嫉妬じゃないなら、なんなんだ(2)
二人がいつもどこで待ち合わせているかは、拓巳が情報を持っていたから、見つけるのは簡単だった。
二人は、いつも皆が使っている正門ではなくて、校舎の裏の門から、わざわざ出ていった。
黒か白かと言われたら、これは黒にしか見えなかった。
裏門は普段、あまり使う人がいないから、道の脇に草がたくさん生えていて見通しが悪い。
しかしこの時に限っては、私達の姿をうまい具合に隠してくれるから、都合が良かった。
松岡先輩と真雪は、いつも部活の中で見られるような雰囲気とは違い、確かに明らかに親密そうだ。
時折真雪が見せる、子供のような無防備な笑顔は、私が今まで見たことがないものだった。
なぜか、胸がキュッと締め付けられる。そして喉が渇いてくる。
なんだろう、自分から言い出したことなのに、私はもう帰りたくなってしまった。
真雪のあんな顔、見たくない。
「二人、やっぱり良い感じだよな」
私の気持ちなどつゆほども知らず、拓巳は呑気にそんなことを言う。
私は、何も言う気になれず、ただ下を向いていた。
真雪達は、そのまま裏道から大通りの方に抜け、隣駅の繁華街の方に歩いて行った。
もうここまで来たら途中で帰るわけにもいかず、私達も二人の後をついて行く。
「二人、どこに行くのかな」
私は不安を口にせずにはいられない。
自分から言ったこととはいえ、真雪の秘密を暴くことが、怖かった。
二人は繁華街の大通りを進み、道沿いにあるチョコレートの専門店と紅茶の専門店を覗いて、何やら購入していた。
「普通の買い物かな」
そう口にする拓巳も、なんだか不安げな表情だ。
辺りは少しずつ暗くなってきていて、繁華街は夜の光を放ち始めていた。
ここ、前にも真雪と来たな、なんて、こんな時に思い出す。
二人は次に、酒屋さんに入っていった。
流石に制服姿の私達は、そこには入れない。
ドキドキしながら外で待っていると、三十分後くらいに二人は出てきた。松岡先輩の手には細長い紙袋があった。
その後二人が向かった先は、繁華街の大通りから一本外れた道を通り、近くに大きい公園が見える場所。
そこにはホテルがあった。有名なレストランが入っているような、まあまあ高級なホテルだ。二人はそのまま、エントランスから入っていく。
もう私達の追えるような領域じゃなかった。
「このこと、他の人には黙っておこう」
「うん」
私と拓巳は、二人して暗い顔をして、夜道を歩いた。
松岡先輩と真雪がどうしてあんなところに入っていったのかはわからないけれど、高校生の私たちにとってその出来事はあまりにショッキングで、刺激が強過ぎた。
文化祭まであと二週間ちょっと。
なのに、松岡先輩にも、真雪にも、なんだか顔を合わせるのが気まずくなってしまった。
どうして真雪は、松岡先輩とあんな場所に行ったんだろう。
気になって仕方ないけど、聞くわけにもいかない。
まさか、尾行していたなんて、言えるわけがないし。
あの日以来、私はますます拓巳と一緒にいるようになった。
共犯者というか、このもやもやした気持ちを共有できる、唯一の相手だったから。
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