第51話3-10湿地帯を抜けて
『んじゃぁ、その子が魔王様の思い人って訳?』
僕は姉さんに奇麗に洗われながらシェルさんとピンクのツインテール悪魔との会話を聞いている。
「ごめんなさいですわ! ごめんなさいですわ! ごめんなさいですわぁっ!!」
エマ―ジェリアさんがまだ僕に謝っている。
いや、もう良いんだけどね。
上半身を裸にされて何度も姉さんに洗われている僕は苦笑しながら「もう良いんですよ」と言うとエマ―ジェリアさんは泣きそうな顔で青くなってガタガタしながら言う。
「ソ、ソウマ君に粗相をしてしまったのにあの笑顔! きっと後で私にあんな事やこんな事や、はぁーんっ! な事させるつもりですわね!? ああ、この体がシェル様以外に汚されてしまうなんてですわ!!」
いや、汚されたのは僕なんだけど?
僕はエマ―ジェリアさんにそんな事仕返しなんてするつもりは全くないよ?
『むう、少年よ、何と言うご褒美だ! 我もリリス様やそちらの金髪碧眼の美少女にやられてみたいぞ!!』
なんか水龍さんがうらやましそうに僕を見ている。
そしてまたセキさんに踏んず蹴られる。
『ああぁーっ! 赤竜様お許しをっ! 美少女に踏まれるのは大好きですが大人の女性は私のストライクゾーンから離れますぅ! って、ごめんなさい! あ、マジで踏まないで!! 死んじゃうからぁッ!!』
ガシガシガシガシガシッ!!
セキさんの蹴りにだんだんと水龍さんの声が小さくなっていく。
本当にやばいんじゃないの?
「魔王ミーニャは前世の記憶が戻っても基本は今の女の子の意思が強いからね。間違いなくソウマを欲しがっているわ」
『だとすると、その時の為にあたしが手取り足取りあの少年を教育する必要があるわね? ついでにあんたたちに付いて行けば【ハーピーの雫】も手に入りそうだし、魔王様も大喜びになられるはず!』
ぐっとこぶしを握って力むピンクのツインテール悪魔。
そして僕を見てよだれを垂らす。
『大丈夫よ~、お姉さんがいろいろと教えてあげるわよぉ~。それに初物は美味しく頂けるから楽しみだわぁ~』
すると姉さんが僕に抱き着いてくる。
「ぶっ!」
「ソウマは私のよ! ソウマの初めてだって私が予約済みよ!! ソウマ、あんな子よりお姉ちゃんの方が良いよね? お姉ちゃんいっぱい勉強して頑張ってるからちゃんとソウマの事立派な男の大人にして見せるわよ!?」
「ぶはっ! なんなんだよ!? 姉さんにはちゃんと僕が強くなるために稽古つけてもらうってお願いしてるじゃないかよ? それにあのピンク髪の悪魔の人より姉さんたちの方が強いんでしょ? だったらそれで良いじゃないか?」
「ソウマっ! やっぱりお姉ちゃんを選んでくれるのね!? うれしいっ!!」
「ぶおっ!!」
そう言って姉さんは更に強く僕に抱き着く。
もう言うまでもなく窒息死確定。
エマ―ジェリアさんの「キャーキャー」いう叫び声を聞きながら僕は意識を失うのだった。
* * * * *
「んっ? あ、あれっ??」
「起きましたわね? もう大丈夫ですわよ?」
エマ―ジェリアさんが上からのぞき込んでいる。
そして感じる後頭部の温かい感触。
「うぁっ! ごめんなさいエマ―ジェリアさん!! すぐ退きます!!」
慌てて起き上がろうとした僕の額に少しひんやりとしたエマ―ジェリアさんの手が置かれ起き上がるのを阻止する。
「もうしばらく大人しくしていなさいですわ。ソウマ君はもう少しで死んでしまう所でしたわ。危うく【蘇生魔法】などと言う私でも出来るかどうか分からない神の御業を使う所でしたわ」
ツンとそっぽを見ながらエマ―ジェリアさんはそう言う。
だけど額に置かれた手の平は優しく僕のおでこを撫でている。
「ソウマぁ~ごめんなさぁい~ぃ」
見れば姉さんがすぐ横で涙目で僕を見ていた。
「あら気付いた? よかったわねソウマ。危うくフェンリルの胸であの世に行っている所だったわね?」
シェルさんの声が聞こえた。
僕はシェルさんの方を見ながら訪ねてみる。
「僕はどうなったんですか?」
するとセキさんがケタケタ笑いながら話してくれた。
「あの後フェンリルがソウマを離さずリリスがソウマに近寄るのをエマが阻止して大騒ぎになったのよ。その間にソウマが窒息して意識が戻らなくなっちゃったのよね~。エマの話だとあと少し遅かったら完全に窒息死していたそうじゃない? エマの【治癒魔法】で何とかなっていたけどそんなに危なかったの?」
「【回復魔法】では間に合いませんでしたわ。だからと言って【治癒魔法】でも危なかったほどですわ。本当にフェンリルさんも気を付けた方が良いですわよ?」
「はい、深く反省しております‥‥‥」
ぴこぉ~!
見ればアイミも隣を飛んでいる。
そして僕は今更ながらにオオトカゲの上にいる事に気付く。
『まあ、そのうちあたしがいろいろ教えてあげるわよ。ソウマって言ったわね? 魔王様の初めての為にあんたにあたしが直にいろいろと教えてあげてすっきりさせてあげるから安心なさい!』
声のする方に視線を向けるとオオトカゲの頭の上にあのピンクのツインテール悪魔は跨っていた。
なんでいるのこの人?
「さて、湿地帯をもうじき抜けるしリザードマンの集落で事の真相を話したら出発よ」
シェルさんのその言葉にとりあえずここではこれ以上ご迷惑はかからずに済んだなと内心ほっとする僕がいた。
はぁ~、早くミーニャ連れ戻さなきゃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます