第124話5-25立ちはだかる者たち


 「本当に大丈夫なの姉さん?」



 僕たちは魔王城の門を抜け城に入っていく。

 時折衛兵の悪魔たちが出て来るけどセキさんやアイミが瞬殺する。



 「ソウマがお姉ちゃんを気にかけてくれるぅ~。うれしぃ~!! ソウマぁ~♡」


 「ぶっ! もう抱き着かないでよ!! それだけ元気が有れば大丈夫でしょ!!」



 まったく人が心配してるってのにこの姉は!



 「ううぅ~、ソウマが冷たい。ソウマのいけずぅ~」


 「はいはい、フェンリルもソウマも遊んでないで城に入るわよ? 何が有るか分からないから気を引き締めてね」


 「シェル、ちょと良いか‥‥‥」


 「ん? どうしたのキシャラ?」

 

 キシャラさんはシェルさんに声をかけ言いにくそうにしていたが意を決したように言う。


 「私はここまでだ。あんなのが相手では私など足手まといにしかならん‥‥‥」


 何故か悔しそうに唇をかむキシャラさん。

 するおシェルさんはふっと優しく笑ってキシャラさんに言う。


 「かまわないわよ。あなたは村に戻ってこの事を族長に伝えなさい。それがあなたの役目でしょ?」


 「‥‥‥すまん」


 それだけ言ってキシャラさんはすぐにその場から消えた。

 キシャラさんもこの事を村に伝えなきゃいけないって仕事もあるし、これ以上皆さんにご迷惑かける訳にも行かないもんね。



 「さて、それじゃぁ行くわよ!」


 シェルさんはそう言いながら城に入っていくのだった。



* * *



 城の中は入ってすぐに大ホールになっていた。

 左右小部屋らしきものが有るけどリリスさんの話だと上の階にミーニャはいるらしい。


 見れば正面に上の階に上がる階段が有る。

 そしてその階段には衛兵の悪魔たちが待ち構えていた。



 「お出ましね? さあやるわよ!」



 「ちっ、みんなアークデーモンクラスじゃねーか!! 主よここは俺たちに任せろ!」


 「そうね、エマ! サポートお願いね!!」


 「はい、防御の加護を張りますわ!!」


 ぴこっ!



 押し寄せるアークデーモンたちにシェルさんの号令でリュードさんが同調をしてセキさんが爪を伸ばし炎を燃やす。

 エマ―ジェリアさんが防御魔法をみんなにかけてアイミがやる気を出してアークデーモンたちを迎え撃つ。



 「姉さんは休んでいて、まだ回復してないでしょ?」


 僕はショートソードを抜きながら姉さんの前に出る。

 

 「ソウマ! ソウマがお姉ちゃんを守ってくれるなんて!! ああ、立派になってお姉ちゃん嬉しいっ!」


 流石に抱き着きはしないけど後ろで騒がしい姉さん。

 とにかく今は回復に専念してもらわないとミーニャを捕らえる時に困るもんね。


 ミーニャって村にいた時だって同じ年頃の中では一番強かったし、僕なんか一度だってミーニャに技が入ったことは無い。


 大体なんかある時は最後姉さんがミーニャを取り押さえていた。

 だから今回も姉さんが頼りになるんだからね。



 僕たちは湧き出るアークデーモンたちをなぎ倒し階段を上がっていくのだった。


 

 * * *


 

 「ふう、とりあえず片付いたわね。さあ上の階に行くわよ」



 アークデーモンたちをあっさりと倒してシェルさんは上の階に移動する。


 「まったく、この俺がこいつ等といると全く活躍出来ねえってのはどう言った事だよ? 主が強えーのは分かるとして、シェルもセキもソウマまで結構やるってのはよ!」


 リュードさんはそう言いながら僕の首に腕を絡めてくる。



 「ますます気に入ったぜソウマ!」


 「ちょっと! 私のソウマになれなれしく触らないでよ!!」



 ばっ!



 今度は姉さんに引っ張られて抱きしめられる。

 

 「主ぃ~、少しくらいいじゃねーかよ~」


 「ほらほら遊んでないで早く来なさいって」


 シェルさんに呼ばれ慌てて上の階に上がる。

 そしてここもそこそこ広い間になっていた。




 『ふふ、あ奴等では足止めにもならんだろう。よくぞ来た。歓迎するぞ』



 広間に入ってすぐにその声は聞こえて来た。

 そしてそれは中央に鎮座していた。


 丸大きなトゲ付きの甲羅を背負い、竜の様な顔つきの大きな体のそれはまるでどこかの桃のお姫様をさらうような悪者にも何となく感じる。



 『その少年以外はここで大人しくしてもらおうか。さあ少年はこちらに来るがいい』


 「何馬鹿な事言ってるのよ! ソウマは私のモノよ、絶対に渡さない!」


 「そこを退いてもらおうかしら。私たちは魔王ミーニャに用が有るのよ」



 その大きな亀の化け物はぐっと手の平を僕に向けて言うけど姉さんはすぐにその前に立ちはだかる。

 そしてシェルさんもずいっとその横に出る。



 『ふん、ならばお前たちには大人しくなってもらうまでだ! やれ我眷属よ!!』



 ぼんぼんぼんっ!



 言うが早いか背中からなんかトゲの付いた小型の亀の化け物が沢山出てきた!?



 「ちっ! 今度は亀かよ!?」


 「いいわ、行くわよ!!」


 ぴこっ!


  

 リュードさんもセキさんもそしてアイミも僕の前に出る。

 そして背中にトゲを生やした亀の化け物たちと剣を交え始める。


 一匹一匹はそれほど強くなのに甲羅だけがやたらと硬い。

 なんと僕のセブンソードであるショートソードでも切り裂けない。



 「何こいつら!? 硬い!!」


 「ちっ! おい、嬢ちゃん回復頼む! じわじわ来やがって!!」


 「ほんとやたらと硬い!!」


 ぴこぴこっ!



 亀の化け物の首を切り落としても甲羅だけは残ってそれを投げつけられると地味にダメージが溜まっていく。

 でも僕は気づいた。


 

 「よっ!」



 ぶぎゅる!


  

 それでも飛んでくる甲羅を踏み潰すとその場に押さえつけられる。

 そしてこいつを蹴飛ばすと亀の化け物たちを一掃できる!  

 


 「ソウマ! なるほどこれならいける!!」


 姉さんも同じように甲羅を踏みつけそれを相手に向かって蹴り飛ばす。


 

 ぼこぼこぼこっ!



 連続で亀の化け物たちをなぎ倒す。


 『はははっ! まさか我らが攻撃を逆手に取られるとはな! だがこの玄武には通用せんぞ!!』



 ばんっ!



 玄武と名乗った大きな亀の化け物に甲羅をぶつけてもなんとぶつかって割れて粉々になってしまった。


 『我が甲羅は最強! 全ての攻撃を防ぐのだ!!』





 そう言って玄武は立ち上がり僕たちを見下ろすのだった。

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