星団最強なのに回りくどい奴の物語。だってすぐに終わっちゃうじゃん。(改稿中

耀聖(ようせい)

出会いの章。

第1話 選抜者とのコンタクト(上)

 <<とあるサバゲーフィールド>> 


 颯爽に林の中を駆け抜け、会敵すると同時に散開、間髪入れずにトリガーを引くとタタタタ、パパパ、軽快に響く電動ガン、ガスガンの音。ここはとある首都圏近郊にある野戦型サバゲー場。忙しない戦いに明け暮れる周囲とは別に、藪の中を低い姿勢でゆっくりと移動する迷彩服を纏った2人がいた。


 男「・・・」


 前を歩いていた男がスッと左手を上げ行軍を止める。なぜならその10m先には黄色い腕章をつけた黒い戦闘服の敵集団が見えるからだ。


 敵1「この辺に潜んでいるかな」

 敵2「この時間ならまだ来ないと思うよ、もう少し先に進もう」


 見つからないように息を潜めじっとしていると、その集団は5m程先を話をしながら通り過ぎる。


 男「・・・(我慢だ、ここは我慢だ」


 ドドドと心拍数が急上昇すると全身に沸き立つような血が駆け巡り興奮と発見される恐怖感が入り混じり嫌でも緊張が高まる。冷静に確認すると相手は7人もいた。ここでトリガーを引くのは簡単だが絶対打ち負けてしまう。


「・・・・(黙」


 ここで飛び出すと相手は驚き、それはそれで面白いがそれは悪手だ。理想としては相棒と2人で背後から忍び寄り7人全員を屠るに限る。なので今はジッと我慢するしかない。緊張感が高まる中、敵は男に気がつく事なく通り過ぎた。


「・・・(成功だ!」


 男は後続がいない事を確認するとゆっくり方向を変え先程の敵を追い始める。すると少し開けたところにその敵はいた。パパパと発射音が響き渡りバリケードに身を隠し味方と撃ち合っているのでもちろん背後は全く警戒していない。いきなりのチャンスタイム到来だ。


「洋介行くぞ」

「うん」


 2人組のうち大柄な男が敵の位置と獲物の振り分けを手話で伝え終えると銃を構え軽く頷く。そしてスルスルとまるで忍者の如く音を立てずに飛び出ていくとサイレンサーを装着しているVFC社製ベガフォースSCARスカーから”バスバスバス”と鈍い単連射が響き敵の背中にBB弾が吸い込まれていく。


 敵1「イッ!ヒットー!ヒット―!」

 敵2「痛たた、ヒットー!ヒットでーす」


 いきなり背中を打たれた敵兵は着弾と同時にヒットコールを上げるが、まさかの背後からの襲撃だとは思ってなかったのか振り向くと驚愕な表情を浮かべていた。この事を仲間に知らせたいが死人に口なしなので死んだコールを上げた後は黙るしかないしそれがルールだ。


 洋介「ほれ!」

 敵3「うわぁヒット!」

 敵4「ヒット、ヒット」


 そして同時に左に飛び出したもう1人は長いサイレンサーの付いたマルイ製HK416Dを構え、割り振られた敵の背中に目掛け”ポンポン”と間抜けな発射音と共に的確に敵を倒していく。あとは簡単だ走り抜けながら蹂躙するだけだ。


 敵5「ヒット、クッソ背後かよ」

 洋介「こっち殺る」

 敵6「いてて、ヒット、ヒット」


 背後の急襲でみな対応が遅れていた。洋介は割り振られていない敵の銃口が自分に向けられそうになったので慌てずにBB弾を叩き込む。


「いいね、後は任せろ」

「俺も殺る」

 敵7「うわぁ、いてて、ヒット、ヒットでーす!」


 そして最前線、最後の1人を奪い合うように銃撃したため、最後に撃たれた敵が1番の貧乏くじを引くことになる。男は痛みを和らげるために咄嗟に腹部を狙い、洋介は確実にキルするためにヘッドショットを決めていたのだ。


 男「おい、俺は味方だ!前衛は潰したぞ!」

 友軍「サンキュー」


 フレンドリーヒットは頂けないので男は腕章の色を見せつつ味方アピールすると、銃撃が止み2人で味方の防衛ラインに滑り込む。


 洋介「はぁはぁ、やったね!」

 男「流石だな4キルだぞ」


 息の上がった2人はお互いゴーグル越しの目をみて”ニヤリ”と笑い、同時にガッツポーズを決める。


「ジー・・」


 そんな楽しそうに余韻を味わう2人の様子を複数の”ステルスシーカー”が上空から静かに見守っていた。


 ーー


 <<探査船・艦橋>>


 艦長「今回の獲物は大柄だけど抜群に動きがいいな」


 2人の戦いの様子をCIC戦闘指揮所の大画面で確認している艦長の男は動きを見てまんざらでもない様子だ。


 「今回の選抜者の中では一番ですね、名前は古木翔太ふるき しょうた小さい方は息子の洋介ようすけです」

 「是非ともあの親子共々が欲しい所だが、”星団法”で1人と決められているからな仕方ないか...」

「そうですよ2人共連れ帰ったら陛下に怒られますよ」


 何やら拉致して連れて帰るのが当たり前だと語っているし星団法とは?それに陛下というからには王国なのだろうか謎は深まるばかりだ。


「とりあえずシーカーをロックして追ってくれ、上層部の許可が取れ次第、家に戻った所で予定通り”自宅訪問”を行う」

「わかりました今から本国に打電します、強制転送はトラブルの元ですからね」


 シーカーとは言葉とおりSEEKと同じ意味の監視装置のことだけど宙を飛んでるし、転送とは物質を電波に乗せて運ぶ技術と言われ、軍事国家アメリカでさえ未だ実用化どころか設計図も無いような代物だ。という事はコイツらは凄く進んだ文明を持つ地球外生命体と言うことなのだろう。しかし見た目の特徴はガッツリ普通の西洋人だったりする・・。


「同意を得ずに誘拐みたいなことをすれば、入念に下調べをした努力が水の泡になるし、そもそも我々に協力などしないよ」


 艦長の話し振りからすると時間を掛けて選定していたようだし、いきなり拉致などはせず話し合いの場を設けるらしい。先ずは一安心といったところだろうか。


 Ai「索敵用レーダー波確認」

 レーダー手)「艦長!索敵レーダーを検知しました」


 一応の流れが決まり後は男が帰宅するまで待ちになるが、沈黙を打ち破るかのようにビーといきなり警告音が鳴り響いた。


 副官「クリス艦長”あの国”に動きがあり、こちらのシーカーの背後にやつらのシーカーが追従しています」

 クリス「チッ、やはりアイツら」

 レーダー手「あれ転送用シーカーですのでロック信号発砲すると間違いなく横取りしますよ」


 どうやら一人の男を巡って分捕り合いが始まろうとしていた。しかしクリスの口ぶりからすると違法では無いが常識的に考えて横取りはご法度なのだろう。何はともあれ艦橋内に嫌な雰囲気が漂い始める。


「仕方ない見失わない程度に離れて対象者の監視を続けてくれ」


 実は今回の対象者に対し特に入れ込んでいた。理由は定かでは無いが候補者選定の際にクリスは、一目見ると引き寄せられるよう即断したと言われている。


「クリス大佐一推しの候補者ですからね、見失わないようにします」

「頼むな、アイツとは早く話してみたい」


何故かクリスは初対面の筈の男に凄く興味津々だ。確かにサバゲーで見せた動きは多分プロか経験者と思われる。しかしそれだけではそこまでの気持ちにはならないだろう。


 副長「けど、お得意の横取りする気満々ですよ」


シーカーの距離を離すがやはり、あの国のヤツがピッタリと張り付いていた。


 クリス「ああ全く、アイツらは努力と言う言葉を知らん」


 クリスはこれ以上、口にこそ出さないが追従する国のことを詳しく知っている。なので心の中では「まったくあの国は余計なことをしやがる、大した努力もせず盗むにかけては天才的だ。だから基礎技術が弱く全てにおいてハリボテで自分たちのステルス技術はバレないと思い込んで出港後ずっと追尾だよ」とまあ酷評中だったりする。


 副長「クリス艦長どうしますか」

 クリス「なんかさー、ムカつくから最後にガツンとやってやるかー」

「恐ろしいこと言わないでください」


 どうやら今回が特別では無く過去にも同じような事例を経験したらしくクリスは相当腹に据えかねているらしい。なのでチャンスが有れば何かしらの方法でガツンと報復を考えているようだ。


「馬鹿には躾しつけが大事なんだよ!もし横取りされたら強襲して奪い返すぞ」

「は、はい」


 そしてクリスは横取りするであろう連中に対しての対応策を提示する。その内容とは機甲歩兵と呼ばれる特殊歩兵部隊を強襲艇に乗せステルス状態で相手の船に近づき監視。その間に弱点を見つけ攻撃の準備を行い強襲するチャンスを待つ。


「超長距離転送を使うと一時的にジャンプ用のエネルギーが足りなくなるその時が強襲のチャンスだぞ、修理できる程度にエンジンコアを攻撃しろ」

「了解です」


 横取りされ連れ戻した後に警告するだけでは腹の虫が治まらないらしいクリスは、一時的に航行不能にしろとは言わないがギリギリの命令を下す。あの国をどんだけ嫌っているのかこの態度を見るだけで分かってしまう。


「どの道、帰還するときに悪戯してやろうと思ってたからちょうどいいか、フフフ」

「うわぁ怒らせたぁ〜あいつらとは言えどもご愁傷様だね」


 そして1人の男を巡った争いが始まろうとしていた・・。


 ーー


 <<とあるサバゲーフィールド>> 


 ピーー!ピー!と、けたたましい笛の音が響き渡る。これは大概ゲーム終了のお知らせだ。


 スタッフ「しゅうりょ〜〜う  ゲーーム終了〜!」


 運営スタッフの大きな声がゲーム終了を告げる。どうやら友軍が速攻で敵フラッグを獲ったようだ。


 洋介「ねえパパ、僕らが前線を崩したから早かったね」

 翔太「そうだね敵の後続が少なかったし仲間の足も早かったよ、それにしても洋介いい動きしてたな」


 敵の前衛を潰した後は苦戦している味方のフォローに入りある程度敵の数を減らすと、自軍のフラッグを守る為に後方に下がり戦場を俯瞰見できる場所でのんびりしていた。


「ははは、最後の同時銃撃が面白かったよ混乱して踊ってたね」

「そうだね混乱してたね、じゃそろそろベースに戻るか喉が渇いたよ」


 敵陣から味方がゾロゾロと歩いてくる。という事は休憩時間なので戦闘フィールドを離れ自席に戻るタイミングだ。


「そだね、あれ?パパ透けてるよ?」

「はい?うぉ!」


 傍に置いてある愛銃を手に取ろうとした時に洋介に指摘され自身の身体をみると”マジ透けてる”と思った瞬間ブラックアウトしてしまうパパ。その様子を洋介はまるでSF映画のワンシーンを見ているかのように茫然と見ていた。


 洋介「うわーマジィ?消えっちったよ戻ってくるかな〜まあ大丈夫かあの豪胆なオヤジだし・・・・」


 そこにはパパのエアガンがポツンと置いてあり、それを眺めて語る息子も最後はケラケラと笑いなんとも豪胆だった・・。


 ーー


 <<少し前・探査船内艦橋>>


「中継シーカーを多数確認」

「奴等は横取りする気満々じゃないか、こうなったら直ぐにでも船に招待して説明するしかないな」


 一方のクリスは”あの国のシーカー”の数が増えこのまま放置すれば横取りされる可能性が高く、作戦を変更して直接船に転送したほうが良いと考え始めていた。しかし本国に投げた判断待ちでギリギリと歯を鳴らし返答の時を待っていた。


 通信士「艦長、本国から入電。”速やかに実行されたし”以上」

 クリス「皆聞け一部作戦変更する」


 本国の許可を確認したクリスは作戦を前倒しにして男が自宅に戻る前にこの船に強制転送してコンタクトを取るつもりだ。しかし”あの国”が追跡してくると考え、転送後は見つからないように惑星の影に逃げ込み潜伏モードを使い安全を確保する作戦を立案すると直ぐに発動した。


 全員「了解」

 クリス「変更は追って伝える先にあの国に奪われた場合は強襲部隊が対応、奪還後は元の作戦に戻る。さあ諸君頑張ろうではないか」

 副官「応!」


 躊躇する余裕のないこの場面でも慌てず的確に指示を出すクリスは中々の切れ者だ。それに乗務員のやる気を起こさせる声掛けにも余念がない。


 クリス「中継用シーカー位置補正!出先シーカーは対象者にマーキングレーザー照射開始!」

 技官「対象者まもなくロック完了」

 Ai「警報!警告!ハッキング警告!」


 作戦が動き出すと同時にそれを狙っているかの如くいきなり邪魔が入る。それも出先のマーカーにではなくコントロールしている船に向けてのハッキングだ。交戦規定に照らし合わせれば電子攻撃に該当するので、もしこれが戦場なら相手に向けて反撃するのが普通だ。


 技官「艦外より強力なハッキング攻撃、それとジャミングを受けています。艦長、出先と中継シーカー共に動作不安定、音声通信遮断」

 クリス「急げ結構やばい状況だ、マーキング出来たか」


 対象者のマーキンさえ完了すれば後は出力を爆上げして強制的に転送すれば問題ない、しかし的を完全に補足しないとそもそも送る事は不可能だ。状況が悪くなりつつあるがクリスは次の一手を思案しているのか、モニターに映る強襲部隊を眺めていた。


「もう少しです・・あぁぁ・・・対象者消滅しました」

「あいつらだやりやがったな!送り先の軌跡をマッピング、転送周波数、使用したシーカー全てを記録しろ、裁判になったときの重要な証拠になるからな」


慌てないクリスは冷静に証拠集めの指示を出す。あとはハッキングとジャミングをクリアすれば奪還作戦を発動する構えだ。


 「艦長、ハッキング防疫完了、カウンタージャミングにより無効化、通信復活」

 「聞こえるか?キース、作戦発動!”やり返せ”対象者はまだ転送室内のはずだ、エンジン失火を確認したらスキャンして座標を送る」

 「こちらキース了解!」


 数分後、この時を待っていたクリスは早口で突入部隊隊長のキースに連絡を入れる。そして探査装置などがフルスペックで使えるようになった今、仕返し作戦が始まろうとしていた。


「船を転進、敵探査船に向け全速前進、完全ステルスモードに移行、転送範囲まで接近後、同速並走して援護する」

「了解」


クリス達の現在位置は月の裏側だ。目標の船も同じく月の裏側だが50万キロほど後方に位置している。要はずっと後をつけて追っていたのだ。

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