第1章 出立  第4話 虚像にけりをつけろ

「真実」、誰もが求めてやまないものが、人類の歴史の中でああも受け入れがたい

瞬間があっただろうか。


夜明け前が一番暗いものと言うが、世の人が皆同時に心を暗くした瞬間ほど重苦しい空気を感じたことはない。


戦争と薬剤で人類の生命を握っていた首謀者は、一番の詐欺師だった。


彼らの世界の住人となってしまっていた、皆が信じ、憧れ、尊敬されるべき存在が、それと全く逆の顔を表したのは、その世界が終わりを告げ始めたからだ。


「機密解除」、真実は希望を抱かせる一方で、人それぞれの驚きと絶望をも与えた。


憧れはその人の信念でもあろう。

その存在に裏切られた時、混乱と悲しみの中で、虚像にけりをつけて、自分こそが

その信念のもと、憧れの本物とならなければならない。


その決心に至った時から心は癒しを得ていくのだろう。


悲しみのその裏で、「真実」の放った光が人々に希望を持たせたからこそ、誇らしげに新しく輝かしい世界を築く機運が沸き起こったのだろう。


あの凄まじいほどの人間の感情の昇華を同時代に生きた人々と共感できたことは

光栄の至りだった。

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