隣の席の無口クール美少女の心の声が、俺にだけ聴こえるラブコメ
山外大河
1 雪宮雫という滅茶苦茶可愛いクラスメイトと超能力者の俺について
超能力者は実在するかというありふれたオカルト話に対する俺の持論は、超能力者は存在するといったちょっと口に出しにくい者となる。
というか単刀直入に言うと俺、榊当麻が超能力者である。
読心。
心を読む力だ。
息を止めている間だけ半径2メートル以内の人間の心を読むことができる。
ただし条件に合った人間のみ対象。
……この超能力が俺の人生で役に立った瞬間は今のところ皆無である。
その理由はいくつかあるが、まずひとつ。
人の心を読むとかモラルが無さすぎて躊躇するし、それ故に使いたいと思うタイミングがほぼ訪れないからだ。
逆の立場だったら嫌だろうって思うし。
こちらで能力のオンオフが出来るなら基本は使いたくはない。
そしてもう一つの理由……それはそもそも使いたくても使い物にならないという事だ。
この超能力は俺と同じ血液型の奴にしか使えない。
そして俺の血液型はAB型のRHマイナスという、結構珍しい血液型で。
つまり半径2メートル以内のAB型でRHマイナスの奴の心を読むことができるという、とんでもなく使いにくすぎる力という事になる。
……うん、無駄すぎる。
こんな力、無いのと変わらない。
「超能力者はいると思うかってなに、お前高三にもなって中二病でも発症したのか? ねえよ無い無い」
だから何か変な記事でも読んだのか、真剣に話しかけてきた友人の田中に俺はそう答える。
事実とは異なるけども、そういうスタンスを取るんだ。
誇れる力でもないし、証明も出来ないし、超能力者が言うのもなんだけど、やはりこの年で超能力は存在するとか恥ずかしくて言ってられないんだ。
「いや、俺はあると思うぜ。昨日ネットで見た記事でさ--」
そう言って一人でテンションを上げている田中を見て少し心配になる。
俺達はもう受験生だ。
互いに所属していた弱小野球部は無事地方大会一回戦で敗退して、推薦なんて狙える筈の無い俺達は真面目に受験勉強に望まないといけない。
それを超能力があるか無いかで盛り上がるとか……もうちょっと勉強しろよと思う。
大学でも野球しようって言ってるんだからさ。浪人したら殺すぞマジで。
……ほんと、落ち着いて欲しい。
ほら、ちょっとは休み時間利用して勉強してる雪宮さんを見習え。
そう考えながら、教室の端へと視線を向ける。
雪宮雫。
口数が少なく表情の変化も少ないから、いまいち何を考えているのか分からない、ミステリアスクール系美少女。
そう、美少女。
すっっっっっっっっっげえ可愛い!
いやね、もうなんというか……可愛すぎる!
俺は一年の頃からずっと片想い中ですよ!
……まあ向こうは俺の事とか全く眼中に無いんだろうけど……ほんと数回程度しか話した事ないし。
うん、数回程度しか話す機会が無いまま、高三の夏だよ?
残念ながらもう三年の夏だよ!?
……仲良くなりてぇ。
受験勉強しなきゃだけど、夏祭りとか一緒に行きてえ!
というか受験勉強一緒にやりてえ!
でもほんと、何きっかけに話しかけて良いのかが分からん!
そもそも話しかけて嫌われてたらどうしようとか考えちゃうし……ああクソ! なんか切っ掛けとかねえのかよ!
夏休みまでに何か……。
と、田中の話に適当に相槌を打ちながら、バレない程度に雪宮さんに意識を向けていた時だった。
「あ、雪宮さんって血液型なんだっけ?」
雪宮さんの近くにいた女子が雪宮さんに話しかけた。
勉強中だから話しかけてやんな!
……いや、でも雪宮さんがクラスの奴と喋ってる所見ると安心する。
なんか孤立してなくて良かったって思うし……うん、もっと軽率に話しかけろ!
俺には出来ねえから頼むぞ女子!
でも男子は行くな! お前らが行くなら俺が行く!
て、俺が心中で叫んでいる最中、向こうは血液型の話を始めた。
「……血液型?」
「そうそう。今血液型占いやってて」
なんかそんなベタな占いやってる奴初めて見た。
そういえば俺雪宮さんの血液型すら知らねえなあ……ほんと、この時期にまで来て距離が遠すぎる……!
「それで雪宮さんは?」
「……AB型」
ほーAB型なんだ。
同じじゃん、厳密には違うだろうけど。
「……RHマイナス」
あぁるえっちまいなすぅぅぅぅぅ!?
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