第109話5-7森
姉さんとシェルさんの稽古が終わって今度は僕とセキさんがその広場に立つ。
「あれ? ソウマがセキさんと稽古するの?」
「セキも体動かしたいんでしょ? ああつかれた、エマ飲み物ちょうだい!」
「はいはいですわ~。どうぞシェル様ですわぁ~♡」
僕とセキさんが今度は稽古をすると言う事で姉さんたちはそれを見物するようだった。
と、セキさんがいきなり魔力を高める。
「まずはソウマ、本気でかかってきなさい! あたしの本来の姿で相手するわ!!」
そういって何とセキさんはその場で服を脱ぎ捨て体を大きく膨らませながら真っ赤な鱗の竜の姿になる!
「って、おい、あの女竜の姿になりやがったぞ!?」
「ああ、リュードは初めてか? セキは本来あの姿が元なのよ。古の女神殺しの竜、赤竜よ」
初めてセキさんの本当の姿を見るリュードさんは大いに驚いている様だった。
僕もセキさんが目の前でその本当の姿になるのは初めて見た。
その巨体は『鋼鉄の鎧騎士』より大きい。
『ソウマ、この体にはそのセブンソードすら効かない。本気で来なさい!』
「セキさん‥‥‥ 分かりました、行きます!!」
僕はショートソードを構え全力を込めて技を繰り出す。
「ガレント流剣技一の型、牙突!!」
左手に剣の腹を置き狙いを定めて一気に飛び込み突きを放つ。
この時にもてる魔力を脚や剣先に集中することで岩をも貫く。
がんっ!
僕のその剣の切っ先は見事にセキさんのお腹に吸い込まれた。
しかしその切っ先はあっけなく弾かれる。
『普通の相手には十分ね、でも普通じゃ無いモノには全く効かないわよ! 次来なさい!!』
「はいっ! ガレント流剣技二の型、二重の刃!!」
僕はその場からすぐに次の技を繰り出す。
この技は高速に振り込む事により同じ場所にほぼ同時に二激の刃を当てる技。
高速に振り込まれたその刃はまるで二太刀の剣が振り込まれるように見える。
がっ、ががっ!
『一撃一撃が軽い! これではあたしの鱗を貫けることが出来ないわよ!』
「くっ、もう一度、二重の刃!!」
僕はもう一度魔力を載せて剣を振る。
しかしあっけなくセキさんの鱗に弾かれる。
がっ、ががっ!
「うーん、ソウマの剣技も上達はしているけど、まだまだね。やっと二の型が出来たって感じがするわね」
「そうなの? 私には剣技は分からないけど普通の人よりはずいぶんと上に見えるけどね?」
「ああ、坊主の歳にしちゃぁ上出来だ。だが相手が凄過ぎる。ありゃぁ俺でも鱗に傷をつけられるかどうか」
「セキはあれでもまだ闘気を発していませんわよ? 本気で行けばドラゴンオーラで更に頑丈な身体に出来ますわよ?」
姉さんたちが何か言っている様だけど、僕は持てる技をすべて使ってもセキさんに傷一つ着ける事は出来ない。
『ソウマ、技にばかり固着しないでもっと自分の内からの力を感じなさい!』
セキさんにそう叱責されるけど、内からの力って何!?
僕はもう何度か技を繰り出すけど、全く歯が立たない。
そうこうしているうちに魔力が無くなって来て技を繰り出すことが出来なくなってくる。
「うーん、ソウマもそろそろ魔力切れか。だいぶ魔力も増えて技も上達はしているけどまだまだね」
姉さんのそのつぶやきが耳に入る。
ちらっと姉さんを見ると瞳が金色になっている。
あれって同調して僕の魔力状態を見ているのか?
と、その瞬間魔力状態を見ていると言う事に気付く。
魔力って体の中から自然とあふれ出るもので、ボヘーミャの学園長には無い物だって言っていた。
僕たちの世界では誰でも魔力を持っていて簡単な魔法は誰でも使える。
でもその魔力って何処から出て来るのか今まで考えて見た事も無い。
魔力の流れ出る場所‥‥‥
ひゅぅぅぅぅ‥‥‥
『これは!?』
セキさんが一瞬唸る。
と僕は一瞬何かに気付いたように思ったその瞬間魔力切れでその場に倒れてしまった。
* * * * *
「あ、あれ?」
「ソウマ、気が付いた?」
気付いた僕は姉さんに膝枕されていた。
「ああ、気付いたみたいね。お疲れ様。ソウマの分のご飯ちゃんと取ってあるわよ」
「でも冷めちゃいましたわね?」
「なら私が温め直してあげるわ。炎の精霊よ、その手を貸して」
セキさんが僕を覗き込み、エマ―ジェリアさんが僕の食事をお鍋に持って見ている。
冷めてしまったのをシェルさんが精霊魔法で温め直してくれている様だけど僕は姉さんの膝枕から起き上がる。
そして思い出す。
最後のあの瞬間って‥‥‥
「坊主、お前さんその歳でとんでもないな。もう少しで自分の魂を見つけられただろ?」
リュードさんに言われて僕はハッとする。
そしてそちらを見るとニヤリと笑っている。
慌ててセキさんや姉さんたちを見るとセキさんは笑って頷く。
「まだ『同調』は出来ていなかったけど、自分の魂を感じる事は出来たみたいね? ソウマ、もっともっと鍛えてあげるからね!」
そう言うセキさんに僕は頷きながら返事をする。
「はい、お願いします!!」
すると姉さんが指をくわえながら言う。
「ソウマぁ~。稽古だったらお姉ちゃんがつけてあげるのにぃ~」
「いや、あのやり方って姉さんには出来ないでしょうに? それに普通の鍛錬の時は見てもらっているからそれで良いじゃない?」
「ううぅ、ソウマがセキさんと仲いい! ソウマのいけずぅっ!」
口をとがらせそう言う姉さんを尻目に温めてもらった食事をする僕だった。
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