第154話7-9エマ―ジェリアの奮闘(閑話)


 うんしょっと。


 まったく、いくらおごりだとは言え飲み過ぎですわ!

 なんで私がミーニャの世話をしなければいけないのですの?


 魔王の魂との連結が切れてしまっても多少はお酒が飲めるのでしょうけど、以前ほど飲めなくなった元魔王のミーニャは酔いつぶれ私たち女性陣の部屋に連れ帰る事になった訳ですけど、何故私が!?



 ―― あー、エマ―ジェリアさん、ミーニャ酔いつぶれちゃったみたいですから僕が部屋に運びますよ。まったく、昔から面倒ばかりかかるんだから‥‥‥ ――



 そう言ってソウマ君は自分の部屋にミーニャを連れていこうとするものだから思わず私が面倒を見ると言ってしまいましたわ。

 セキはセキでもう少しリュードさんと飲み食いするとか言っているから仕方なく部屋までソウマ君に連れてきてもらってベッドに寝かせてもらいましたが、何で私が彼女の面倒なんか!



 本当はソウマ君と将来についていろいろとお話をしなければいけないと言うのに。


 わ、私だって仕方ないと思っているのですわ。


 ソウマ君に私のあんな恥ずかしい所を見られてしまえば、もうお嫁になんていけませんわ。

 だから責任とってもらってソウマ君にお嫁さんにしてもらうしかありませんわ。




 ‥‥‥と、年下の旦那様。


 や、やっぱりその、私があの時とかリードするべきですの?

 サキュバスのリリスとソーシャは「補給」とか言って夜の街に繰り出していきましたわ。

 彼女らはそう言った方面は特に詳しいですもの、少し聞いてみたい事もありましたのに。

 

 や、やっぱり初めては痛いとか、上手く行かないとかは神殿に有った指南書をこっそり読んで知識はありますが具体的にはどうかと言うのがもの凄く気になりますわ。



 だ、だって私だって初めてですもの!



 ああ、でも年上として、年長者として毅然としなければいけませんわ。

 多少の痛みだって耐えなければいけないですし、そもそもその後は慣れればそれはそれは素晴らしい物だと書いてありましたわ。


 本来ならシェル様にもらっていただきたかったですが、こうなっては仕方ありませんわ。


 そ、それに夫婦になれば子供も授かることになりますわね‥‥‥

 わ、私とソウマ君の子供‥‥‥



 きゃーっですわぁっ!!



 や、やっぱり最初は男の子が良いですわね?

 そして二人目は女の子。

 一姫二太郎とも言われますが、やっぱり三人目も欲しいですわね?


 そ、そうするとやはり私はソウマ君にそれだけされちゃうわけですわね?



 きゃーっ、きゃーっ!!



 で、でも、これは子供を作る為の神聖な儀式ですわ。

 決してやましい事ではありませんわ!


 それに幸せな家庭を持つためには必須の事。

 そうなるとこうしてはいられませんわ!



 * * *



 こんこん。



 「そ、ソウマ君いますの?」


 「はい? いますけど、どうしましたエマ―ジェリアさん??」



 がちゃり。



 ソウマ君は装備を外し身軽な格好ですわね?

 まだセキも戻ってきていないし、そうするとリュードさんもまだ下ですわね?

 であればソウマ君とちゃんとお話しするいい機会ですわ!!



 「ソウマ君、少しお話がしたいのですわ。良いですの?」


 「ああ、はい、良いですよ。どうぞ」


 そう言ってソウマ君は部屋に私を引き入れてくれますわね。

 まあ立ち話も何ですものね‥‥‥



 って、だ、男性の部屋にこんな時間に私ったら!?



 「あ、あの、その‥‥‥」


 「ああ、すみません、この部屋椅子がないんですよ。ベッドで良いですか?」



 なっ!?


 

 そ、そんないきなりベッドに誘われるだなんてですわ!!


 だ、だめですわよ!

 まだ心の準備が‥‥‥

 じゃ、じゃなくて、婚姻前にそのような事、破廉恥ですわ!



 「あ、そ、その‥‥‥ やっぱりその、後でですわ!!」



 思わず顔から火が出そうになって振り返り扉に向かおうとすると足を引っかけて転びそうになってしまう!?


 

 「あっ、ですわっ!」



 はしっ!


 抱きっ!!



 「おっと、危ない。大丈夫ですかエマ―ジェリアさん?」


 「なっ!?」



 な、何と言う事でしょう!

 ソウマ君が意外と力強く私が転ぶのを助け出し、引き寄せ抱きしめてくれますの!?


 そんな、と、年下なのですのに!?

 思わず抱きしめられてドキッとしてしまいますわ!! 


  

 「ふう、ここって狭いから足元にベッドの足とかひっかっかりやすいんですよ。大丈夫ですか?」


 そう言いながら私をベッドに座らせてくれるソウマ君。

 もうすぐ十三歳になるはず。

 少年の癖に年上の私をこうも簡単に引き上げベッドに座らせてくれている。


 あの頼りなさそうだったソウマ君がこの一年近くでこんなに男の子らしくなるなんて‥‥‥

 思わず赤面してしまい、ソウマ君の顔が見られませんわ‥‥‥



 って、私ったら何処見ているのですのぉっ!?

 そ、ソウマ君のお腹の下の方に視線が行ってしまいますわ!!



 そ、ソウマ君だってもうすぐ十三歳。

 私は勿論もう子供を作れる身体。

 ものの本では十三歳にもなれば男の子は、その、子供を作ることが出来るらしいですわ。


 そうするとソウマ君はもう‥‥‥



 「ソ、ソウマ君、私初めてですのよ? や、優しくしてくださいですわ‥‥‥」


 「はい? 何がですか?」



 ぼふっ!



 ソウマ君が私の隣に腰かけて来ますわ!

 恐る恐る見るとにこやかな笑顔。

 と、年下の癖になんて余裕なのですの!?



 「ソウマ君にはちゃんと責任取ってもらいたいのですわ。だから私の実家に来てもらいたいのですわ‥‥‥」


 「エマ―ジェリアさんの実家ですか? 勿論良いですよ?」



 なっ!?

 即答!!!?

 と言う事はちゃんと理解していると言う事ですわね!?

 私の恥ずかしい所を見られた責任を取って私をお嫁さんにしてくれると言う事ですのね!?


 フェ、フェンリルさんを大切に思っていて、その、姉弟でそう言う事をしてしまう関係だとばかり思っていましたが、ちゃんと責任を取って私を受け入れてくれると言う事ですのね!?



 「そ、そのフェンリルさんは良いのですの?」


 「姉さん? ああ、姉さんは(エマージェリアさんの実家に遊びに行く事わざわざ聞かなくても)いいんじゃないですか?」


 「えっ? ほ、本当にですの? ミ、ミーニャはどうなりますの?」


 「ミーニャ? うーんどうかな、いくら幼馴染とは言え(エマージェリアさんに呼ばれもしないで遊びに行くのは)関係無いからなぁ‥‥‥」



 ソウマ君、ミーニャの事はただの幼馴染と言う事ですの?

 そう言う気持ちはないと言うのですの?

 


 「じゃ、じゃあ、私の実家に来てくれると言うのは‥‥‥」


 「ええ、勿論喜んで」




 ずっきゅぅーん!!

  



 ほ、本当ですの!?

 この十四年間男の子に全く縁の無かった私を、しかもフェンリルさんやミーニャと言うステキな女性や悔しいですが可愛らしい女性をさしおいて私を選んでくれると言うのですの!?


 「そ、ソウマ君本気ですの? いいのですの? 私ソウマ君を信じても良いのですの?」


 「はい? (遊びに行く約束なら)勿論ですよ??」


 

 うっ!


 ここまではっきりと、しかもこの状況を理解しての物言い!

 私信じちゃいますわよ? 

 ずっと彼氏とかいなかったのに本気にしちゃいますわよ?

 わ、私だってソウマ君ならいいと思っていましたから‥‥‥



 「で、でしたら、その、しても良いですわよ‥‥‥ ソウマ君にならされても良いですわよ‥‥‥」



 なっ、何を言っているのですの私はぁーっ!!

 こ、婚前にそんな事!

 で、でも、ソウマ君が私の事をぉ!

 信じていいだなんて、もう私ソウマ君になら何されてもいいかもしれませんわぁー!!


 「あっ、エマ―ジェリアさん‥‥‥」


 ソウマ君の手が私の顔の横にぃ―っ!!

 ああ、どうしましょう、本当にされちゃうのですの?

 今ここで私とソウマ君は大人の階段上っちゃうのですの?

 こ、婚前だと言うのに、しちゃうのですのぉっ!?



 さわっ‥‥‥



 ああっ! 

 そ、ソウマ君の手がもみあげに触れているのですわぁーっ!!




 がちゃっ!



 「ふぅううぅぅ~、うっぷ、もう飲めねぇ~」


 「なぁ~に弱っちい事言ってるのよ! さあソウマも含めて飲み直しよぉ‥‥‥ あ、あれ?」




 「////っ!?」




 な、何でセキまでこの部屋にですのぉっ!?




 「ああ、リュードさん、あれ? セキさんも? まさかここで飲み直しですか??」


 「あー、ソウマ。なんでエマがここにいるのよ?」


 すっとソウマ君の手が頬に近くから離れていきますわ。


 「あっ‥‥‥」



 「ああ、エマ―ジェリアさんが実家に遊びに来てくれって言ってくれていたんですよ~。 それでさっきエマージェリアさんが転びそうになった時にこいつが髪の毛にくっついていたから取ってやった方が良いかなって。



 そう言って先ほどの手を開くとそこから小さな蜘蛛がのこのと動いていますわね‥‥‥

 ソウマ君は窓を開けてそれをひょいっと投げ捨ててこちらに戻ってニコニコ顔で続けますわね。



 「いやぁ、ユーベルトって行った事無いから一度行って見たかったんですよね? アイミたちが作られているって聞くし、チョコレートの発祥の地だって聞きますもんね。姉さんに聞かなくたって行くとなれば絶対についてくるだろうし、ミーニャは多分その頃折檻部屋でしょうし」



 「へ? あ、あのソウマ君、私の実家に来ると言うのは?」


 「ええ、喜んで遊びに行くお誘い受けますよ! 楽しみだなぁ」


 「あ、え、えっとフェンリルさんの事はいいって‥‥‥」


 「ええ、聞かなくてもいいだろうって。きっと行くって言うに決まってますもん」


 「ミ、ミーニャは関係無いって‥‥‥」


 「そうですね、多分遊びに行く時はまだ折檻部屋でしょうし、呼ばれて無いのに一緒に行く事は出来ませんものね、この件は関係なくなっちゃいますよね?」


 「し、信じていいって言いましたわよね!?」


 「はい、必ず遊びに行きますから信じてください!」



 「‥‥‥」



 にこやかに言う彼の顔が今は、今は‥‥‥



 「そ、ソウマ君のばぁかぁっですわぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



 ばちーんっ!!



 思い切りソウマ君の頬を平手でたたくと「ぐはぁっ!」とか言って壁に叩き付けらるるソウマ君。



 「も、もうソウマ君なんか知りませんわぁっ!!!!」

 


 「あ、エマっ!? もう、ソウマったらエマの気持ちわかってるの?」


 「うぉおおおぉぉっ!? ソウマ大丈夫かぁ!? 傷は浅いぞぉ!!」

 


 思わず涙にこの部屋を飛び出してしまう私。

 後ろでセキとリュードさんが何か言っている様だけど今はそれどころじゃありませんわ!!!!




 もう、ソウマ君のいけずぅですわぁっ!




 「‥‥‥こ、こうなったら意地でもソウマ君に責任を取らせますわ!!」



 涙をぬぐって拳を握りそう誓う私だったですわ!!  

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