第12話 やっと会えたな悪鬼の親玉さんよ

 ――バベル最上階、神域玉座


「ば、馬鹿な! 馬鹿なッ! 馬鹿なッ! 馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 立ち上がり裏返った声を張り上げるピエロの青年――絶望王。その顔からは粒のような汗が滝のように流れ出し、そして表情には濃厚な恐怖がまるで汚点のように張り付いていた。


「あれの一匹一匹がボクチンと同格? 嘘だ! そんなの絶対にあり得ないにゃ!」


 部屋中の重鎮たちの誰もが口を一言も開かず、指一つ動かさず、カッと見開いたまなこで悪魔たちでも悲鳴を上げるような残虐極まりない光景を凝視していた。


「陛下、リリスを捨てて帝都を離れましょうっ!! あれらには勝てません!」


 普段憎たらしいほど冷静な側近のメイド眼鏡の女の悲鳴のような提言に、


「わ、わかってるにゃ。ボクだってあんな化物とドンパチやるなんて冗談じゃ――」


 絶望王は玉座から勢いよく立ち上がるが、


「なにこれ?」


 己の右手の手首から先がサラサラと風化しているのを目にし、そんな惚けた声を上げる。

 そして次の瞬間――


「ぎゃあああああぁぁぁぁぁッーーーーーッ!!」


 ピエロの姿の青年は既に失った右手首を抱えてつんざくような絶叫を上げる。


「よう、やっと会えたな、悪鬼の親玉さんよぉ」


 玉座の間の扉の前には、狐面の男が紅の剣を片手に佇んでいたんだ。

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