第2話1-2旅の途中で稽古
「とりあえずティナの国に向かいましょう」
フェンリル姉さんはそう言ってこの村から一番近いと言われる「ティナの国」と真逆の方に向かって歩き出す。
「姉さん、確か『ティナの国』って反対方向じゃなかったっけ?」
「あら? そうなの?? でもあっちの方が面白そうじゃない?」
面白そうと言うだけで反対方向に行くの!?
道しるべが書かれた石碑が有るのに何故そうなるの!?
「え~、そっちって山越えしてノルウェンに行く方じゃなかったっけ?」
「ノルウェンって魔晶石が安いらしいわね? お土産に買っていく??」
「いや、姉さん僕たち持ち合わせにそんなに余裕ないんだから無駄遣いしちゃだめじゃない?」
「え? でも山道で私が肌を露出すると惨殺していい悪い人たちが出てくるからそいつらを駆除すれば路銀が稼げるって先生言っていたわよ?」
先生の言う事ならそうなのかもしれない。
でも姉さんの肌を露出ってどう言う事?
風邪ひいちゃうよ??
「なに? ソウマもお姉ちゃんの露出姿見たい? 見たいの!?」
なぜ興奮するの姉さん?
別にそんなの見たいとは思わないんだけど?
「うーん、別に見たいわけじゃないんだけど風邪ひかないでね?」
「ソウマは優しいねぇ」
そう言って姉さんは僕を抱きしめるのだけど姉さんの胸って大きすぎて顔が埋もれると呼吸困難になるんだよね。
「ぷはっ! 姉さん抱き着かないでよ! 息が出来なくなる!!」
「もう、ソウマのいけずぅ!」
ぷんぷん!
何故か怒る姉さん。
「おいおい、見せつけてくれるじゃねーか? お? いい女じゃねーか! おいお前ら大人しくしろよ、そうすりゃ痛い目を見ないで済むからな!」
「ぐへへ、兄貴、俺らにも回してくだせーよ!」
「ガキは奴隷で売りさばくか? なんか弱そうな奴だがな?」
「ひゃっはぁーっ! こんな所を女とガキだけで歩いているとはな!!」
なんか変なおじさんたちが出てきた。
「なんなんですあなたたちは? 私たちは『ティナの国』に行きたいんですけど?」
姉さんが僕の前に出てこのおじさんたちに話しかける。
「はっ!? どうやら世間知らずのお嬢さんのようだな? よぉし、俺が直々にいろいろ叩き込んでやるからな、楽しませてやるぜぇ。 げっへっへっへっへっ」
なんか変な笑い方のおじさんたちだな?
「ほれ、こっちにこい!」
「ちょっと、何するんですか!?」
「あ、姉さん!!」
変なおじさんはいきなり姉さんの腕を取る。
僕は慌ててやめさせようとする。
「オメーは邪魔だ! どいてろっ!!」
そう言って別のおじさんがいきなり僕に殴りかかって来る。
バキッ!
僕は殴られて思わずよろけてその場に倒れてしまった。
あれ?
でも全然痛くない?
「ソウマっ! 何するのよあんたたち!!」
殴られた頬をさすってみるけど何ともない。
おじさん手加減してくれたのかな?
「へへへっ、大人しくしていればいいものぉ‥‥‥ ひしゃげぶぅっ!!」
「許さない! 私のソウマを殴るなんて!!」
あ、姉さんいきなりおじさんの頭を殴って破裂させちゃった。
うわー、あれじゃ先生に習った【回復魔法】使えないじゃないか!
「うぉぃっ!? てめぇ、何モンだっ!?」
「うるさいっ! よくもソウマを!!」
「くそっ! こんな小娘にこの辺一番の盗賊団の俺様たちがやられるわけにはいかねえっ! おいお前ら全員出て来やがれっ!!」
盗賊団?
って事は悪い人たちだ!
「姉さん、盗賊団だって! 悪い人たちだよ!!」
「ちょうどいいわ! ソウマの仕返し路銀確保の為に殲滅よ!!」
そう言って姉さんは一瞬で盗賊団を片付けた。
* * *
「ひわぁぁぁぁぁああぁぁぁっっ!! お、お前ら本当に何モンだよ!? 素手でみんな殺っちまうなんて!?」
「うるさい、路銀! って、こいつソウマを殴った奴? ソウマ来なさい。こいつに一発殴り返すのよ!」
最後の一人は僕を殴ったおじさんだ。
別にケガしている訳じゃないしもう良いんだけどね?
「姉さん、もう充分に悪い人たちやっつけたし路銀回収した方が良いんじゃない?」
「いーえ、こう言う事はちゃんとやり返さなきゃだめよ! ソウマは大人しいからそう言う所から直さなきゃダメ! ほら、ビンタンでいいからやっちゃいなさい!!」
「ち、畜生っ! バカにしやがってっ!! こんなガキにやられてたまるか!」
あ、おじさん剣なんて振り回したら危ないよ?
それにわざとかな?
村のみんなと違ってスローモーションのように剣を振って来る。
流石に僕もこんなにゆっくり振られる剣に当たるのは嫌なのでフェンリル姉さんに習った護身術を使ってみる。
ひょいっと半歩踏み込んで相手の肘に手を添え受け流しながら相手のバランスが崩れたら捌きながら首の後ろに手刀を入れる。
べきっ!
なんか変な音がした?
でも姉さんに習った通りに出来たので僕は満足。
どしゃっ!
盗賊のおじさんはそのまま地面に顔面から突っ込み動かなくなっちゃった。
「あ、あれ? 姉さん、このおじさん動かなくなっちゃったよ?」
「上手く手刀が入ったから気を失ったのでしょ? それよりこいつらあんまり路銀持っていないわね? ソウマを殴った罪よ、そいつからもちゃんと路銀取っておきなさいね!」
姉さんはそう言ってどんどん金目の物を引っぺがして路銀としてポーチにしまっていく。
でも姉さんや先生の言う通りだ。
僕もこの首が背中に向いて白目向いて気を失っているおじさんの懐からお金の入った革袋を引き抜く。
うーん、外の世界ってこんなに簡単にお金が手に入るんだ。
ホクホク顔の姉さんと僕はこの盗賊のおじさんたちをそのままに歩き出す。
* * * * *
「ひゃっはぁーぁっ! いい女だな!! 大人しくしていれば‥‥‥ あぶしぃっ!!」
「そうそう、そうやって捌いて掌を叩き込むのよ? うん、流石ソウマ! 出来たじゃない?」
「ねえ、姉さんがその恰好するとなんで次から次へと悪いおじさんたちがやって来るんだろう? それにおじさんたち疲れてるのかな? みんな本気で来ないんだもん」
「いいのいいの、とりあえずソウマの稽古になるから、基本動作は繰り返してやる事!」
既に白目向いているおじさんたちがそこら中の山道に転がっている。
いい加減疲れて来たよ、それに姉さんその下着姿同然の格好じゃぁ風邪ひくよ?
「なに? お姉ちゃんのこの姿に見とれた?」
「風邪ひくからそろそろ服着なよ。はぁ、これで五十人目っと」
ばごぉんっ!
僕が掌を打ち込むとおじさんは景気よく飛んでいく。
ああやって受けた力を打たれた方向に促して威力を減らすのか。
村ではみんなよくやってたよなぁ~。
あれ?
あのおじさん岩にめり込んじゃった?
後ろよく見ていないからだよなぁ。
僕もよくそれで失敗したもんね。
「さてと、路銀もだいぶ溜まったし、いい加減どこかの村か町にでもつかないかしら?」
「姉さん、この石碑『ノルウェン王国』って書いてあるよ? 完全に反対の場所来ちゃったよ?」
「まあいいじゃない、道はどこかにつながっているわ。そのうち目的地に着くわよ!」
そう言って姉さんはどんどんと先に歩いていく。
仕方なく僕も姉さんについて行くのだった。
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