通学路の『ぺにー・わいず』

アほリ

1#通学路に浮かぶ赤い風船

 夜。れい子は、1人とぼとぼと歩いた。


 「やばいなあ。ここは夜はひとけないし、やけに薄暗いし。」


 

 とぼ、とぼ、とぼ、とぼ、とぼ、とぼ。



 靴の足音だけが響き渡る。


 「ここが駅までの近道だからな。早くいかないと終電には間に合わないし・・・」


 れい子は、この暗闇の中を小走りで進んでいった。




 ふうわり・・・



 「ん??」


 背後に、何か浮かんでいる気配を感じた。


 「赤い・・・風船?子供が忘れて来たのかしら?」


 れい子はその時気を止めずに、さっさっさっさと再び小走りに駅に向かって歩いていった。



 ふうわり・・・



 「えっ?」


 れい子がまた振り向くと、今さっきの風船がまたついてきたのだ。


 「気のせいね・・・」


 れい子はまた再び小走りで駆けていくと、また目の前に赤い風船が現れた。


 「・・・・・・?!」


 れい子は思い出した。


 この前に観たホラー映画だ。  


 赤い風船を持った『誰か』を見たとたんに、何処かに連れていかれて殺されるという内容の映画だ。


 「やば・・・まさか!?」


 れい子は、血の気が引いた。


 「まさか・・・あれは!!」


 「ぺ、『ぺにー・わいず』ぅぅぅぅぅーーーーー!!」


 れい子は、血相を変えてその場を離れて逃げた。


 たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!



 「まだ赤い風船が追いかけてくる!!」

 

 れい子が逃げても逃げても、その不気味な赤い風船はずーーーっと、ふうわりふうわりとしつこくしつこく追いかけてきた。 



 

 たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!




 れい子は、今何処に居るのか解らなくなった。


 「終電なんかもういいわ。この気持ち悪い赤い風船から逃げきれば!!」


 


 たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!たっ!!



 「わあっ!!」



 ハイヒールのかかとが躓いて、れい子は派手に転倒した。


 「いたたたたた・・・もう散々よ・・・」


 れい子が擦りむいたかかとを庇いながら、ゆっくりと立ち上がると・・・


 目の前に赤い風船が牙を剥いて襲いかかってきた。



 うにゃーーーーーーーーーん!!



 「ぎゃーーーーーーーーーー!!」





 


 



 


 


 

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