2クズ

 赤く焼け爛れた火傷の痕、白い透明な肌に不釣り合いな醜い体。


 火傷のヒリヒリする痛みや服を着替える度に思い出してしまう。


『私の体は醜い』


 私はもう、諦めてしまっている。このどうしようもない世界を。


『理不尽』


 その言葉を言葉にしてしまうと、全てを諦めてしまうみたいで嫌いだ。


『死んでしまった方が楽だろうか?』


 あどけなく笑う人が嫌いだ。幸せな人を見ると、その幸せを壊したくなる。


 私は笑い方を忘れてしまった。感情のない空っぽの心で高い空を眺める。


 お金も地位や名誉も、私はいらない。


 しかし両親はお金が好きだし、権力を欲しがる人間であり、目立ちたがり屋だ。


 聖痕やけどを両親に刻まれて、6ヶ月が経過した。


「そろそろ頃合いだ」


「ええ、あなた」


「これで晴れて、俺達は貴族になれる」


「あのには頑張ってもらわないと」


「まったく聖女様々だ」


 そこには自分達の幸福のために、娘を売るがいた。

 

 両親は聖痕が浮かび上がった少女がいると、町に噂を流す。


 それから数日が過ぎた。聖女の噂を聞きつけた人が、一人、また一人と、私の住む家を取り囲んで人だかりができる。


 私は不快感とともに怖かった。私は珍しい動物か何かなのだろうか?


 突然見知らぬ老婆が、玄関から家に入ってきた。老婆は私を見つけると、お供え物?を私の目の前に置いた。


 そして老婆は手を合わせて祈りを捧げる。


『気持ち悪い』


 私は、この状況が気持ち悪くて、今すぐ逃げ出したかった。


 しかし周りの人間に接するときは、聖女らしい振る舞いをするように両親から言われている。


『なぜ私が?』


 宗教とは、こんなに気持ちの悪いものだったのか。


「ご丁寧な品を頂き恐れ入ります。貴女の願いは、今後も善行を繰り返せば、きっと叶うでしょう」


「おお、聖女様。ありがたきお言葉」


 老婆は涙を流して喜んだ。


 そこへ両親が役人を連れて現れた。役人は老婆や家を取り囲む人間達を見て剣を抜いた。


「貴様ら邪魔だ、退かねば斬るぞ」


 家を取り囲んだ野次馬は、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「聖女がいる家は、ここか?」


「はい、そうです。数日前、私の娘の体に聖痕が浮かび上がりました」


 役人は、家に土足で上がると、値踏みするように私を見る。


 そして「服を脱げ」役人は、こう告げた。


 今さら裸を見られるくらいのことは、どうってことない。


 私が服を脱ぐのは嫌だと言っても、どうせ無理やり脱がされるんでしょ。


 私は、躊躇なく簡素な服を脱ぎ、上半身裸になってみせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る