『陰キャ野郎は学校トップクラスの美人と恋人を演じる』 っじゃねぇよ! 最悪だよ!
Rafu 『絵師』
第1話 ぷろろーぐぅ
「私と付き合う振りをしてくれませんか?」
彼女の髪の毛は夕焼けに染まり、美しく燃えている。
綺麗な茶色いをしたその瞳は、少しだけ潤っていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
窓から見えるのは、遠くにある山と、沢山の建物。
初夏の香りが頬を撫でる。
今日もいつも通り、平和な日常だ。
二羽高校一年三組。俺は花山 夜。このクラスで陰キャと分類されている生き物だ。
下校のチャイムと同時に、陽キャ共が集まりだす。
「なぁ、花山君。悪いんだけどさぁ、俺これから忙してくさぁ〜、代わりに午後の掃除当番やってくんない?」
髪を茶色く染めたクラスメイト。寺田 達哉が、俺の机の上に座りながら頼んでくる。
「分かったよ」
達哉の事だから、どうせ皆んなと遊ぶのだろう。まぁ、たまたま今日は暇だし、何よりも虐めの対象になりたくないという純粋な気持ちもある。
「じゃあ任せた」
達哉はそう言うと、さっさと教室を出ていく。
ありがとうぐらい言えよカス!
心の中で文句を言った後、俺は寺田の掃除場所である、第三理科室に行く。
第三理科室は、教室棟から離れた場所にあり、授業でも使われることの無い場所だ。
掃除する意味ねぇっての! バカだろ先生達も。
ここ最近、俺は毎日掃除して帰っている。
陽キャ共に頼まれて仕方なく掃除してやっているのだ。
二羽高校の掃除は、午後にあり、クラスを半分に分けてグループをつくる。二つグループが日替わりで掃除する。なのに俺は毎日掃除だよ。そろそろ病むぞ。
第三理科室の扉が見えてきた。
俺は扉に手を触れた瞬間、体が硬直した。
誰かいる!
俺の直感が大音量で危険信号を発している。
つまり、人がいるという事だ。
誰かいるなら掃除はやめておこう。人に会いたくねぇし。
俺は、来た道を戻ろうとして足を止める。
待てよ、人がいるはずないじゃないか! まさか!? 幽霊なのでは!
幽霊は流石に怖いが、好奇心が溢れてくる。
扉に触れる。
よし!
「はあぁぁぁぁ!!」
「キャーーーー!!」
凄まじい速度で扉を開けると、そこに居たのは、花崎 千琴だった。
千琴は、俺に驚いて椅子からひっくり返った。
「だ、大丈夫か!?」
俺が駆け寄って行くと、千琴のスカートがめくれて、その下から純白の生地が顔を出していた。
パンツから目を逸らせようとして、視線を少し上に向ける。千琴と目が合った。合ったと言うよりも、合ってしまったと言う方が適切だろう。
「花山 夜君・・・だったよね。今、何を見たの?」
千琴の綺麗な瞳は、殺気に満ちているが、涙目にもなっていた。
「なんも見てないっす!」
「ふーん」
千琴は、俺から目を離さずに立ち上がると、
「やっぱりピンク色のパンツの方が良いかな?」
は?
俺のキョトンした顔に、千琴はクスクスと笑う。
「私のパンツって大人の魅力ないでしょ?」
千琴は、そう言うと、うつ向けてしまう。
「いや、そんな事はないぞ! 俺は白いパンツもいいと思う!」
俺は、落ち込む千琴を必死に励まそうとする。
ん? 待てよ、自分は今なんて言った?
ゆっくりと千琴の目を見る。
「やっぱりパンツ見たんだね」
笑顔なのに目が笑ってない。
「ごめんなさいぃぃぃぃ! すんみせんでした!」
俺はその場に土下座した。
「えっ! あの、ちょっと」
千琴は、土下座する俺を止めようする。
「何でも言うこと聞くから許してほしい」
俺のその言葉に、千琴は何を思ったのか、動きを止める。
「何でも・・・・・・ほんとに?」
「あっ、いや、金銭関係以外ならな」
俺が立ち上がると、千琴も立ち上がる。
千琴は、何を頼むか悩んでいるようだ。
「・・・・・・・・・・・・」
俺は、千琴の横顔に見とれてしまう。
長い黒髪を、窓から入ってくる風が攫うおうとする。
綺麗な顔立ちだが、その顔はどこか幼さを残していてる。
「どうしましたか? こっちをずーっと見て」
「あっ、その、 髪が綺麗だなぁーって」
「本当ですか!」
なんで嬉しそう何だよコイツ。
「てか、どんなお願いを叶えろって言うだよ?」
「そうですね・・・・・・・」
そこまで言うと、千琴は背筋をスっと伸ばし、俺の真正面に来る。
えっと、何このドキドキする感じの雰囲気は。
俺のソワソワした気持ち気付かずに、千琴の薄い唇がそっと動き始める。
「私と付き合う振りをしてくれませんか?」
彼女の髪の毛は夕焼けに染まり、美しく燃えている。
綺麗な茶色い瞳は、少しだけ潤っていた。
何で不安そうな顔すんだよ、断りずれぇよ。
こうして、クラスの陰キャと学校一の美女による、不思議で騒がしい青春が始まった。
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