第36話2-15ボヘーミャへ帰還


 僕たちは翌日ボヘーミャに戻る事となった。



 「それじゃあ行ってきます」


 「あら~、シェルもう行っちゃうの? もっとゆっくりして行けばいいのに~」


 「母さん、それ言ってたらまたファイナス長老に文句言われるわよ?」



 昨日はシェルさんの実家に泊めてもらった。

 寝る場所が少ないので昨日は姉さんと一緒のベッドに寝たけど、夜間何度窒息しそうになった事か。

 


 「はうぅぅぅ~、出来ればずっとここにいたいですわぁ~。毎晩シェル様と同じベッド何てですわぁ!!」


 何故かエマージェリアさんは満足そうな顔してお肌がつやつやだった。



 「残念ながら早い所に魔王の子を何とかしなきゃだからね。そうしないとあの人が出て来ちゃうし」


 「シェルぅ~無理しなくていいんだぞ? あいつが嫌で大変ならいつでも帰ってきていいんだぞ?」


 シェルさんがお母さんにそう話していると後ろからシェルさんのお父さんが悲しそうにそう言う。

 でもすぐにシェルさんのお母さんにコークスクリューアッパーを喰らって沈黙する。



 あれ見事に決まったけど大丈夫なのかな??



 「あらあら、あなた、シェルにも子供が出来る可能性が有るのだから野暮な事は言ってはだめよ? 私は早く孫の顔が見たいのだから」


 「母さん、相変わらず手加減なしね‥‥‥ ま、姉さんも気を付けて行ってきてね。それとソウマ君たちも! ちゅっ!」



 そう言いながらシャルさんは僕の頬にキスしてきた!?



 「なっ! シャ、シャルさん!! ソウマに何してるんですか!!」


 「ソウマ君、年上にばかり人気が有るのですの? もしかしてお姉さんキラー!!!?」


 「あらあら~シャルの方が先に孫の顔を見せてくれるかしら?」



 驚きキスされた頬を手で押さえ赤くなっちゃう僕。

 すぐさま姉さんに抱き着かれまた窒息しそうになる。



 「シャルもあまりソウマとフェンリルをからかわない。それともソウマに興味でも湧いた?」


 「まさか、あたしは姉さんと違って年上が好みなの。ソウマ君は可愛い弟かな? 祝福のキスです。頑張ってね」


 シャルさんはそう言ってほほ笑んでくれる。



 僕は姉さんの胸の中でそれを見ながら思わずドキリとする。

 やっぱりシェルさんとよく似ている。


 そんな事を思いながらシェルさんの実家を後にするのだった。



 * * * * *



 エルフの村から結界の門を抜け森の中の小高いゲートの所まで来た。



 「来たか。まあ、何だシェル頑張れ」


 ゲートの番人をしているというソルガさんが僕たちを迎えてくれてシェルさんにそう言う。

 シェルさんはふっと息を吐いて頷き腰に手を当て大きな胸を張りだして言う。


 「勿論よ、早い所魔王を何とかしてあたしも帰って子作りに励まなきゃ!! メル長老たちからいろいろとテクニックやら何やら聞き出したからね!!」



 「シェルも頑張りなさい! 私も頑張るから!!」


 「いや、ソルミナお前はボヘーミャに一緒に帰るんだろう?」


 「いえいえ、お給金減らされたからギリギリまでここで兄さんを誘惑します! この後一緒に子作りでもどうですか!?」



 なんか込み入った話になって来たけどさっきからエマ―ジェリアさんが真っ赤になって「きゃーきゃー」叫んでいる。



 「駄目だわね、やっぱりエルフの感覚には付いて行けないわ‥‥‥」


 姉さんは僕に抱き着きながらそう言う。

 もう、いちいち抱き着かないでほしいんですけど。 


 

 「シェル、早い所戻ろうよ。やっぱりエルフの村の食べ物は合わないわ。いい加減お肉食べたい!」


 しびれを切らせたセキさんが尻尾を地面に叩きながら催促してくる。

 それを受けて今度こそシェルさんはみんなを魔法陣に入れてゲートを起動させる。



 「それじゃ、行ってきます。 って、ソルミナ姉さん、本当に残るの!?」



 「はいはい~、頑張ってねぇ~! さあ兄さん、他には誰もいませんよ! さぁさぁッ!!」


 「うわっ! やめんかぁーっ!!」



 何故か最後にソルガさんの悲鳴が光のカーテンの向こうからする。

 そしてやっぱり後ろにいるエマ―ジェリアさんが真っ赤になって「きゃーきゃー」騒ぐのだった。



 * * * * *



 学園都市ボヘーミャに戻った僕たちはすぐに学園長さんに呼び出された。

 そして学園長室で僕たちは驚きの事実を知る。



 「『魔王』の手下たちが世界各国に分散して暴れています。すぐにでもそれを取り押さえなければなりません」



 学園長さんは机に座って報告のある書類を見ながら後ろに張り出された世界地図に印をつけさせる。



 「ユカ、何が起こっているのよ!?」


 「どうやら『魔王』が直々に少数ではありますが配下のモノを各国に送り出し何かを探しているようです。市場を中心に現れているようですがそれを取り押さえようとすると大暴れして各国から連合軍への支援要請も出ています。ガレントの連合軍駐屯地からシーナ商会の協力のもと、軍を派遣するにも困難を極めています。少数精鋭、そして機動力情報収集力のある者たちで対処するしかありません。シェル、やってもらえますね?」



 どうもミーニャがハーピーの何とかっての探して世界中に配下の者を送り出しているみたい。



 「やばい、被害が拡大している!! シェルさん!!」


 「あー、もう、仕方ないわね!! ユカまずは何処へ行けばいいの? 早い所そいつらを退治して魔王城へ乗り込まなきゃってのに!」



 姉さんのその言葉にシェルさんは親指の爪を噛み苛立つ。

 そこへセキさんが平手に拳をパンっと打ちつけニヤリと笑う。



 「シェル行こう!」


 「シェル様行きましょうですわ! 女神様の名のもとにふらちな輩に鉄槌をですわ!」




 こうして僕たちは学園長さんが地図に指さすそこへ行く事となったのだった。

 


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