー当日がやってきた。
私は事前にテーマパークの情報を徹底的に調べ上げ、どんなルートを通れば効率的にまわれるかとか、デートの時の振る舞い方だとか、そういうものを、恥ずかしいくらいに一生懸命考えていた。
思えば、私自身、デートなんてしたことはないのだ。
まあこれも、暫定的にデートなんて呼んではいるけれど、別に美冬と付き合っているわけじゃないんだから、厳密にはデートじゃないのかもしれないし、よく考えたらこんなに意識してしまっている方がおかしいのだけど。
美冬とは朝早くに、高校の最寄り駅で待ち合わせた。
美冬には行き先を告げずに、サプライズを行う算段だったので、最後までバレずに目的地に着けた時は、既に軽く達成感に包まれてしまっていた。
美冬はなぜか駅に着いた途端、私の手を握りしめてきた。
びっくりして、心臓がドキドキしてしまった。
朝からドキドキし出した私の心臓は、その後も全く休ませてもらえなくて、危うく止まってしまうんじゃないかと思われた。
最大の誤算は、美冬が絶叫系の乗り物が大好きだということだった。
お化け屋敷と言い、これと言い、本当に美冬と私は、正反対のところもたくさんあるのだなと思った。
私は恥ずかしいことに、今度は自分の方から、美冬に手を握ってもらって、何とかアトラクションに乗ることができたのだった。
夕方頃になって、辺りが暗くなってきた頃、多分色々思い出したらしい美冬は、随分と切なそうな表情をしていた。
私が、ご飯でも食べようと提案すると、美冬は言ったのだ。
「……真雪、ごめん。一つだけ、お願いしてもいいかな」
「ん、いいよ。なに?」
「手、繋いでも、いい?」
私は、手を差し出した。その手を、美冬がぎゅっと握りしめてくる。
美冬の手は冷たくて、そして、何だか電気が走るみたいに、ピリピリするのだった。
私はこれが何なのか、知っていた。だけどこの感覚に名前をつけてしまえば、多分それで終わりになってしまうから。
だからもうしばらくは、名前をつけずにいようと、そう思った。
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