第47話3-6水の神殿
「良いわねぇ、じゃんじゃん持ってきなさい!!」
シェルさんがリザードマンたちの接待で宴を開いてもらい、お酒を飲み始めたら元気が出て来たみたい。
魚料理が多いけど僕たちの見た事の無い果物や野菜も結構ある。
基本的にリザードマンは雑食であまり人間たちとの交流が無いらしいけど言葉が通じる分ちゃんと話せば理性的な対応をしてくれるらしい。
前に精霊都市ユグリアに行った時も冒険者の中にはリザードマンもいると言う事を聞いた事が有る。
「それで神殿に住み着いてる悪魔ってどんな奴なんです?」
蒸し魚を美味しそうに食べながら姉さんは聞いてみる。
「うむ、小さな者一人と大きな者が二人いる。沼の付近を何か探しているみたいだが最近我々の集落に近づいてくる。様子を見に行くと攻撃してくる、危険な奴等だ」
リザードマンの戦士で最初に僕たちと会ってここへ案内してくれたブーズさんが魚を丸呑みしながら答えてくれた。
「全部で三体だけって事?」
「見かけたのはあいつらだけだ」
姉さんの質問にもブーズさんは端的に答えた。
「数が少ないって事は結構強い連中かもしれないわね? 面白そうじゃない?」
ヤギの丸焼きに手を伸ばしながらセキさんは嬉しそうに言う。
前にも話で聞いたけどその悪魔って肉体を持っているから上位の悪魔らしい。
様子を見に行っただけで攻撃してくるなんてなんて凶暴なのだろう。
僕は珍しい果物をかじりながらそう思っているとエマ―ジェリアさんが腰に手を当て上機嫌でいう。
「らいじょうぶれすわぁ~!! しょんにゃ悪魔にゃんてシェルしゃまにかかればいちころですわぁ~!!」
「誰よエマにお酒飲ませたの!?」
「あら? 何時の間に私のお酒飲んでたのエマ?」
セキさんが慌ててエマージェリアさんのもとへ行く。
どうやらシェルさんにくっついていてお酌していたエマ―ジェリアさんがお酒を飲んでしまったらしい。
「ショウマ君っ! シェルしゃまに手を出しぃてはいきぇましぇんわぁ~! ヒョウマきゅんはフェンリリュしゃんとしゅれば良いのれすわぁ~!!」
「エマ―ジェリアさん! そうよね、ソウマは私とが良いわよね!!」
指先が定まらない感じで僕を指さしている様だけどエマ―ジェリアさんは何故か楽しそうに笑いながらふらふらしている。
そして姉さんはエマ―ジェリアさんに言われて僕に抱き着いてくる。
「ぶっ! 姉さんいきなり抱き着いて来ないでよ!!」
「良いじゃない、聖女様の公認よ! もうソウマをこのまま男にしちゃいましょうよ!!」
「だから何それっ!? 僕ちゃんと男の子だよ!!」
相変わらずおかしなことを言う姉さん。
それによくよく見れば姉さんもお酒飲んでいた。
姉さん、酔っ払ってるね?
「はぁ、もうあんまりお酒強くないんだからほどほどにしてよね、姉さん」
「うぅ~ソウマのいけずぅ~」
姉さんの顔を片手で押し退けながら僕はその珍しい果物をまた食べ始めるのだった。
* * * * *
「うぅ~、頭がガンガンしますわぁ~」
翌朝僕たちは神殿に行ってみる為に準備をしていたのだけどエマ―ジェリアさんがかなり体調不良のようだった。
「慣れないお酒なんか飲むからよ。シェル、エマがこれじゃ駄目なんじゃない?」
「ここに置いて行くわけにもいかないからフェンリル、アイミにお願いして背負ってもらって」
ぴこっ!
姉さんが何か言う前にアイミは嬉しそうにエマ―ジェリアさんを抱きかかえた。
久々に活躍できるのでうれしいみたい。
ぴこぴこ!
「ふんふん、エマ―ジェリアさんの事は任せろだって? そうね、それじゃお願いねアイミ!」
ぴこ!
うん、やっぱり何言っているか分かんないや。
ある程度はボディーランゲージで理解できるけど耳をピコピコしただけじゃ分からないって。
僕は姉さんを見ると姉さんはにまぁ~っと笑って僕に話しかけてくる。
「なになに、ソウマお姉ちゃんを見て? もしかしてしたくなっちゃった? 我慢できなくなった? お姉ちゃん何時でも良いんだよ?」
「何言ってんだよ姉さん、こんな時に稽古するわけないじゃないか。それにもうすぐ出発でしょ?」
「もう、そっちじゃ無いのに! ソウマのいけずぅ~っ!」
全く訳が分からないよ!
けらけら笑うセキさんだったけどリザードマンのブーズさんが出発をすると言うとすぐに真顔に戻り僕たちはいよいよその神殿に向かって出発をしたのだった。
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