第3話1-3ノルウェン王国


「こ、ここがノルウェン王国ね!? すごい人がいっぱい!」



 フェンリル姉さんは初めて来るノルウェン王国の街でたくさん人が歩いている様子を眺めている。


 「い、良い事ソウマ、絶対にお姉ちゃんから離れちゃだめよ!? 迷子になったら大変なんだからね!!」


 そう言って姉さんは僕の手を握る。

 あ、ちょっと緊張しているのかな?

 少し汗ばんで震えている。


 ちらっと姉さんの顔を見ると頬を赤くして嬉しそうに僕をちらちらと見ている。



 「ね、ねえ。あたしたちって恋人か何かに見えるかな?」


 「それは無いんじゃない? 姉さん僕よりずっと背が高いしどう見ても姉弟だよ」


 「ううっ、ソウマのいけずぅ」


 僕たちはとりあえずこう言う時はどうしたら良いか先生に教えてもらったので宿屋に行く事にした。

 


 * * *



 「こ、これが宿屋ね!? ごくっ、こ、これでソウマと初めての‥‥‥」



 宿屋の前でなんか言っている姉さんを押して中に入る。



 「まって、まだ心の準備が!」


 「何の準備か知らないけど早い所中に入らないと後ろで他の人が待ってるよ」



 姉さんを押して中に入ると食堂の様になっていた。

 これって村に有った食堂に似ている。

 一階が食堂で二階が泊まれる部屋が有ったっけ?



 「あ、あら? イメージしていたのとはだいぶ違うわね? 村に有った食堂と同じ感じね?」


 どんなイメージをしているのだか。

 とにかくそうすると奥のカウンターでお金を払って部屋を借りられるはずだよね?


 「おう、いらっしゃい。ずぶんとべっぴんさんじゃないか? ん? 後ろのはお付きか何かか?」


 「え、ええと、部屋を借りたいのです」


 「泊まりか? 部屋はどうする? 通常部屋は一晩六銀貨、飯付きだ」



 ええっ!?

 一晩で六銀貨もするんだ!

 流石に都会は違うね、村の宿だったら銀貨一枚で食事つきだもんね。



 「ちょっと高すぎない? あたしたちが田舎者だからって吹っ掛けてない?」


 「何言う、うちは良心的な方だぞ? ちゃんと飯だって美味いものが喰えるんだからな」


 そう言われ姉さんは仕方なく三日間の部屋を取る。

 するとおじさんは部屋の鍵を渡してくれる。


 「上がって右側三つ目だ。トイレは共同で一番奥な。お湯は桶で一人一杯までサービスだ」


 僕たちは鍵を受け取って二階に上がりとりあえず言われた部屋に入る。

 普通の部屋でベッドが二つ置いてあり小さなテーブルと椅子が二つあった。



 「ちっ、期待していたのにベッドが二つなのね‥‥‥」


 「え? ベッド一つじゃせまいじゃない? よかったよちゃんと二つある部屋で」


 「ううっ、ソウマのいけずぅ‥‥‥」



 荷物を置いて装備を外し楽な格好になってから下の食堂にご飯を食べに行く。

 そろそろ夕暮れだし何を食べさせてもらえるのかな?


 僕はワクワクしながら食堂を見ると冒険者っぽい人たちがいる。

 でもなんか様子が変だ。

 みんな暗そうな雰囲気でぼそぼそ話している。


 

 「ソウマこっちよ。ここのテーブルが空いてるわ」


 姉さんはそう言って椅子に掛け食事が来るのを待っている。

 そして出された食事はシチューにパン、それにサラダがついていた。



 「うーん、宿代込みだとこんなものか? 味は悪くないけどもう少しお肉とか食べたいわね」


 「贅沢言っちゃだめだよ姉さん、それにこのシチューちゃんと大きなお肉も入ってるじゃない?」


 「でもこれだけじゃ足りないわよねぇ~。この辺だと熊もいないだろうし」


 また姉さん野生の動物捕まえて食べるつもり?

 確かに何時も姉さんが食べている量から比べれば少ないけど。


 姉さんはお金の入った袋を出して中身を見ている。


 「うーん、この先考えると無駄遣い出来ないしなぁ。路銀の盗賊って街でも出ないかなぁ?」


 ものすごく無茶な事言う。

 でも確かにこの先考えると何か収入になるモノが無いと‥‥‥



 「ほんとかそれ? ホリゾンが魔王によって滅ぼされたって話は?」


 「そう言えば北の方とは連絡が取れなくなってるって聞いたな。風のメッセンジャーも音信不通らしいぞ」


 「本当に魔王が復活したのかよ? 冗談じゃないぞ!」



 隣の冒険者風の人たちの話し声が聞こえてきた。



 「「う”っ!」」

 


 から~ん



 思わず僕と姉さんは持っていたスプーンを落としてしまった。

 そして僕は姉さんを見る。

 

 「ミーニャの事わすれてた‥‥‥」


 「‥‥‥うん」



 そして思わず二人して僕たちは頭を抱えるのだった。

  

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