4−3「予知vs電磁波」
「
その言葉に私が思わず顔を上げるとジョンは何かを察したのか「いや、俺は一度も相手を傷つけることはないぜ?」と肩をすくめてみせる。
『そうだぞ。ジョンはこう見えても特殊部隊出身でな射撃の腕は地上でもヘリの上でも自由自在…だから、この艦の長官職に就いてもらっているんだ』
【師匠】の言葉にジョンは照れたように頭をかく。
「よしてくれ、腕が良いと言っても俺も軍を退役して40年も経つ…それに受けた恩は返すクチでな」
そう言いつつも、ジョンは高度を少し落とす。
「にしても予知能力もちとは恐れ入った。動くのは見た目ひとマス分ずつだとしても…周囲の魚が浮くのは移動時に海面に尾っぽでも叩きつけてるからか?」
『うーん、そこまではわからん。もう少し観察がいるかもしれんが…』
するとスマートフォンがポーンと軽い音を立て、女性のアナウンスが流れた。
『新機能【電磁波】が追加されました』
「…【電磁波】?」
私がスマホの画面を見ると【師匠】が『…おお、先月の』と声を出す。
『どうやら、この前にお前さんが初めて転送した電気系の怪獣の能力が追加されたようだ…ふむ、どうやら地上の広範囲に一時的に電気を流す機能らしい』
…電気、浮いた魚。
その時、私の頭にピンとくるものがあった。
「…もしかして、浮いた魚は電気で失神したのかも」
『ん?』
「ホワット!?」
驚く二人に私は少し緊張しながら答える。
「…ほら、デンキウナギとかって周囲に電気を放って魚を失神させる体質じゃあないですか。だから、予知能力も体内にある電気を使っていて…多分私の推測が当たっていれば【電磁波】を使えば…」
尻すぼみになっていく言葉とは裏腹に、ジョンは「そうか、ショートして動きを止める!」と叫ぶなり無線で連絡を取り、私に向かってグッと親指を立てる。
「その推測はバッチリだ、艦に連絡して電気を計測したら奴さんの周りに微弱ながら電流が流れていることがわかった…おそらく大当たりだ!」
『よし!すぐに【電磁波】が展開できるように調整してやる』
【師匠】の言葉と同時に画面が切り替わり、黄色いマスで区切られたグリッド線が海面の上に出現する。【電磁波】は面で展開するようだがその範囲は広く、怪獣の周囲を囲うには十分な広さもある。
「奴さんの真上に位置できるように調節したが…できそうか?」
そう言われた瞬間、急に先ほどまでの失敗によるプレッシャーが襲いかかる。
…もし、ここで失敗したらどうなるのか。
私の考えた作戦が間違っていたら周囲はどう思うのか。
みれば、後ろを向くジョンにカメラごしの【師匠】の視線を感じる。
思わず意識してしまい、私のスマホを持つ手は震えだすが…
『なあに、ダメで元々…その時にはこっちでフォローしてやるよ』
【師匠】の言葉に後押しされ、私は中央にある【電磁波】のアイコンを押す。
途端にバシンと海面ですさまじい音が聞こえるが…怪獣はそのまま進む。
「ようし、ダメ元ならこっちもやってやるさ!」
言うなり、ジョンが操縦桿のカバーを外し、中の赤いボタンを押す。
するとヘリの先端からガトリング砲が飛び出し、怪獣の行く先を撃った。
怪獣はそれに驚いた様子で身をよじる…が、避ける様子はない。
『よし、【電磁波】で奴は動けない!カメラモードに切り替えるぞ!』
同時に画面に青いグリッド線が引かれ、私は怪獣を入れた状態で素早く画面をタッチする。ついで怪獣の周囲に檻が現れ、私は【転送】のボタンをタッチし…怪獣はぐにゃりと曲がった空間の中へと飲み込まれていった。
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