第77話4-8ティナの国へ


 ベイベイからティナの国支店へゲートを使って転移した。



 

 「シェル様、よくぞおいで下さいました!」



 ゲートの光のカーテンが足元に消える前にティナの国支店のスタッフの人がベイベイと同じくシェルさんに跪いて出迎える。



 「ジグザ、状況は?」


 「はい、現在『鋼鉄の鎧騎士』団が前線で何とか持ちこたえています。ですが敵の数が多く城壁防御のマシンドールたちまで駆り出されている状況です」



 ジグザさんと呼ばれた女性は戦況を要約してシェルさんに伝える。

 シェルさんは思わず親指の爪を噛んで唸ってしまった。



 「まさかマシンドールまで前線に駆り出されるとは。かなり危機的ね? 良いわすぐに私たちも行きましょう。とその前に広場に行きましょう。支援物資を運んで来たわ」


 シェルさんはそう言うとすぐにこの部屋から出て行き建物の外まで行く。

 ウェージム大陸の北方に位置するこのティナの国は建物の外に出ると、からっしてと涼しい。


 シェルさんはそのままずかずかと近くの広場まで歩いて行く。

 それを僕たちも追い、そしてシーナ商会の人たちも追ってくる。



 「フェンリル、支援物資をここに出して! ジグザ、食料に医薬品、衣類に武具と沢山持ってきたから後方支援に使いなさい! それと国の方に伝達、私とセキが応援に来たと伝えなさい。城に行くわ」



 「お城に行くんですか? いきなり行っても大丈夫なのですか?」



 姉さんは思わず聞いてしまったけどシェルさんはとんでもない事を言う。


 「大丈夫よ、ここはあなたの子孫が王女をやっているわ! 私にとっても知った子たちばかりだから問題無いわ!」



 「え”っ!? わ、私の子孫!?」



 「正確にはあなたの数世代前の時のあの人との子供の子孫よ。エマとは遠い親戚になるのよ」


 姉さんはぎぎぎっと首を鳴らしてエマ―ジェリアさんを見る。



 「ずいぶんと前の話と聞きますわ。ハミルトン家はガレント王家、ティナ王家双方共に縁がありますの」

 

 エマ―ジェリアさんはめんどくさそうにそう言う。

 そしてなんか嫌そうだな?


 

 「ハミルトン家は双方の国との縁者と言う事も有り、この家に生まれる者は幼少の頃から縁談が持ち上がるのですわ。幸か不幸か私は幼少の時にあの問題がありずっと神殿で暮らす事となったのでそう言った話は来ませんが私の姉妹たちは引手数多で顔も見た事も無い殿方と婚約を交わしていますわ」



 エマ―ジェリアさんは心底嫌そうにそう言う。


 「仕方ないでしょ、エマの家はそれで特別な立場を維持しているのだから」


 セキさんにそう言われエマ―ジェリアさんは「分かっていますわ」とだけ言ってそっぽを向く。



 うーん、貴族の家柄の人も大変なんだなぁ。

 顔も知らない人と結婚させられるなんて。



 「とにかくここに支援物資は置いておくわ。後はお願い。フェンリル、ソウマ城に行くわよ!」


 シェルさんは山ほどの支援物資をここに出してから僕たちを呼び城に行く事となったのだ。



 * * * * *



 「なんで城壁とお城が一緒になってるんですか?」



 シェルさんにくっついて城まで来た僕たちはその異常な形のお城に驚く。


 「ここはもともとガレント王国最北の砦だったのよ。そこが独立して国になった。その名残ね」


 シェルさんはそう言いながら正面からずかずかと入っていく。

 お城を守っていた衛兵さんもシェルさんを見るとびしっと背筋を伸ばして僕たちを通してくれる。



 「変わってないわね、この辺は‥‥‥ って、あれ? 私なんでそんな事を知っているの?」



 姉さんは自分のつぶやきに驚く。



 「フェンリル、あなたは何度も生まれ変わってここに戻って来たのよ。だからわかるのじゃない?」


 「私がここに住んでいた?」



 姉さんはそう言って周りをきょろきょろ見る。

 そして大広間に行く前にさらに上の階に行く階段をじっと見ている。



 「あの、シェルさんあの階段の上ってもしかして私が住んでいた部屋がある場所ですか?」


 「ん? 思い出したの? そうよ、あの人とあなたの愛の巣よ。あの部屋は万が一の為にこの千三百年間昔のまま残しているわ。気になるなら後で連れて行ってあげるわよ?」


 姉さんは複雑な顔をする。

 そしてまたつぶやくように言う。



 「気にはなるけど昔の自分を思い出すとなんか取り返しのつかない事になるような気もするし、ものすごく怖くなってくるわね‥‥‥」



 「姉さん?」


 「ん、なんでもない。私はやっぱりソウマが好き! ソウマぁ~」


 「ぶっ! こんな所で抱き着かないでよ!」


 「もうソウマのいけずぅっ!」



 なんか自分をごまかすかのように無理やり僕に抱き着いて来る姉さん。

 全く、今は王女様に会いに行くんだから大人しくしてもらいたいもんだよ。



 「ほら、遊んでないでここが謁見の間よ」





 シェルさんはそう言って衛兵たちにその扉を開けさせるのだった。


 

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