別にいいよ。暇だし~平和な時代の勇者指南~

高井カエル

第1話


 とある孤島。周りは荒れ狂う海。

 ここは、魔王見習いのビエリが経営するダンジョンだ。その最上部。ビエリの部屋。つまり、ラスボス戦の会場とも言える。

 

 薄暗い部屋に響く。怪物の咆哮。

 そう。これは魔王の……否。ヴァルハザクだ(モンハン参照)。


「おい」


「あ、瘴気耐性つけてくんの忘れた」

「お前なあ。それでヴァルハの歴戦クエとかまじでナメてるだろ」

「しかも、ハンマーww。機動力ww」

「ねえ、あんたら。落ちたらマジで殺すわよ」


 魔物3匹と姫1人。モンハンを始めてすでに6時間が経とうとしている。


「……。おい!」


 ビエリが一喝。


「何すか」


 魔物が気だるそうに答える。


「『何すか』。じゃない! どうしてお前らはそうのん気なんだ。それに、姫。どうして誰もお前を助けに来ない」


「うち、妾の娘だから、別にいなくても王国的は困らないのよね」


「……え? それ、先言ってよ」


「第一、 場所が悪いんすよね。今どき、こんな孤島にダンジョン建てたって、誰も来ないっす」

「だって、不気味な方がいいじゃん……」


「それに、入場料8000ブルって、デゼニーランドより高いじゃないっすか」

「それなww」

 と、姫。

「だって、色々元取らなきゃだし……」


「あと、入り口のゴーレム強すぎっす。あれじゃ、誰もここまで来れないっすよ」

「せっかく、ヘッドハンティングしてきたのになぁ……」


 ビエリの尻尾はシュンとしおれている。デカくてごつごつした体と違い、メンタルは豆腐だ。


「はあ。しょうがない。CM打つか」


「広告費だって、ばかになんないすよ」


「そこなんだよ~……」


 そう。世は不況。

 魔王の一族とはいえ、安寧の将来が保障されているわけではないのだ。

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