第123話5-24リリス


 『我が真の姿を見せてやろう!! はぁっ!』



 朱雀はそう言って炎の柱に包まれ全身を燃やした!?


 「何を!?」


 姉さんが驚き朱雀から離れる。

 それと同時に朱雀を包んでいた炎の柱が弾け中から全身に炎をまとった鳥の姿の化け物が出てきた。



 『我が真なる姿を見せる羽目になるとはな! しかしこうなったら貴様らに勝ち目はないぞ! 我は朱雀、不死鳥である! この炎が消えぬ限り何度でも蘇る!』



 「くっ! ならその炎消し去るのみ!! ガレント流剣技三の型、雪崩!!」


 姉さんは上空に飛び上がった朱雀に対し、剣を地面に突き刺し力を溜め地面の石礫を引きはがしながらまるで雪崩の如くそれを撃ちこむ。


 無数の石礫は姉さんの魔力の炎をまとい、一つ一つが弾丸のように強力な破壊力を持つ。

 それらが一斉に上空の朱雀に飛んで行く!



 どどどどどっ!


 ぼすぼすぼすっ!!



 「おおっ! すげえ、やったぞ!」


 「駄目よ、奴の炎が消えていないわ!」


 上空を見上げていたリュードさんはその攻撃が朱雀に殺到して体をハチの巣にして風穴を開けたのを見て叫んだ。

 でもシェルさんがすぐに警戒の声を上げる。



 「フェンリルさん! 危ないですわ!! 【絶対防壁】!!」



 ぼわっ!



 朱雀の体から炎が噴き出す。

 エマ―ジェリアさんがセキさんのサポートから姉さんに対して【絶対防壁】を張る。

 これは物理攻撃は勿論、魔法攻撃だって跳ね返す強力な防壁魔法。

 事実上防壁魔法中最強の防御を誇る。



 ドドドドドドドどどっっ!!!!



 なんと朱雀は体の風穴を瞬時に炎で治し、羽ばたく翼からまるで【炎の矢】の様な攻撃の雨を姉さんに浴びせる。


 

 がががががががっ!



 しかしエマ―ジェリアさんの張った【絶対防壁】に阻まれる。

 姉さんは上空にいる朱雀を睨む。

 そして【紅蓮業火】を解除してポーチからアイミを引っ張り出す。



 「アイミっ!」


 ぴこっ!!



 姉さんはすぐさまアイミに飛び乗ってそのままアイミと一緒に上空高くにいる朱雀に突っこむ。



 「はぁっ! ガレント流剣技八の型、凪流閃!」



 『喰らえ!』



 朱雀は今度は口から大きな炎の塊を吐き出す。

 しかし姉さんは八の型、凪流閃を使ってその炎を逆手に持ったなぎなたソードで撫でるように軌道をずらし後ろへと流す。

 そしてそのなぎなたソードの流れは炎を吐いた朱雀の口元に吸い込まれるのように流れていく。



 漸っ!


 

 『なにっ!?』


 姉さんの刃は朱雀の口を切り開き頭半分を跳ね上げる。


 

 ぴこぴこっ!!



 一旦朱雀を通り過ぎたアイミはすぐに折り返し朱雀の後ろに着くけど切り離したはずの朱雀の頭は燃え上がる炎に包まれすぐにまた元どうりになってしまう。



 「これでも駄目なの!?」


 『言ったはずだ! この炎が有る限り我は不死身! たとえ頭を跳ね飛ばされても死ぬことは無い!!』



 漸ッ!!



 交差するその瞬間姉さんはもう一度朱雀を切り裂くもまたまた炎が噴き出し元に戻ってしまう。



 「くっ、こうなったらアイミっ!!」


 ぴこっ!!



 姉さんはアイミを朱雀の下にまで飛ばし地面に降り立つと同時に手のひらを朱雀に向けて力ある言葉を解き放つ。



 「これならどう!? いけぇっ! 【爆裂核魔法】!!!!」


 「なっ! ちょとフェンリルそれは!?」



 姉さんが手を上空に向けるとそこに赤い光が集まって小さな球体になったと思ったら一気に朱雀に向かってはじけた。

 シェルさんは慌てて下がりながら手で顔を覆う。



 きゅぅううううぅうぅ‥‥‥


 カッ!


 どごばぁぁああああああぁぁぁぁぁんッ!!

 

  

 「うわっ!」


 「なんじゃこりゃぁ!?」


 「フェンリル!!」



 姉さんは見た事も無いような強力な爆裂魔法を放った!?

 それは朱雀を完全に飲み込み業火と爆風を浴びせる。

 いくら朱雀でもこの爆裂の嵐に耐えられないだろう。


 魔王城の上空を真っ赤に焼いてその爆裂は消えて行った。



 「はぁはぁ、流石にこの魔法は魔力を持っていかれる。まだ以前ほど魔力が引き出せないわ‥‥‥」


 姉さんはガクッと膝をつき荒い息を吐きながら朱雀の消え去った上空を見る。

 しかしその表情はどんどん険しくなっていく。



 「そんな、あの魔法にも耐えるのですの!? 私の【絶対防壁】でも耐えられるかどうかわからない程なのにですわ!!」



 一度消え去ったその上空に小さな炎が燃え始めやがて大きな炎の塊になる。

 そしてそれが弾け中からあの朱雀が姿を現した!



 「そんな‥‥‥」


 ぴこっ!


 驚く姉さんの瞳の色は元の碧眼に戻っていた。

 そんな姉さんの前にアイミが立ちはだかる。



 『危なかった‥‥‥ 危うくこの俺の炎も消え去るところだったが同じ火炎系の魔法。我が炎を消し去るには至らなかったな!!』



 ぴぃいいいいいぃぃぃっ!!



 朱雀は雄叫びを上げて姉さんに飛び掛かる。

 アイミがそれを防ごうとする。




 「そっか炎だからこうすればよかったのか!」



 ばしゃぁっ!



 聞こえた声はシェルさん。

 そして姉さんに飛び掛かった朱雀はアイミに阻まれその大きな体にぶつかって弾かれ地面に転がる。



 『うおっ!? み、水だとぉっ!?』



 しゅうううぅぅぅ~



 朱雀は地面に転がったその姿が今までの炎をまとったそれではなく、毛をむしられた鶏の様になっていた。



 「炎を火炎系の魔法で消すのは難しいけど、水の精霊王なら違うわよね?」


 ニヤリと笑ってシェルさんは腰の水筒を開いて水の精霊王を呼び寄せていた。

 そして煙を上げている朱雀にも一度水をぶっかける。



 ばしゃっ!



 『うおっ! や、やめんかぁ!! お、俺の炎が!!』


 

 ちゃきっ!



 『あ、、ちょっとマテ。今乾かしてもう一度着火するから。 お、おいっ! 今やられたら炎が無いから復活できなくなるだろ!? ちょ、ちょっと待てってば、おいぃいいいぃっ!!』



 ざくっ!



 『あ”っ!』



 ぼてっ。



 ふるふるふる‥‥‥

 ダっ!!



 「ありゃ~、首を斬られた鶏みたいに走って行っちゃったわね? あ、力尽きた」


 丸禿になった朱雀の首を姉さんは無言で切り落とすと一間置いて体から血を吹き出しながら走り出し向こうの方で力尽き倒れた。


 セキさんは近くにいたアークデーモンの最後の一匹をぶっ飛ばしてからこちらを見てそうつぶやく。



 「炎が無ければただの鳥じゃない? フェンリル大丈夫?」


 「なんか今までの頑張りが無駄だったわね‥‥‥ はぁ、魔力もだいぶ使っちゃったし、最初からシェルにこうやってもらえばよかったわ‥‥‥」




 『まさかこんな手であの朱雀様を倒すとはね‥‥‥ 相変わらずとんでもない連中ね?』



 脱力していた姉さんのそばまで行こうとしたら城門の上の方から知った声がかけられてきた。



 「この声、リリスさん!?」



 『こんにちはソウマ君。本当にここまで来たんだね。魔王軍の中にはソウマ君を捕らえて魔王様に献上した方が良いとか言ってたけど、結局自力で来ちゃったんだ‥‥‥』



 「リリス、来てやったわよ! 魔王ミーニャに会わせなさい!!」


 「ミーニャは何処よ!?」



 シェルさんも姉さんも上を見上げリリスさんに詰問する。



 『ふふっ、魔王様の言う通りソウマ君以外は本当に邪魔なのね? 朱雀様まで倒されるとは。魔王様は魔王の間でソウマ君を待っているわ。でも他の人が邪魔ね? まだ玄武様もいるしもう少し他の人には大人しくしてもらわないといけないわね? ソウマ君、上まで来なさい。魔王様はそこでソウマ君を待っているわ!』



 リリスさんはそう言ってマントを翻し城の中に入って行った。



 ミーニャったらまだ大人しくするつもりが無いのか!?



 「どうやら魔王の間にまで行かなきゃいけないみたいね? フェンリル大丈夫?」


 「シェル、あの子を取り押さえるわよ! もう、折檻部屋送りよ!!」





 そう言いながら姉さんは少しふらついて立ち上がるのだった。 

 

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