第2章 不思議な旅 第13話 宇宙 

宇宙 それは最後のフロンティア。

これは、人類が、未知の世界を探索たんさくして、新しい生命と文明を求め、

人類未踏じんるいみとうの宇宙に果敢かかんに航海する時代の前、正式なファーストコンタクトも

未だ行っていない頃の話。


米宇宙軍が発足して地球製のいわゆるUFOをチラチラとお披露目ひろめしだした頃、

人類は宇宙開拓に躍起やっきになっていた。


「我々はどこから来たのか。 我々は何者か。 我々はどこに行くのか。」

その答えを、宇宙に求める動きは加速を増し、限られた志願者の移住計画の

兆しが見て取れた。


その技術はどこからもたらされていたのか、軍事的な競争と相まって、

船出も近かったろう。


その動機は神話に基づく思想も一因にあったのかもしれない。


まさかその頃の人生で、スクリーンの中だけと思い込んでいた話が現実化し、

宇宙時代を体験することがあるなどとは思ってもいなかった。


しかし、人間の思いはいつか実現する。

私達の想いは一瞬で宇宙の果てやミクロ以下の世界まで飛び、

最古の時代や未来の暮らしを描く。


ただその時代において、誰かのイメージが勝ち進み、賛同さんどうを得て膨らみ

一般通念となるまでに長い年月を経て熟成を迎えただけだったのだろう。



もうひとつ、その頃人類を驚かしたイメージがあった。


陰謀論として取扱われてきた権力者共同謀議けんりょくしゃきょうどうぼうぎは、結果が

誰の目から見ても明らかとなるまで、何が起こっているのか

分からないほど普段の暮らしからはかけ離れたイメージだった。



物質文明を牽引してきたイメージの持主達、とりわけ扇動者達せんどうしゃたちの病的な夢は

膨らみの頂点をむかはじけてとんだ。


「分け合えば余る。 うばい合えば足りぬ。」


その単純な道理さえも胸にとどまらないほど、利己的りこてきな思いだけを追いかける者の

夢はことごとく、弾け飛び、こわれて消えた。


人は何故生きているのか。

この世界はどうしてできたのか。


その答えを宇宙に求めず、心に求める者達もいる。


その広がりは決して外界に劣らない。


目に映る事物じぶつや、現象を追いかけ答えを求める者は、

まさか自分達自身の中にその事象の原因を起こすものを

持ち合わせているなど、思いもしなかったのだろうか。


「初めに言葉あり。 万物これによって成る」


思いが言葉になり、言葉が行動を起こし、その結果が事象じしょうとなる。


その事象が目に見えようと見えまいと、全ては自らがひき起こし

全ては思いどおりだという事に、災厄を経て人類は自覚を深めていった。


人は、肉体の内に在るか無いかにかかわらず、意識体としての存在だということも。


夜空に浮かぶ星々の一つ一つが、自分達自身に相応し、地上における天変地異も

自分達自身の因果いんがであり、地震は自身を省みることで如何様にもなると。


物の科学でも、この頃には別次元的べつじげん現象げんしょう把握はあくし、

その原因となる思いの波動としての振動しんどう周波数しゅうはすうとらえていたことだろう。


思いの範囲はんいは個人差があるだろうが、先人や他者が創り上げた

イメージの世界に育ち、創られたシステムの中の住人達のそれは、

日々の暮らしに追われてせいぜい生活圏内せいかつけんないだけにおとなしく納まり、

時代を扇動せんどうする者達の世界観せかいかんを当然のごとく受け入れる。


民衆がさくとらわれた羊に例えられる所以ゆえんだろう。

次の時代を迎える前、この頃の民衆にも多分にその傾向けいこうが見られた。

羊はショックにあうと、先頭の者を追いかけて群衆の動きに同調し、

誘導ゆうどうしやすい。


この時代、自分達が実験体なのだという自覚も無く、ある者は恐怖におびえ、

ある者は正しい行いだと信じ、列を成しおとなしくみつになりながらさくへと

誘導される群衆が散見さんけんされた。


犠牲者ぎせいしゃが出て初めて群衆ぐんしゅうは気付きを、その上に次の時代は築かれた。


民衆の行く先の流れは二線にせんに分かれていたが、初期の頃はやむを得ない

犠牲のルートの方にむらがりが多かった。


命が軽んじられた時代ではあったが、自分達自身が何を求め、何を信じ、何を疑って

真実のルートに辿たどり着けるかが問われた時だった。


最後さいご審判しんぱん」の頃、そうだった。


「求めよ、さらば与えられん」


それぞれが求めた結果が与えられ始めた、因果応報いんがおうほうである。


緊急事態宣言下きんきゅうじたいせんげんかでしか許可きょかされない、バーゲンセールの列に並ばれた方々は、

治験中ちけんちゅうにもかかわらず、人類初の遺伝子組いでんしくみえにも係らず、免疫不全めんえきふぜんおちいるにも係らず

求めた物は与えられただろう。


食塩水やビタミン剤という例外もあっただろうが、その方々は因果いんがの元、

思いの強さで引き寄せた他の結果を与えられたのかもしれない。


ただ扇動者達のたくらみがほころび始め、それが満天下まんてんかにさらされ出すと、

民衆は思いの竹をふるわし始め、次の時代の世界観せかいかんつくりはじめた。


はじめに、「ことたま」あり。その国は言霊のさちわう国であり、

全てがこれで仕組しぐまれた世界だと気付き始めた人達は、

心の構造こうぞうを解き明かす「言靈学ことたまがく」に夢中となり、

思いの竹をよせ合い、「心の宇宙」へ答えを求めて、探索に踏み出し始めた。




その頃の犠牲者ぎせいしゃに申しあげたい、「君 死に急ぎたもうことなかれ」、

そして「長寿ちゅうじゅ と 繁栄はんえいを」。

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