13話 旅の始まり

「この貨物機動車カーゴバイクで移動することになった、荷物は全て積んであるからすぐに出発できる」

出現させた“貨物機動車カーゴバイク”と呼ばれた四輪の金属馬車はリオンが王都ガランへと向かう際に乗った物より幾分小さく、あちこちに傷もあったが堅牢で頑丈そうな作りをしていて、長旅でも問題なくこなせそうな迫力が感じられた。

貨物機動車カーゴバイク”にリオンが乗り込むのを確認すると、エアリアは前方の席に乗り込み、カギを小さな穴へと差し込み回した。


――ガゥオン!!


その瞬間、体に響く様な低音が“貨物機動車カーゴバイク”から鳴り響いたかと思うと、エアリアが脇の棒を巧みに操りながら発進させた。



荒れ地を疾走する“貨物機動車カーゴバイク”に揺られながらリオンはエアリアに話しかける。

「便利な乗り物ですね。 この貨物機動車カーゴバイクというのは」

「ああ、これがあるお陰で騎士団も随分と助けられているよ」

エアリアは、前を見たまま答える。

「だが、こういった発明もここ数十年で一気に発展したもので王都近辺以外は、まだ昔とほとんど変わらないんだ」

エアリアの説明は、リオンには意外だった。

千年前の国は王都に近いほど発展が遅かったが、現代は逆転しているようだった。



「それだと、敵が近づいてきたときの連絡に不都合があるんじゃないですか?」

そう、リオンたちがいた時代では僻地を先んじて開発する事で魔王軍の襲撃時の連絡をいち早く伝えることができるようにしていたのだが、

「大丈夫、今はこれがある」

そう言って、エアリアは胸ポケットから小さな板状の何かを取り出しリオンへと渡す。

「それは魔道通信機シェアガジェットと言ってな、遠く離れた場所でも通信ができる魔道具なんだ」



リオンは手の中の“魔道通信機シェアガジェット”をしげしげと見つめる。

小さな金属の板の表面に薄いガラスが貼ってあり、そこには不可思議な映像が映りせわしなく動いていた。

あまり触って壊してもまずいと思い、早々にエアリアへと返し呟く。

「こんな小さな物で連絡が取り合えるなんて不思議ですね」

「確かにな、魔道鋼エナメタルの発明がなければここまでの発展はなかったろうな」

魔道鋼エナメタル?」

聞いたことのない名前に、リオンは首を傾げる。

「八~九十年くらい前の魔道工学者が開発した特殊な金属のことだ。精錬の段階に微粒子レベルで魔力を練りこむことで魔力伝達の超効率化が可能になる、らしいが魔道工学は門外漢でね」

エアリアが苦笑しながら説明をしてくれたが、リオンにはなんだか凄い金属なんだな、と思うのが精一杯だった。

「じゃあ、この貨物起動車カーゴバイクにも?」

「それだけじゃない、市場に出回っている魔道具のほとんどに使われているよ。学者たちの予想ではあと数年で都市部以外にも魔道鋼エナメタルが十分行き渡り、開発されて行くそうだ」

「そっか……なら、そのためにも頑張って平和な世にしないとですね」



リオンの言葉に、エアリアが強く頷く。

「ああ、王女殿下が決死の想いで送り出してくださったんだ。絶対にこの任は果たさねばな」

「そういえば、これからどこへ向かうんですか? 魔王と戦うと言っても情報がほとんどありませんよ?」

リオンは流れゆく荒れ地を眺めながらエアリアに聞く。

いくらリオンが魔王を倒す旅をしていた、と言ってもそれは千年前の話。今は知らない国や知らない技術が存在しているのだ。もはや異世界にいると言っても過言ではない、ならばそれなりの情報がリオンには欲しかった。

エアリアもその辺はちゃんと理解しており、彼女が告げた目指すべき場所、それは


「私たちは、クウド商業連合国へ向かう」

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