闇の中から【10】

 本当は全力で走りたかったが、渓谷を渡る際、異常な運動神経を見せてしまったが故に自重してしまった。

 ルマーナの元へ辿り着くまでの時間が予想以上に大きくなってしまい、少し後悔した。

 だが間に合った。ルマーナを助ける事が出来た。

 タボライは残念だったが、現実的に間に合わなかった事と、遠くから確認した際のクズっぷりが罪悪感を無い物としてくれた。


「大丈夫か?」

 六瀬はルマーナに声をかけた。

 これからの指示を皆が注視して聞こうとしているにもかかわらず、ルマーナだけは心ここにあらずといった雰囲気だったからだ。

 少し様子がおかしい。

 勇猛果敢に飛び出し、自分の命と引き換えにしてでもティニャ達を救おうとしたルマーナはかっこいいと思った。

 六瀬的には、勇ましいイイ女として評価している。

 死を覚悟していたのに不意に助けられてしまい、無意味に驚いているのだろう。

 まぁ無理はないと六瀬は思う。


 ルマーナを助けたのはこれで二度目。

 これからの生活で、なかなか手に入らない物や情報を得るには必要な人物だ。バイドンに加えて有益な人物と関係を結べたなら、命の一つや二つ救っても釣りがくる様に思える。それ以上に得た物が既にあるので、今回の事もそれでチャラだ。

「おい。ルマーナしっかりしろ」

 もう一度声をかけると「ふぅぇ?」と変な声を出して返事をした。そして「だ、だ、大丈夫。助けてくれてありがと」といつもの感じに戻った。


 なんて、意味の無いやりとりに時間を使っていられない。

 六瀬はルマーナに向かってコクリと頷いてから話を進めた。

「あと二分もすれば奴が動き始める。はっきり言うが、ここにいる全員がこの場にいても足手まといにしかならない。俺の予備を渡すから二人だけついてきてくれ。他は退避だ。邪魔にならない場所まで下がってくれ」

「りょ、了解でさ」

 と、レッチョが代表して返事をした。

「こっちの小型艇だが、到着まであと数分かかる。指示通りにしてればそろそろ到着する頃合いなんだが……まぁここまで弾を使うと思っていなかったからな。結果としてはオーライだ」

「指示とは?」

 と、今度はキエルドが口を開く。


 渓谷を渡る前にメンノ達へ指示した内容。その一つが守られていなかった。誰の判断かわからないが、しかし、その判断は結果として有利に働いている。

 単独で来てくれと頼んだ小型艇は今、メンノとダニルを乗せて向かって来ている。

 一分二分だったとしても、彼らを回収していた時間は大きな時間ロスだ。しかし、現状、自分しか弾を持っていない事になる。牽制するには弾が必要なのだ。間に合うのならば言う事はない。

 本当は、ここへ向かっている途中で弾数の深刻さに気づいていた。マイクで指示変更しようとしたが、その前に誰かが的確な判断を下した。勘の効く、いや、状況を素早く予測出来た良い判断だったと評価したい。


「こっちの話だ。気にしないでくれ。ともかく、重要なのはティニャ達への攻撃を阻止すること。弾が少ないんだ、こちらへの攻撃は出来る限り避けるだけにしてくれ」

「避けるだけ……ですか」

 難しそうな顔でキエルドが言う。

 気持ちは分かる。だが、無理な話ではない。人間の身体能力ならば気合いでどうにかなるレベルだと六瀬は思う。

「ああ。出来る限りで良い。なるべく弾は使うな」

「わ、わかりました」

「以上だ。いいな? 時間がない、急ぐぞ」


 六瀬は自身の予備弾倉を腰から二つ取り出して渡そうと掲げる。

 すると即座にキエルドがパームの銃と自身の銃を交換し、ルマーナはレッチョから奪うように受け取った左腕をはめて、銃剣を持った。

「よし。ティニャ達の所まで走るぞ」

「ええ」とルマーナ。「はい」とキエルド。

 返事を聞くよりも早く六瀬は走り出した。

 そしてピタッとついてくるルマーナに向かって言った。

「ロープ……持って来るべきだったな」

「……そうね。でも多分、使ってる余裕なかったと思うけど」

「確かに」

「次からはもっと上手くやる。準備万端でね」

「……そうだな。それよりもその腕どうした」

「昔ちょっとね。嫌いな腕だけど、後悔はしていない」

「俺は好きだが?」

 便利そうだしな、と付け加えたかったがやめた。

「……ホントに?」

「ああ」

「……ありがと」

 そう言ってルマーナは笑った。

 まるで少女の様な笑顔だった。






 救出した際の集合ポイントは決まっていた。

 だがもう、そんな遠い場所まで連れて行く状況ではなかった。

 アズリの判断で、女性四人は崖の縁へ運ぶだけとした。

 キャニオンスライムはこちら側を無視してティニャ達を追っている。レティーアとカナリエもついていてくれるのだから、問題無いだろうという判断からだった。

 遠くから聞こえる発砲音。然程多くもない木々が、それでも音を吸収し、クリアな音響を阻害する。だがしかし、弾の消費が激しい事だけは十分に分かった。


「予備、少し持って行く」

 最後の女性を降ろしてから、レティーアとカナリエに向かってアズリは言った。

「そうね。その方が良いわ」

「わかった。このまま持って行って」

 レティーアが自分のマガジンポーチをベルトごと腰から外して渡して来た。

 二個セットになっているホルダーが二つ付いていて、四つの予備弾倉が収まっている。

「私はカナリエさんの借りるから大丈夫」

 カナリエが同意するように頷いた。


「ありがと、レティー。それとメンノ達も回収していく」

 メンノとダニルは現在、必死に崖を下りていた。これからまた登って数百メートル先まで走るとなると、かなりの時間がかかる。小型艇で連れて行った方が早い。

 ロクセの判断は間違っていないと思う。だがそれはロクセが居た時までの状況においてだ。

 今は想像以上に多くなった発砲音が事態の深刻さを示していると感じた。

 今から真っ直ぐに向かって、急いでティニャ達を回収してしまう方が良いのかもしれない。だがもし、残弾がゼロになってしまえば、ロクセだけで対応するのは難しいだろう。援護できる人数を少しでも増やせば、その分だけ楽に状況を維持できる。


「言われた通り真っすぐ向かった方が良いと思うけど?」

 レティーアは反論するが「ううん。絶対連れて行った方が良い」とアズリは断言した。

「気を付けてね」

 カナリエが言った。アズリは頷くだけで返した。

「ザッカ。メンノ達を回収してから向かう。お願い」

「分かったっす」

 返事と同時に船は浮かび、渓谷内へと降りる。

 あと少しで地面へ到達する二人を下から眺めつつ「早く乗って。向こうまで連れて行く」とアズリは叫んだ。

 地面へ足をつけて駆け寄ってくるメンノは「こんな事になるならロープの一つも持って来るんだった」と愚痴を言った。ダニルも同意する様子で「むぅ」と唸った。

「言ってもしょうがない。とにかく乗って」

 二人はそれ以上何も言わずに黙って乗り込んだ。


 小型探査艇は、正面から操縦席、その後ろに船底から地上を覗く為のスペース、更に後ろに色々な道具を収納するスペース、といった構造になっている。

 道具や装備品を全て降ろして歩ける以上の空間を確保しても、棚等が邪魔で結構な窮屈感がある。

 そこに男二人が乗るとなると、体の大きなダニルの存在も相まって、空気すらも無くなる錯覚が生まれた。

「狭い……」

 ボソッと呟くと「前に行け、前に」とメンノにつっこまれた。

 言われてアズリは操縦席側へと移動した。体半分をザッカの座るシートへ寄りかかる様に預けた。そのまま前方を確認すると、撤退する数名の影がみえた。

 やはり弾が無くなったのだ。武器が無ければ足手まといになるだけだろう。撤退は正しい。

 更に奥へ目をやると、キャニオンスライムへ牽制を続ける人達が見えた。ロクセとルマーナ、そしてキエルド。たった三名しかいない。


「三人だけで耐えてる」

 アズリが焦りの混じった口調で言うと、次いでザッカが「やばいっすね、この状況」と苦い口調で言った。

 ザッカのセリフは三人だけで対応しているから……という意味ではない。

 キャニオンスライムから伸びる触手は小型艇を狙っている。懸命にそれを抑えているが、殆どの仕事はロクセだけで、他の二人は自身に飛んでくる触手を避けるのに必死になっていた。

 小型艇も高度を下げる事が出来ずに、変な挙動を繰り返している。

 通信で聞いていた話よりもずっとダメージが大きいと思われた。

 小型艇が落とされたら被害が拡大する。今にも落とされそうなのだ。状況としては最悪といってもいい。


「ダニルさん、メンノ、木にぶつからないギリギリまで高度落とすから、そのまま着地して」

「スピードは?」

「落とさない」

「男の見せ所だな」

 黙って頷くダニルは問題ないだろう。メンノも……少し細身だが、何とか行けるはず。そもそも、それほどスピードの出ない探査艇なのだ。そのくらいの気合いは見せて欲しい。

 そう思いつつアズリはマイクのスイッチを押した。

「パウリナさん聞こえてます?」

『ええ。聞こえてる、きゃ!』

 触手がかすって船が少しバランスを崩した。

「大丈夫ですかっ?」

『だ、大丈夫』

「私達が代わります。直ぐに撤退してください。いいですよね、ルマーナさん?」

『勿論だよ。パウリナっ、もういい、退いてちょうだい』

『分かりました。アズリちゃん、お願いねっ』

「はいっ。任せてください」

 言って直ぐに小型艇が進行方向を変えて、こちらに向かって来た。数本の触手がそれを追うが、ロクセが追い返した。


 ザッカが「そろそろっす」と言った。高度が幾らか下がっている。

 見ると僅かに開けた場所があった。ザッカはそこを着地ポイントとしたようだった。近づくポイントを確認しながらアズリは深呼吸した。

「ダニルさん、メンノ、行きますよ、三、二、一、今ですっ」

 瞬間ぐわんと船が揺れた。後部ハッチの際を蹴った衝撃だ。

 アズリは振り向いて確認した。ハッチから二人が着地する姿がみえた。

 ダニルは大きな体を驚異的な体幹で支え、メンノは転びそうになりながらも必死に耐えた。

「上手く着地出来た。ザッカ、後はそのまま直ぐに渓谷内に下りて」

「了解っす」

 ルマーナ班の小型艇とすれ違った。その瞬間「任せたわ」と唇を動かすパウリナが見えた。

 アズリは頷き、同時にザッカも頷いた。

 ロクセ達の頭上近くまで辿り着くと、漸く渓谷内が見えた。


 アズリはゾッとした。

 数十本の触手が、うねうねと生き物の様に蠢きながらティニャ達を追っている。中には瞬間的に飛び出す触手もあるが、ロクセの的確な狙撃でギリギリ難を逃れている状態だった。

 弾なんていくらあっても足りないだろうと思えた。

「ロクセさんっ。使って下さいっ」

 頭上を通り過ぎる瞬間、アズリは急いで後部ハッチへ向かい、レティーアから預かったポーチをベルトごと投げた。

 上手い具合にロクセの目の前に投下された。

 彼はそれを素早くキャッチして、目線と頷きだけで「助かる」と伝えて来た。


 小型艇は止まる事無く渓谷内へ進入し、一旦ティニャ達の頭上を通り過ぎる。

 そして高度を下げて、ゆっくりと速度を落とした。

「ティニャちゃん!」

 引っ張られて走るティニャも、ティニャを引っ張る女性も、もう限界と言える程に息を切らしている。

「はぁはぁ、ア、アズリお姉ちゃん?」

「乗って!」

 アズリは手すりを掴んで身を乗り出し、残った方の手を伸ばした。

「こ、この子を先にっ」

 女性はティニャの手をぐっと前へ引いて、握る様にと促してくる。

 アズリはその手を握って引っ張った。

「掴んでっ」

 言いながらティニャの手を手すりへ近づけると、小さなその手は必死に手すりを掴んだ。そして膝がハッチの際へ乗るまで体を引き上げた。

 体が乗れば大丈夫。今度はティニャを守ってくれた女性だ。


「最後です。さぁ早くっ」

 最後の女性へ手を差し伸べた。だが届かない。彼女の走る速度が落ちて、距離が離れて行く。

「ザッカ、速度落として」

「りょ、了解っす」

 小型艇の速度が落ちると、キャニオンスライムが大きく見えてきた。

 これ以上近づくと、蠢く触手に四方から囲まれてしまいそうだった。

「よしっ。掴んだ!」

 息を切らしながら手を伸ばす女性。その手を掴んでアズリは渾身の力で引っ張り上げた。

 むちっとしていて胸が大きく、身長もアズリより少し大きい。小柄なティニャを引き上げる時とは違う筋肉を使う。

「んんん~。がん、ばって!」

 手すりを掴んで片手をハッチに掛ける彼女は必死に自身の体を持ち上ようとする。だが、力が入らず、なかなか上がらない。

「もう少し高度下げてっ」

「りょ、了解……っす」

 女性の腰高まで下がった。ここまで下がるとちょっとした操作ミスで船底を擦ってしまう。しかし、これならば、這う様に乗る事が出来る。


「ん~。うぁっ。はぁはぁ」

 喘ぎに似た声を出して彼女は這い上がった。殆ど気合いだ。だが、なんとか体を滑り込ませて乗る事が出来た。


――良かった。後は逃げるだけ。


 アズリは高度とスピードを上げるようにとザッカへ声をかける。

 が、その台詞が出る前に船に衝撃が走った。

 上から殴られたのだろう。ガンっと音がして船底が地面に擦れ、激しく揺れた。

「きゃ」

 と、アズリは小さく悲鳴を上げてバランスを崩す。だが、棚の角に掴まってなんとか転ぶのを耐えた。

 そんな中「わっ。嫌っ」とティニャが一歩遅れて変な悲鳴を上げた。

 ハッとしてティニャを見た。目の前にティニャの顔があった。上を向いて救いの目を向けていた。

 上を向いている……そう、変な体勢だった。

 ティニャの体は宙に浮く形で真横になっていた。

 キャニオンスライムの触手がティニャの太股から胸までを覆っている。

 ティニャは力一杯両手で手すりを握り、引かれる力に必死に耐えていた。


「た、助けて……」

「ティニャちゃ……」

 気が付いて声をかけるまで一瞬だった。

 耐えられるはずもない小さな手は、滑るように手すりを離す。

 誰かがついていてあげないといけない。

 それ一点だけが思考を支配して、迷わずアズリは飛び出した。

 そしてティニャの体を覆う触手へ抱きつく様にしがみついた。

「離してぇぇっ」

 叫びながら引っ張るがビクともしなかった。柔らかいのにビクともしなかった。

 高く持ち上げられる前に何とか引き離さなくては、と思いつつ必死に努力する。

 だが、あっという間に持ち上げられて体が高く浮いた。と思ったら、自分の腕と足も触手に埋まる形で取り込まれていた。


――う、動かない。そんなっ。


 形状を変えて、ズルズルと体を飲み込んでいく。アズリとティニャ、二人寄り添って緑色の水に浮かぶ……そんな状態になるまで時間はかからなかった。

「ご、ごめんなさい」と言いながらティニャが見つめて来た。

「大丈夫。諦めないで」

 ロクセがいる。皆がいる。弾も渡した。きっと助けてくれる。

 そう思ってアズリは見上げた。

「あっ」

 だが、それは叶わないかもしれないと絶望した。


 キャニオンスライムは頭が良い。

 アズリから見ると空が半分覆われた形、そう、キャニオンスライムは触手を並べて二重三重と重ね、まるで盾のような物を作っていた。

 発砲音だけは聞こえる。メンノとダニルも到着したのだろう、音の数は増えた。だが崖上からの攻撃を防ぐ触手は全ての弾を受け止め、吸収している。

 誰かが叫んでいる。だがはっきり聞こえない。声すらも吸収しているのか。

「そ……そんな」

 重なる触手の先に皆がいる。ロクセがいる。

 陽光が作る影で薄っすらとシルエットだけは見えるが、誰が誰だか分からない。

 影は四つ。ルマーナ、キエルド、ダニル、メンノ……後は、ロクセ。

 否、足りない。一人足りない。何処へ?


 そう思った瞬間「アズリっティニャっ」と呼ぶ声が聞こえた。

「え? 嘘っ」

 声は足元から聞こえた。

「アズリ、よく聞け。体が自由になったらティニャを抱きしめろ。そして、目を閉じろ」

「ロクセさん? な、何で……」

 声の主はロクセだった。

 何故ここにいるのか。何故渓谷内へ下りて来たのか。というかいつの間に。

 一度下りたらそう易々とは登れない崖。キャニオンスライムの攻撃を避けながらなんて勿論無理だ。結局救出人数を増やすだけで、そもそも危険過ぎる行為。

 どうして助けに来たのか理解に苦しむ。

「上からの援護が出来なくなった。だから来た。それだけだ。とにかく俺の言う通りにしろ。俺を信じろ」

 言いながら襲ってくる触手を的確に処理している。

 きっと何か策があるのだろう。信じるしかない。


「はい!」

 言ってティニャと顔を合わせた。ティニャは頷いてぎゅっと目を閉じた。

 ダダダっと音がした。体の近くに数発の弾丸が撃ち込まれた。弾が触手に埋まって浮いている。

 すると直ぐに体を覆う圧力が弱まり、滑るように体がズレた。手足の自由が利くと同時にティニャを背中から抱きしめて、ぎゅっと目を閉じた。

 既に十メートル以上の高さがある。落ちれば良くても大怪我、普通に考えたら死だ。

 重力に引き寄せられる落下が内臓が浮かせて、強制的に息を止めてくる。しかし、背中と膝裏を強く固定する感覚が落ちる瞬間からずっとあった。

 覚えている。何処かで同じ様な感覚を味わった事がある。


 着地した。音と衝撃で分かった。だが、その衝撃は殆ど殺されていた。

 本当に落下したのか? と疑いたくなる程だった。

 目を開けるとロクセの顔があった。抱きしめたティニャごと抱えて、既に走り始めている。

「あ……」

 大事にされているという安心感みたいな何とも言えない感覚。何故か腕を回して胸に顔を押し付けたくなる衝動。この腕の中のポジションは誰にも譲りたくない、なんて意味の分からない独占欲。

 思い出した。

 無歩の森で黒い彼に抱えられた時と同じ感覚だ。


「え、えっと……」

「先に乗れ。俺は船が離れるまで援護する」

 ロクセが言う。

 囮になるという事だ。

 だめだ。

 そう言いたかった。

 だが、思考に霧がかかって声が出なかった。

「ありがとう。もういいわ。降ろしなさい」

 誰?

 誰の言葉?


――今の……私が……?


 驚いたロクセが見つめて来る。

 ただその目は、何かを観察するような、珍獣をみるような、何とも言えない好奇心を含んでいる。

 そんなロクセの視線は、少し不快だった。


――今のは私じゃない……誰を……見ているの?


 そう思ったのを最後に、アズリの意識は深く眠った。

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