三年目

108話 明け

 うち達、小学生の夏休みは終わり本日から二学期に入った。カラッとした微かな暑さが残っている。


 ぼおっとしながらバスに乗って学校に向かう。ずっと休みで朝起きる時間も学校に通って居る時よりも遅かった。その習慣が未だに抜けていないのか千秋と千夏がウトウトしながらバスに揺られている。



「うごー、我、まだ……布団を……」

「秋姉、学校に着くっス」



 眼がほぼ閉じている、眠そうな瞼をこすりながら千秋は学校に歩いて行く。その後に千冬が千夏を抱えて歩いて行く。


 教室に入ると既に生徒達が居た。皆、机の上には先生に提出をする宿題をずらりと置いている。


「おはよー、千春」

「桜さん、おはよ」



 久しぶりに北野桜さんにあった気がする。


「宿題やったか?」

「勿論」

「自由研究どうした?」

「お兄さんと一緒にトマト育てて食べた奴を纏めたよ。千秋はカレーの食べ比べで、千夏はパンケーキの食べ比べ、千冬は3Rについてまとめてた」

「末っ子だけ凄い真面目な研究してきてるのな」



 自由研究、千冬だけ凄いこってたから。徹夜でお兄さんと一緒に色々と書いていたのをうちは知っている。


「そう言えば修学旅行あるけど、千春は班どうする?」

「妹達と一緒かな。側にいないと心配だし、千秋は家から離れると泣いちゃうから側に居てあげないといけないし」

「あー。なるほど。前もそんな事あったなぁ」


 千秋以前も旅行で泣いちゃったことあるしなぁ。うちが側に居てあげないといけない。


「でも、ダイジョブじゃないか?」

「なんで?」

「だって、千秋、女の子と友達沢山居るし、それになんか前より成長している感じするじゃん」


 確かに千秋は成長している。魔法使いごっことか言って布団にダイブをしたり、オムライスに五芒星のマークを描いたり子供っぽい所はあるけど前より純分に成長をしたと思う。


 成熟したとも言えるかもしれない。子供っぽい……というより敢えて子供みたいに振る舞っているような気さえする。以前から、敢えて振る舞うというのはあったとは思うけど、最近はもっと大人っぽい。


「もう中学生だぞ。そろそろ妹離れした方が良いんじゃないか」

「……そうかもね」

「まぁ、班は部屋割りも兼ねてるし絶対女子同士になるから、結局同じになる可能性もあるけどなぁ」

「今年は……敢えて離れるのも一つの手なのかな」

「無理にとは思わない。でも、最近弟を見てて思うんだ。そろそろ姉である俺が見守るというか、時には離れる時があった方が良いかもなぁってさ」

「確かに、それはうちも思ってるよ。最近特にさ」



 桜さんが言っていることは正しい。うちが離れて見守るというより、うちが離れないといけない。うちは妹に依存をしているような状態なのだから。



「でも、急には難しいよなぁ。俺も姉として、弟から急に離れろって言われも無理だし、だって弟可愛いからさぁ」

「うちの妹は天使の生まれ変わりだからね。可愛すぎてヤバいから、急に離れると禁断症状が出ちゃうよ」

「だよなぁ。分かる分かる。代わりに何かやってみるというのはどうだ? 尽くす先を変えるとか。一緒にするんでる魁人さんとか」

「……お兄さんねぇ。考えた事は何度もある」

「おー、俺は女だから分からんけど、男はメイドが好きらしい」

「メイドって、あのフリフリの服を着てる人達?」

「そうそう、ご主人様って言って尽くす奴」

「うちに似合うと思う? あんまり表情変えるの好きじゃないし、そう言う服似合わないでしょ」

「意外と似合うと思うぜ? あー、でもそんな服、普通ないよな」

「……まぁ、あるけど」

「え? あるの?」

「宮本さんって言う、お兄さんの先輩が沢山服をくれたの。その中にメイド服が入っていた」

「着てみたら?」

「妹に見られたら一生の恥だし……」

「メイド服着てオムライス作ってやれば?」

「うち、卵料理はゆで卵くらいしか作れない。最近、ちょっと上達してるけど、大体破裂させてる」

「……つまり、練習をするいい機会じゃん。やってみろよ。メイド服、あとで写真見せてくれよ、俺と千春は姉同士じゃん?」

「……そうだけど」



 そうだけど、メイド服は流石に……いや、うーん、無理というか。恥ずかしいというか……千秋に見られたら一週間笑われるし。


 千夏に見られたら二週間、チクチク言われるし……



 えー、どうしよ……












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