第48話3-7水龍
古代神殿が有ると言うその沼はリザードマンたちの集落から半日かからない場所にあった。
この辺は湿地帯が多く結構ぬかるんでいる所も多いのでオオトカゲに乗っての移動は必須だった。
「いやぁ、ほんとにアイミって飛べるのね! アイミがこんな所を歩いたらすぐにぬかるんで歩けなくなっちゃうんじゃないかって心配だったのよね」
姉さんは僕たちの乗るオオトカゲの横をふよふよと緑色のきらめく光を出しながら浮いているアイミを見て感嘆の声を上げる。
でもこれってまるで風船のようにふよふよとしていて飛べるって呼んでいいものやら。
そんな僕の考えを読み取ったかのようにシェルさんがつぶやく。
「アイミが本気を出して飛べば竜と同じくらいのスピードは出せるわ。もし『魔王』が『鋼鉄の鎧騎士』を使ったとしても陸戦用なので特別な一体を除いて全てが空を飛べないってのが救いなんだけどね。だから万が一は上空からアイミを使って攻撃とかもできるのよ」
シェルさんはアイミを見ながらそう言う。
確かに村に有った「鋼鉄の鎧騎士」は空何て飛べなかったけどそれでも跳躍すれば結構な高さまで飛び上がれたはず。
「う”~、揺れが少なくて助かりますわぁ~」
アイミの上のエマ―ジェリアさんはぐったりしながらそう言っている。
まだ体調が悪いようだ。
と、前を歩いていたリザードマンのブーズさんが止まって手を挙げた。
「セキ様、気を付けてください悪魔たちです!!」
そう言って身をかがめ生えている草に身を隠すかのようにゆっくりと前に進む。
そして‥‥‥
「ちょっ! あんたあれだけきつく言っていたのに!!」
思わずセキさんがそう言ってオオトカゲから飛び降り前にいたブースさんの頭をげんこつで殴って地面にめり込ませる!?
ばきっ!
ずぼっ!
『んん~? またぁあのリザードマン? 全く毎回毎回いきなり威嚇してくるなんてどう言うつもりよ? ラガード、リガードちょっと痛めつけてやりなさい!』
『『はっ!』』
どうやらいきなり遭遇してそして見つかったようだった。
でも今の話聞いてると会うたびに酷い目に合わされるのってもしかして見つけるたびに威嚇しちゃっているから?
そう言えばブーズさんしゃがんだとたんに尻尾をぴんと持ち上げていたっけ?
「こいつは! 人がさんざん警告しているのにいきなり何やってんのよ!?」
「ぶはっ! す、すみませんセキ様、つい癖でまた威嚇してしまいました!!」
なるほどやっぱり毎回威嚇しちゃっていたんだブーズさん。
癖とか言っているけどいい加減に直しておかないと竜族の人が相手だったら黒焦げにされちゃうよ?
『あら? リザードマン以外にもいるの?』
そう言って背の高い草を分けてこちらにやって来たのはミーニャと同じくらいの歳っぽいピンク髪のツインテールの可愛らしい女の子だった。
でもやたらと肌が出ている、いや、ほとんど下着と同じような格好にマントを羽織っているツインテールの女の子は僕を見つけると途端に嬉しそうに笑う。
『どこの誰かは知らないけど可愛らしい男の子ね! 私の好みだわ!! おいしそう、ねえ君私と良い事しない? あ、まだ経験なさそうだからお姉さんが優しく食べてあげるわよ?』
にまぁ~っと嬉しそうに笑うそれはまるで蛇のような視線だった。
そして僕の事を食べるって、やっぱりこの人が悪魔なわけ?
いやだよまだ死にたくないってば!
「ソウマ、下がっていなさい!! あんたが最近この辺でうろついている悪魔ね!?」
「なんだ、ガキの悪魔じゃない?」
「セキまだいるみたいよ」
姉さんはすぐになぎなたソードを引き抜き僕の前に出る。
セキさんもブーズさんの首根っをつかんで後ろに放り投げる。
そしてシェルさんは油断なくオオトカゲの上に立ち上がりながらセキさんに警告をしている。
するとシェルさんの言う通り女の子の後ろからやたらと体格のいい筋肉隆々の悪魔が二体出てきた。
『リリス様、リザードマンの気配が無くなりましたが? おや??』
『リザードマン以外ですか?』
赤と白の左右対称の筋肉マッチョの悪魔だった。
『ふぅうぅん、ねえ、あなたたちこの辺でハーピー見かけなかった?』
リリスと呼ばれたそのピンクツインテールの悪魔は姉さんたちを見まわしてからそんな事を聞いて来た。
「残念ながら見てはいないわね? それよりあなたたちは『魔王』の配下ね?」
シェルさんの質問にガラッとその雰囲気が変わる。
『魔王様を知っているとは。何者なのあなたたち!?』
さっきの筋肉悪魔もその女の子の前に出てくる。
「そうねぇ、関係者よ。いろんな意味でね」
すると途端にそのピンク髪の女の子も筋肉マッチョも警戒をさらに強める。
『ま、まさか監査委員じゃないでしょうね!? 魔王様ったら無茶な事ばかり言うからそんな訳の分からないアイテム何てそうそう簡単に見つからないってば!』
女の子の悪魔がそう言うと残りのマッチョ悪魔もうんうんと腕組みして頷いている。
監査委員?
無茶なアイテム??
まあ、ミーニャらしいって言えばそうだな。
昔から無茶な事を言いだすんだもんなぁ。
「そんな変なもんじゃないわよ! それよりあんたたちリザードマンの人たちに迷惑かけてるって話じゃない!?」
僕がミーニャの事思い出していると姉さんが今回の問題点を追及する。
『はぁ? 何言ってるのよ? あたしたちが魔王様に命じられたアイテム探していたらいきなり威嚇してくるんだもん。しかも毎回毎回何度も何度も威嚇してきてしつこいったらありゃしない!! あまつさえは水龍までけしかけてきてあたしたちが何したってのよ!?』
怒り心頭でそう言って来るピンクのツインテール悪魔。
かなり苛立っているのかツインテールも少し持ち上がっている。
ぴこっ!
いや、アイミはいつも耳をぴこぴこ上下させているからこんな所で張り合っても仕方ないでしょうに?
思わずそんな事を思ってしまったらセキさんが後ろに戻ってブーズさんの首根っこを掴んで戻って来た。
「一体どう言う事よ?」
「そ、それはデスネ‥‥‥」
リザードマンも脂汗かくんだ。
セキさんのにっこりとした笑顔が怖い。
シェルさんはため息をついているけど真面目な顔になってピンクのツインテール悪魔に聞く。
「でも水龍はあなたたちが始末したのよね? 深い知り合いじゃないけど知っている者が害されるのは気に入らないわね?」
するとピンクのツインテール悪魔はだんっっと足を踏み鳴らし中指立てながら文句を言って来る。
『ぬぅわぁぁああにぃいぃ言ってるのよぉっ!! あたしがあいつにどれだけ迷惑かけられているか分かっているの!?』
筋肉マッチョの悪魔もそれに合わせてうんうんと頷いている。
『あの変態ドラゴン人を襲っておいて返り討ちにしたらもっと踏んでくれってどう言う奴よ!? しかもしつこくしつこく踏んでくれって!? あんまりしつこいんです巻きしてやったらもっと強く縛ってくれってどう言う奴よぉ!?』
「「「は?」」」
思わずシェルさんとセキさんと姉さんが目が点になる。
セキさんは震える指先でピンクのツインテールの悪魔を指さしながら聞く。
「あ、あんたがその水龍殺しちゃったんじゃ無いの?」
『殺していないってば! 誰があんなキモイ水龍殺すってのよ!?』
ぎぎぎっ
まるで油の切れた機械人形のようにセキさんとシェルさん、そして姉さんはブーズさんを振り返る。
「い、いや、水龍様が倒されたとしか言っておりませぬ!!」
「ほほぉ~、ちょっとこっち来いあんた」
セキさんが指をボキボキ鳴らしながらブーズさんに迫る。
そしてブーズさんの悲鳴が上がる。
「いやぁぁああああぁーーーーーっ!!」
『ちょっと、あんたらあの水龍の関係者なんでしょ? だったらあいつに言ってよ! あたしたちはあんなのにかまっている暇ないんだからって!!』
ピンクのツインテール悪魔は腰に手を当てふんすと鼻息荒く言う。
僕たちは顔を見合わせてしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます