花街妖姫カタログ

帝国妖異対策局

HMC-001 - 手引き

 HMC-001に指定される妖姫については極秘扱いとなっております。そのため本稿では花街の妖姫情報をお楽しみいただくための手引きについてご案内させていただきます。


●花街について

 花街は人と妖が愛を睦ぐ場として古くから存在していました。室町時代にはすでに商業行為としての活動が始まっており、江戸時代初期ごろに、現在の「花街」が設立されました。風俗の中でも特殊な分野を扱っているため、なかなか歴史の正史に登場することがないため、昔から花街には毀誉褒貶が常につきまとっています。


 その最たる例が、花街が人間の女性に強制的に魔薬を与えて半妖化しているという俗説です。これは花街の理念および誕生することとなった歴史的経緯を否定するまったくのデタラメでしかありません。


 花街はもともと弱者たる女性を保護するための共同体としてスタートしました。現代では想像することもできないほど、古い時代において女性の立場は非常に弱いものでした。怪我や病、夫と死別、子どもが産めない、あるいは妖と関係を持ってしまったものなど、何かのきっかけで簡単に身を持ち崩してしまう女性は大変多かったのです。


 そうした若い女性が行き着く先が売春でした。若くない女性は生きていくことさえ難しかったことでしょう。しかし、売春に対する偏見は当時であっても現在とほとんど変わりません。そうした状況に心を痛めた真言立川流の僧である風空が、彼女たちが安心して暮らしていける場として華慈寺を解放したことが花街の原点です。


 現在のように妖との睦ごとを扱うようになったのは、性病に冒され余命いくばくもない花街の姫が妖との契りを交わすことで命を長らえたことがきっかけです。そうした経緯もあって、長い花街の歴史の中では女性を半妖化することがしばしば行われていたことは事実です。

 

 しかし、そのいずれの場合も、不治の病を得るなどした女性が自ら望んだ場合にのみ行われてきたものです。女性の意志に反して半妖化することは花街の根本となる理念に反するものです。もちろん現代では半妖化自体行われていません。


 妖という表には出にくい恋愛対象を扱っているだけで、花街はいつの時代もその当時の法を尊重してまいりました。長年に渡る経験と実績によって、お客様におかれましては、安心して妖との恋愛をお楽しみいただく万全な環境が整えられております。


 それでは花街へようこそ。この世ならざる妖姫と極上のひとときをお楽しみください。


※■■■大使館襲撃事件につきまして

 平成20年に発生した■■■大使館テロ襲撃事件では、同大使館の地下で不法に営業されていた花街の妖が暴走したことによって引き起こされたという誤った報道がなされております。花街が■■■大使館にて営業を行った事実はございません。


● 記事の基本構成

 紹介記事は、妖姫の種族についてのご案内(種族情報)とエピソードに分かれています。エピソードでは妖姫と人との恋物語を紹介させていただいております。


● 種族情報

【登録番号】

 妖姫の種族IDです。サービスご利用の際にIDをお知らせいただけると妖姫のご紹介がスムーズになります。


【妖姫通称】

 妖姫の一般的な通称をご案内しています。


【親和性】

 妖姫には、人間にとって無害なものばかりではなく、なかには危険な種族も存在しております。種族ごとにどれくらいの注意が必要になるかを判断するための目安としてご利用ください。レベルについての詳細は補遺1をご参照ください。


【外観】

 妖姫の種族に関する一般的な外観をご案内させていただいております。 

 

【説明】

 妖姫の種族に関する詳細情報となります。


【エピソード】

 人と妖姫の恋物語を、伝説や伝承等で広く知られているものや、花街および関連サービス企業において実際にあった事例から、読みやすい物語形式で紹介させていただいております。


補遺1:親和性 

 人間との生物学・心霊学的な相性を段階的に示す値です。


■ レベル0

 このレベルの妖異は遭遇すること自体が危険な存在です。基本的に人間という存在自体を純粋に憎悪若しくは捕食・駆逐の対象と見ています。どのような手段を講じた年ても制御することはできませんし、遭遇した場合は逃げることさえ不可能です。このレベルの妖異については、自殺を希望されるお客様が、花街の提示する条件をクリアした場合においてのみ紹介させていただきます。


■ レベル1

 危険な妖異です。人間という存在自体を純粋に憎悪若しくは捕食・駆逐の対象と見ています。花街管轄以外で遭遇した場合は死を覚悟する必要があります。対象に知性があり対話が可能な場合、もしかすると生存のチャンスがあるかもしれません。若しくは強力な護符や武力等がこちらにあれば、ある程度の制御ができる可能性があります。花街では、直に生死を掛けたギリギリの恋愛を堪能したいというお客様が、花街の提示する条件をクリアした場合においてのみ紹介させていただきます。


■ レベル2

 一般的には危険な妖異となります。花街管轄下以外で遭遇した場合は、ただちに逃げることをお勧めします。対象に知性がある場合は接し方によっては親密度を高めることができる可能性があります。花街で紹介する娼妓については、このレベルの妖異であっても安心して恋愛をお楽しみいただくことが出来ます。


■ レベル3

 このレベルの妖異は、その多くが人間社会の中に紛れ込んで暮らしています。そうでない場合でも、人間に対して敵対的になることは殆どありません。見た目や身体的な機能が人間と異なるだけで、感情面においては普通の異性と同じように考えていただいて構いません。


■ レベル4

 人間に対して非常に好意的な妖異です。花街で一番多く所属する種族のサキュバスがこのレベルになります。妖異と初めて愛を交わすお客様には、このレベルの妖異をお勧め致します。


■ レベル5

 人間を守護する存在です。これを神として信仰の対象とする人々がいるような場合もあります。このレベルの妖異は初心者のお客様にはオススメいたしません。不用意に交流してしまうことで、心が浄化され煩悩が消え去り、時折悟りを開かれるお客様もいらっしゃいます。その結果、花街を敵対視するようになられるお客様もございます。もし当方に対し不適切な行動に走られるような場合には相応の対応をとらせていただきます。


■ レベル特種

 本分類では区分しきれないような場合には特種としてご案内させていただきます。

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