第18話飲み会に参加

 確か……会社が終わって、昇を待っていたんだよな……。




 すると……小野君が話しかけてきたんだよな。


「あっ!水戸さん!」


「小野君か、どうかしたかい?嬉しそうだけど……」


 この間、怒られてた2年目の子だな。

 確か……小野守君だったかな?


「ええ!水戸さんも参加するんですよね!」


「ん?……飲み会のことかな?」


「はい!案内しますんでどうぞ!」


「え?いや……」


「す、すみません!ご迷惑ですかね?」


 ……これも大事なことだな。

 おそらく、小野君も指導することになる……。


「いや、そんなことはない。案内してくれるか?」


「もちろんです!」


 はて?何故、こんなに喜んでいるんだ?

 とりあえず、昇にメールを送っておく。




 そして、歩きながら話を聞く。


「水戸さんは憧れなんです!」


「へ?お、俺が……?」


「はい!いつも冷静沈着に仕事をしていて、ミスもしませんし、人の顔色を伺わないで自分を貫いてるっていうか……」


 ……誰だ?そのカッコいい男は?

 俺は、ただ面倒なだけと苦手……あと、早く帰りたいから……。

 そうか……話さないと、こういう弊害も起きるのか。


「俺は人と話すのが苦手なだけだよ。相手もつまらないだろうし」


「そんなことないですよ!みんな、話したがっていますよ!水戸さんは怒鳴ったりしないし、仕事も丁寧に説明してくれますからね」


「そ、そうなのか?」


確かに、自分がされてきて嫌なことはしないようにはしていたが……。


「はい!ただ、邪魔しちゃ悪いかなとか……誘うのに勇気がいると言いますか……横山さんが、いつも連れてこないのって言われてました……」


「そうか……」


 昇のやつ……一言いえってんだ。

 いや……悪いのは俺だな。


「でも、良かったです。こうして、来てくれるですから」


「ああ……毎回は無理だが、たまには出るつもりだ。よろしく頼むよ」


「はい!こちらこそ!」




 そうして、貸し切りの店に到着した。

 そこには、1年目から5年目くらいのメンツが集まっていた。

 うちは、比較的若い子が多い部署だからな。

 俺が入った年に新設されたし。

 ……あとは、上の人がいたらやり辛いからだな。


「みんなー!水戸さんが来ましたー!」


「おいおい……」


「あっ!ホントだ!」


「水戸さんだ!難攻不落の!」


「小野ー!どうやって口説いてきたんだ!?」


「こっち来ましょー!」


 ……歓迎されているのか?

 俺は、君達に何もしていないのに……。



 とりあえずは、真ん中辺りの席に座らされた。

 すると、男女問わず次々と質問がくる。


「どうしたんですか?」


「何があったんだ!?」


「水戸さんが来るなんて……」


「いや、まあ……たまには良いかなと思ってね。悪いけど、仲間に入れてもらえるかな?」


「もちろんですよ!お礼を言いたかったんです!」


「嬉しいです!いつもありがとうございます!」


「はい?」


 ……どうやら、話を聞くと……。

 俺は、彼らを助けていたらしい。

 ある時は、仕事のミスを修正してくれたり……。

 ある時は、お茶汲みを手伝ったり……。

 書類を運んだり、作るのを手伝ったり……。

 そんなのは当たり前のことだと思うのだが……。


「そんなことないですよ!口ばっかり達者で手伝いもしない人もいますし!」


「偉そうにお茶はまだか?とかいう人もいますし!」


「そ、そうなのか……」


「ほら!水戸さん!言ったじゃないですか!」


「ハハ……」


 小野君のいう通りだ。

 どうやら、少し卑屈になり過ぎていたようだな……。



 そんな話を聞いていたが……やはり、慣れないことには変わりはないようだ。

 少し疲れてしまった……さて、一度ゆっくりするか。


「悪いけど、少し外すよ。風にでも当たってくる。あんまり、慣れてないものでね」


「あっ!そうですよね!どうぞ!」


「ああ、ありがとう」


 一度外に出て、夜風に当たる……。


「フゥ……そうか……そんな風に思われていたのか……」


 ダサいな……勝手に卑屈になって、敬遠されていると思い込んでいた。

 むしろ、俺が敬遠してしまっていたのか……。

 少しは……俺でも、役に立ってるのかな?


「……なんか、色々と考えさせられるな……」


 その後中に戻ったが、席を変えて1人でチビチビと飲む。

 幸いなことに、皆も遠慮して放っておいてくれるようだ。


「うん……こういう感じなら、たまには良いかな……」


 俺がそう思った矢先の出来事だった……。


「あっ—水戸先輩だ!」


「も、森島さん?」


「えー!?なんでいるんですかー?もっと早く来ればよかったですー」


 そう言って、自然と隣に座っていた。


「いや、まあ……心境の変化ってやつかな?」


「へえー!そうなんですね!でも、嬉しいです!」


「そ、そうか……」


 いかんな……こういう場で女子と話すことなどないからな。

 いまいち勝手がわからない……大学生以来かも。

 とりあえず、繰り出される話に頷くことしかできなかった……。



「それでですね!」


 ……疲れた……すごいな……いつまで喋るんだ?

 しかし、可哀想だし……。

 そんな時、空気が変わった……。


「え?」


「あれって……?」


「松浦係長……?」


「うそっ!?」


 ……ホントだ。

 いつもの冷たい顔をした、松浦係長がいる。

 後ろには、何故か昇がいるし……。

 そのまま、俺の方へ歩いてくる。


「隣、良いかしら?」


「え?は、はい」


「むっ!私が2人で話していたんですけどー?」


「あら、何かご不満が?」






 そして……今に至るわけだ。

 ……そうだ、そっから何故かこうなったんだ。


「水戸君?聞いてるの?」


「水戸さん!聞いてるんですか!?」


「はいはい、聞いてますから……」


「水戸先輩は、私と係長のどっちを取るんですかー?」


「取るもなにも……ものじゃないんだから」


「そうよ、森島さん。あまり、水戸君を困らせてはいけないわ」


「困らせてるのは係長なんじゃないですかー?こんなところに上司がいたら、気を使うし、気疲れしちゃいますよー」


「そ、そうなの?水戸君……?」


「いえ、そんなことはないですよ」


「ホッ……コホン……ほら、水戸君もこう言っているわ」


「そりゃ、そう言うに決まってるじゃないですかー?水戸先輩は優しくて、いい意味で空気の読まない男の人ですからねー」


「そうね……最後のには同意するわ」


 これ、いつまで続くんだろうか……?


 こんなん経験ないから、どうして良いかわからない……。


 俺——帰りたい……。














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