第85話4-16ティアナ
そこはずっと閉ざされていた場所のはずなのに塵一つ無い凛とした空気の場所だった。
足を踏み入れ最初に感じたのはまるで神殿に居るかのような静けさと神聖な雰囲気が漂っていた。
「またここに足を踏み入れるとはね‥‥‥」
シェルさんはそう言いながらつかつかとその奥へと歩いて行く。
魔法の光がうっすらと照らしだすその先の壁に埋まってそれは有った。
「これがティアナ姫が使っていた『鋼鉄の鎧騎士』!?」
「壁に埋まってますわね?」
「これは一体どう言う事です、シェルさん?」
姉さんはその壁に埋まっている「鋼鉄の鎧騎士」を見上げ、エマ―ジェリアさんは振り返って僕たちにそう言う。
思わず僕もここの事を知っていそうなシェルさんに聞くけどシェルさんは目を細めゆっくりと話し始めた。
「あれはもう千年くらい前になるかしら? 当時オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』が世の中を乱す事が有ったのよ‥‥‥」
シェルさんはそう言って僕たちを見る。
その表情は何時になく険しい。
「あの時ティアナの転生者が暴走を始めた『鋼鉄の鎧騎士』を止めなかったら大惨事になっていたかもしれないわ。そして二度とその悲劇が起こらないように当時のティアナの転生者とあの人がもう一度全ての『鋼鉄の鎧騎士』を封印したの。もうこの子たちが二度とこの世を乱す事が無いように‥‥‥」
ごくり。
シェルさんの話をそこまで聞き一体その昔何があったのか気になって来た。
千年も昔の話なんて想像もつかない。
「セキ、そんなにすごい事が有ったのですの?」
「あ~、その頃はあたしは既に神殿に縛り付けられているから知らないわね? まあ時たまシェルたちが遊びに来るか大体の事情は知っているけどね」
そう言ってセキさんも「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。
「それで、どうやってこれの封印を解くのですか?」
姉さんは視線をシェルさんとアナス王女様に向けて聞く。
するとアナス王女様は壁の前にある石碑に向かう。
そこには何やら文字が書き込められていた。
―― ティアナの記憶と共にこの「鋼鉄の鎧騎士」は眠る。その眠りを呼び覚ますならばティアナとしてその覚悟を示せ ――
石碑にはそう書かれていた。
僕は姉さんを見る。
「つまり私がティアナ姫の記憶をよみがえらせなければいけないと言う事ですね?」
「まあそう言う事ね。当時あなたとあの人はこの力が金輪際この世に影響を及ぼさない事を願ってこの子をまた封印したの。以前オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』の秘密が世の中に広まらないように封印した時よりもずっと強力な封印でね」
「伝説ではティアナ姫の転生者が全てを思い出しこの石碑の上にある水晶に触れればこの封印は解けると言い伝えられています。それで間違いないでしょうか、シェル様?」
「ええ、間違いないわ。でもその前にフェンリルあなた自身がティアナの記憶を呼び戻さないと‥‥‥」
姉さんがシェルさんとアナス王女様から封印の解き方を聞く。
そしてその答えを聞きもう一度「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。
「やります。シェルさん、あのオーブを貸してください」
するとシェルさんは腰のポーチからあのオーブを取り出す。
キラキラしたそれはまるで姉さんを見るかのように光っていた。
シェルさんは黙ったままそのオーブを姉さんに引き渡す。
すると姉さんが手に取った瞬間そのオーブはその輝きを更に増していく。
「姉さん!」
「ソウマ、大丈夫よ。フェンリルがティアナの記憶を受け始めたの」
驚き思わず姉さんの元へ行こうとした僕をシェルさんが引き留める。
オーブの輝きはますます増していきその光に姉さんは包み込まれていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます