魔王の孫

あきのななぐさ

第1話 プロローグ

 異世界に勇者として召喚されたのはいいけど、見渡す限りの人、人、人。


 その数なんと百八人。誰もが混乱する中、有無を言わせず一方的な説明が始まり、そのまま話がどんどん進んでいく。そして、最後にどかかで拾ってきたような兵士の装備一式と、わずかな旅費を順番に取りに来るように命令され、俺達は不思議とそれに従っていた。


 ただ、言いなりになっていたのもここまで。さすがに文句も出始める。


 しかし、城の連中は慣れたように対応していた。そう、俺達百八人の勇者は、またも有無を言わさず魔法で街の外に放り出されていた。


 ただ一言、『自分の影と戦え』と言われて……。


 その言葉に戸惑いもしたが、そんな俺達の事情を気にすることなく、いきなり襲い掛かってくる俺達の影。視界の端には、同じようにしたこともない戦闘を強いられている人達が見えていた。


 ただ、戦う相手は俺の影。正直言って、弱かった……。


 しかし、それでも何人もの犠牲者がでていた。きっと本人が強かったのだろう。だが、そんな死体を放置して、生き残った俺達は王の前に連れていかれる。


 そこで告げられた内容。それは、驚くべきものだった。


 すなわち、『三年以内に魔王を倒せなければ、自身に猫の呪いが降りかかる』と――。


 その後すぐ、始まりの街に飛ばされた俺達。その後、運よく勇者の能力に覚醒した俺は、数々の冒険を繰り返し、次第に強くなっていた。


 ただ、なんといっても相手は魔王。これまでも随分やられてきたらしい。そう思うからこそ、俺は時折来る城からの催促の使い魔をあしらいつつ、ぎりぎりまで修行して強くなることにした。


 その途中で伝説の武器を運よく手に入れ、ようやく召喚から三年を迎えるという今日。今まで催促を無視し続けた代償を、ついに払う羽目になってしまっていた。


 そう、信じられないほどあっけなく拘束され、瞬時に目的地に飛ばされるという形で――。



 

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