27話 去り際の戯れ
エアリアは剣を炎の魔術で赤熱化させると、マリーベートへと斬りかかった。
勢いよく振り下ろされた剣を障壁で受け止めるとマリーベートは不敵に微笑む。
「あら、今まで転がっていたのに随分威勢がいいわね」
「もう貴様の挑発には乗らん、ここで倒す!」
そう言って、剣に魔力を込めると魔方陣が剣身に浮かび上がり炎を吹き出す。そのまま刃を包み込み、炎剣と化した自身の得物でエアリアは障壁を焼き斬る。
「思ったよりは、やるわねっ!」
マリーベートも身を翻すと、幾筋もの熱線を浴びせかける。だが、瑪瑙色のねじくれた杖から放たれた熱線はエアリアの炎剣によって全て受け止められ、逆に吸収されていく。
「私に対して炎の魔術では、貴様も分が悪いんじゃないか?」
ニヤリと笑い、マリーベートを逆に挑発し火力を増した炎剣を突き出す。
それを、今度は水の魔力を纏った障壁で受け止めるとマリーベートは一旦距離をとった。
「あなたを甘く見ていたわ、少し真面目にやる必要があるみたいね」
そう言って大きな三角帽を被り直すと、瑪瑙色のねじくれた杖に魔力を込める。
大きな水の柱が渦を巻き、エアリアを取り囲む。
だが、そのときマリーベートが不意に水の柱を自ら打ち消すと、背後に空間転移魔術の門を作り出す。
「悪いけど、別件で用事ができたからここで失礼させてもらうわ」
「マリーベートッ……」
咄嗟にリオンは声をかけたが二の句が継げない。
そんな彼の様子にマリーベートは静かに微笑む。
「あら、そんなに寂しい顔をしないでぇ」
そう言って、人差し指の先に魔力を込めると倒れ伏している実験体に向け放つ。
「穴埋めにそれと遊んでいてねぇ、それじゃあ」
一度だけ手を降ると彼女は門の中へ消えていった。
「お、おい……リオン……」
エアリアが唖然としたように呟いた。
リオンも彼女の視線の先へ目を向け驚愕した。
「なっ……嘘だろ……」
なんと、確かに倒したはずの実験体がゆっくりと起き上がっているのだ。所々に空いた雷の魔術による穴も塞がっている。この分だと体組織も元通りだろう。
マリーベートの言っていた穴埋めとはこのことだったのだ。
「チッ、あいつ……」
リオンは舌打ちをすると、杖を実験体に向け構える。
マリーベートがいなくなったことで彼女への殺意の声がしなくなり随分と体も楽になっていた。
「いけるか?リオン」
尋ねながら、炎剣にさらに魔力を注ぎ込むエアリア。赤々と燃え盛っていた炎剣は、その炎を徐々に小さくしていき刀身の中に収まった。
だが、赤熱化させていた今までとは違い、その刀身は青白く輝き、刃の周囲は陽炎で揺らめいて見えていた。
「大丈夫です。もう一度、奴の内部組織を破壊します」
リオンが構えた魔道杖に魔力を込めると同時に、いつの間にか雨がやんでいた空から光が差し込んだ。
その瞬間、二人は走り出した。
エアリアは、青白く発行する炎剣で実験体へ上段から袈裟懸けに斬りかかり、リオンは杖から雷球を出現させ実験体の頭上へと降り注がせる。
実験体はその場から動かずエアリアにその体を斬り裂かれ、剥き出しになった体組織へと降り注ぐ雷球を浴びそのまま崩れ落ちた。
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