第15話 貸し一つである ???

――堺蔵さかえぐら町高級住宅街


 薄暗い室内でキーボードを凄まじい速度で操作している赤毛の少女は、ようやく手を止めると、すっかり冷めてしまった珈琲をすする。

 画面の右上の隅には、黒髪の青年が少年からホッピーの仮面を渡されそれを被る映像が映し出されていた。

 そして画面の中心には、リターンキーのマークがポツンと表示されている。


「うひっ! うひひっ! 行くぜ! 行くんだぜぇ!」


 人気ゲーム【フォーゼ】の熱血主人公のきめ台詞を口にしながら、キーボードのリターンキーを押すと、画面に凄まじい数の文字やら数字が映し出される。

 

「ひひっ! こ、これでホッピーの記録は全てドボン! ドボンッ! ドボオォォン!!」


 途中からそのフレーズに琴線が触れたのか数回繰り返していたが、再度黙り込みモニターの前の椅子の上に便所座りをすると画面を凝視する。


「ホッピー、これで貸し一つである」


 今度は同ゲームの主人公のライバルのリアル顔の真似をして人差し指を突き立てる。

 この瞬間、全世界からホッピーに関する一切の情報は消失した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る