第139話6-9ソウマへの助言
姉さんとミーニャのダーツ勝負が始まって二人とも最初の一手からど真ん中の十点を獲得していた。
「ふむ、あのゲームはあの的の真ん中を射止めれば良いのか?」
「何が楽しいのでしょうね?」
「人間の考える事はよく理解できません、僕らからすれば造作もない事なんですがね」
アガシタ様たちはそんな緊張感あふれる中、姉さんたちのゲームを眺めながらそう言う。
でもこれって結構集中が必要なはず。
家に有ったダーツゲームで昔三人で遊んだ時だってちょっとした集中の途切れで的から外れたりしたもんね。
「アガシタ様たちってこういう遊びしないんですか?」
恐る恐るそう聞いてみるとアガシタ様は不思議そうに僕に振り向きニカっと笑う。
「面白そうなモノなら何でもやっては見たいがね、君たち人間の面白いと僕たちの面白いはどうやら少し違うようだ」
「そうですねぇ、あ、でもさっきの飲み比べは面白そうでしたけど」
「姉さまは単にお酒が飲みたいだけでしょう?」
なんか女神様っていう割には軽いな。
今の女神様であるエルハイミねーちゃんもそうだけど‥‥‥
「え? エル‥‥‥ハイミ‥‥‥ねえ‥‥‥ちゃん?」
ふと金髪碧眼の凄い美人のお姉さんの姿が頭の中をよぎる。
どことなくエマ―ジェリアさんに似ているけど、神殿で見た女神様とはだいぶ違い、なんか姉さんより少し年下に感じる。
「今のって‥‥‥」
『さあ、義理の姉選手第二手の準備に取り掛かった! 緊張の第二投目です!!』
麒麟の実況に僕は引き戻され姉さんを見る。
すると姉さんは息を吸い込み今まさにダーツを放つ瞬間だった。
すぅうぅぅ
ひゅんっ!
とすっ!
『おおっっとぉ!? これはどうだ!? わずかだが中央からズレているようにも見えるぞぉ!』
『判定をお願いします、ソーシャさん』
『はいはい、えーとこれは‥‥‥』
姉さんの投げた第二投目を確認にソーシャさんが的の近くに行く。
そして刺さったダーツを見て宣言する。
『これは区切り線の上です! 規定どうり九点とします!!』
「くっ!」
姉さんはぐっとこぶしを握り悔しがる。
そしてミーニャは口元を笑いの形にして姉さんに言う。
「フェンリルさん、見ていてください。ここでリードしてあげますから」
次のダーツを持ち、線の前に立つ。
そしてもう一度ちらりと姉さんを見てから構える。
すぅうぅぅぅ~
ひゅんっ!
とすっ!!
ミーニャは指先を的に向けたまま笑い始める。
「ふふふふふっ、あーっはっはっはっ! これでリードですね、フェンリルさん!!」
宣言する通りミーニャのダーツの矢はど真ん中を貫いていた。
『おおっっと! 魔王様これは見事にど真ん中だぁ!』
『素晴らしい、流石ですね!』
『魔王様十点となります』
わ~、ぱちぱちぱち~。
解説側の三人がそろって拍手している。
それを見て姉さんは更に悔しがる。
「あれってティアナの神経を揺さぶっていますね?」
「常套手段ですね」
「ふむ、人間はこう言う場面で精神が不安定になるからなぁ」
アガシタ様たちが冷静に状況を判断している。
僕だって気持ちが焦るけど、アガシタ様たちの言う通りだ。
でも姉さんを見れば拳がまだふるえている。
まずい、このままだとまたミーニャに差をつけられる。
『それでは第三投目、義理の姉選手行っていただきましょうか!!』
麒麟が次の一手を催促してくる。
姉さんはまだ落ち着きを取り戻していない。
このままじゃ!
「くっ!」
「ふふふふふっ」
動揺を隠せなくなって来た姉さん、それを笑うミーニャ。
姉さんとミーニャの勝負は進み第五投にまで進む。
既に姉さんとミーニャの間には三点の差が出ていた。
「ふふふふっ、フェンリルさんこれでソウマ君はあたしのモノですね?」
「くっ、ま、まだよ! まだ終わっていない!!」
ミーニャは僕を見ながら嬉しそうに言う。
「ソウマ君、待っていてね。これでフェンリルさんを倒せば晴れてソウマ君はあたしのお嫁さん。あたしね、ソウマ君の為にたくさん勉強したんだよ? すぐに子供作ろうね? 大丈夫、ソウマ君は何もしなくていいよ、あたしがリードしてあげるから」
うっとりとした表情に変わりながらミーニャははぁはぁと息が荒くなる。
「まったく、今度の魔王も、ど変態だな」
「エルハイミさんに関わる人たちですもの、仕方ありません」
「ちょっとレイム、それって私の娘たちが変態って事!?」
なんか向こうでアガシタ様たちがぼそぼそ言っている。
もう、姉さんのピンチだっていうのに!
「ん~、しかしこのまま魔王に勝たれるのもしゃくだな。少年、ちょっとこっちへおいで。お姉さんが面白い事を教えてやろう」
アガシタ様はにた~っと笑って僕を手招きする。
「いいんですかアガシタ様?」
「その顔、またろくでも無いこと考えていますね?」
「何を言う、僕は少年に助言を授けるだけだよ、神様のお告げをね♪」
楽しそうにするアガシタ様の助言を僕は受ける事になったのだった。
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