第115話5-16ダークエルフ
「だから何も無かったってば!」
翌日下の食堂でみんなで食事をしながらシェルさんはそう言った。
所々がまだボロボロだった。
いや、体の傷とかはエマ―ジェリアさんのお陰で完治しているけど、服とかが所々ぼろぼろのままだ。
「姉さん、もういい加減にしなよ。シェルさんだって寝ぼけていただけだし」
「でもソウマとキスした! シェル今度したら切り殺すわよ!!」
「はいはい、気をつけますってば。良いじゃないキス位、別にやっちゃってるわけじゃ無いし」
シェルさんはそっぽを向きながらそう言う。
するとエマ―ジェリアさんが真っ赤になってキャーキャー騒ぎ姉さんがなぎなたソードを引き抜こうとする。
僕は慌てて姉さんにしがみつきなだめる。
「はぁ、俺もソウマといちゃいちゃしたい‥‥‥」
「それはだめだわね。ソウマに手ぇ出したらあたしが許さないわよ?」
リュードさんがそんな僕たちを見ながらぼそりと言うとセキさんがすかさず爪を伸ばしながらリュードさんを見る。
シャキーン!
リュードさんは頬に一筋の汗を流しながら「無理矢理はしねーってば! 俺は同意した子としかやらねえの!」なんて言ってる。
何をやるのだろうね?
それを聞いたエマージェリアさんは更に目をぐるぐるに回して騒いでいる。
「駄目ですわ! ソウマ君が男性同士何て!! そんな、シェル様にまで襲われてふるふる涙目だったソウマ君がリュードさんに襲われるなんて! ソウマ君、受けですわよね!? あ、でも攻めのソウマ君もアリかもですわ‥‥‥」
なんかみんな今朝はちょっとおかしい。
やっぱり一晩中大騒ぎしてほぼ徹夜だからかな?
「騒がしいね? 珍しく人間かと思ったら」
突然聞こえてきたその声に視線を向けるとシェルさんと同じく長い耳で大きな胸のエルフの人がいた。
ただ、シェルさんの透け通るような白い肌と違い、小麦色に焼けた肌をだいぶ露出した服装でいるけど。
「ダークエルフ!?」
「あら珍しいわね? 人里に堂々とあなたたちが出て来るなんて」
姉さんは剣をそのダークエルフの人に向ける。
シェルさんは一瞥してからくいっと飲み物を飲み干す。
「ふん、その髪の色、瞳の色。お前ハイエルフだな?」
「だとしたらなによ? そう言えばあんたらの族長キートスは元気にしている?」
ダークエルフの人はシェルさんを睨みつける。
そんな視線を受け流しシェルさんはついっとそのダークエルフの人を見る。
「‥‥‥族長を知っているのか?」
「まあ千年以上の付き合いだからね。あなたたちもだいぶ数が増えたでしょ? 約束は守っているわ。だからいざこざは起こさないでね?」
そこまで言うとダークエルフの人はふっと息を吐く。
「族長と知り合いならまあいい。それよりこれは一体どう言う事だ? 人間の町との交流が途絶えたと仲間が言ってきたから様子を見に来ればこれだ」
言いながらシェルさんの近くにまで行って小声で囁くように言う。
「こいつらみんな悪魔と融合しているのか?」
シェルさんはそれを聞き無言で首を縦に振る。
ダークエルフの人はしばしシェルさんを見て「教えてくれ、何が有った?」と小声で言う。
「ふう、まあいいわ。知っていることを話す。『魔王』が復活して世界征服を始めている。あなたたちの隠れ里に近い元ルド王国よ。新しい魔王が復活して今そこに魔王城が出来ているわ」
「!?」
ダークエルフの人は大いに驚いていたようだった。
「そんな‥‥‥ 噂の『魔王』が復活していただなんて‥‥‥」
「ん? あなたもしかして若木なの?」
シェルさんはそう言ってダークエルフの人を見る。
するとダークエルフの人はむっとしてシェルさんを睨む。
「失礼な、私はこう見えても千歳を超えたのだぞ!?」
「なら私からしてみればまだまだ若いわね。 そうするとあの後に生まれた娘か‥‥‥」
シェルさんにそう言われ褐色の肌のダークエルフの人は顔を赤くして怒る。
「不愉快だ、いくら族長の知り合いとは言えエルフ如きに馬鹿にされるとは! それになんなんだ貴様は!? エルフらしからぬその体つきは!? 貧相なエルフは何処へ行った!!」
「ふふっ、そうね、普通のエルフならこんなものは持っていないわね? でも私にはあの人がいるから愛してもらって大きくしてもらったのよ!!」
びしっ!
ダークエルフの人に指さし勝ち誇るシェルさん。
ぽよんとダークエルフの人より大きな胸が揺れる。
「くっ! く、くそぉっ! これで勝ったと思うなよぉっ!!」
そう叫んでダークエルフの人は店を飛び出していった。
「なんなのよあれ?」
「さぁ? シェルの知り合いでもなさそうだったしね」
「わ、私だってそのうちシェル様の様に大きくなりますわ!」
セキさんはダークエルフの人が飛び出していった扉を見て、姉さんはなぜか僕に抱き着いてくる。
エマ―ジェリアさんは胸の前でこぶしを握りふんすっ!と意気込む。
「はぁ、これだから女どもは‥‥‥」
あきれるリュードさんにシェルさんは向き直って宣言する。
「とにかくこの先はもうすぐ元ルド王国よ。準備をして出発するわよ!」
リュードさんは手を振り「へいへい」とか言っている。
僕たちはいよいよモルンの町を出て目的の魔王城に向かうのだった。
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