コスプレ少女、魔女になる!

月猫

第1話 秘密の学園

 肉体が滅びても、魂は滅しない。人は何度も生まれ変わり、多くの人生を体験する。しかし生まれ変わるたびに、過去の記憶はリセットされてしまう。過去の記憶は潜在意識の底に沈んだままだが、掘り起こすができる。


 何かをきっかけに、勝手に前世を思い出すことがある。

 潜在意識の情報を読み取れる特殊能力を持った人間に聞くことで、前世を知ることもできる。人々は、特殊能力を持った人間をヒーラー・魔女・魔法使い・魔術師などと呼んでいた。


 ここに特殊能力を育てる秘密の学園が存在する。

 この学園は古代アトランティス時代より各地を転々として現れ、西暦2000年、日本の山奥に忽然と姿を現した。

 学園は、秘密裏に生徒を集め日本の魔女を育成していた。


   ♢        ♢



 山の上の空気は邪気まみれの都会と違い、清く澄んでいる。

 新月の薄い月の光。

 力を増した星たちが輝き、大きな古城を包み込んでいた。

 そのバルコニーで、星に祈りを捧げる一人の少女。

「みかん。今日の祈り長くないか?」

 チャイナ服の艶っぽい女が声をかける。

「レモンお姉さま、いつからそこに?」

「私はずっとここに居たぞ。お前が頬を赤らめて、走って来てからずっとな」

 みかんは、大きな瞳をさらに見開いてから、恥ずかしそうに俯いた。

「そのマリー・アントワネットみたいなど派手なドレスを着て『白馬に乗った王子様が早く現れますように!』とでも祈っていたんだろ? まるで、シンデレラだな」

そう言うと、レモンはくすっと笑った。

「……お姉さまのいじわる!!」

 みかんは頬を膨らまし、ヒールで床を二度踏み鳴らすと、広間へと走り去った。白いリボンがたくさん付いたドレスの裾を踏みそうになりながら――


 すれ違うように修道服を着た小柄な少女が、広間からバルコニーへとやって来た。

「レモン様。また、みかん様をからかわれたのですか?」

「こんな山の中に居たら、みかんをいじるくらいしか楽しみがないからね。アスパラもさぁ、たまにその黒い修道服を脱いで彼氏でも見つけたら?」

「私の心は、イエス様の側にあります。男性に興味はありません」

「あぁ、相変わらず固いねぇ。せっかく人間として生まれたんだ。私みたいに思いっきり楽しめばいいのにさ」

「私には、理想の人生がございます。マザー・テレサのように弱き人々を助け、祈り神のために生きていきたいのです」

「はいはい! マザー・テレサね。ここは寒い。広間に戻るぞ」


 広間に向かう二人の後ろで、小さな星が閃光を放ち古城敷地内の泉に流れ落ちた。

 ウォォォォ~~~ン。

 ウォォォ~~ン。

 犬の遠吠えがこだまする。

 レモンとアスパラは足を止め、声のする方向を用心深く見つめた。


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