2−4「再開、死」

 ざわめく林の中でいくつもの死骸の目がこちらを見る。


「…なんで死体が動いているの?」


 大蜘蛛となった猫の頭部がチッと合図を出し、木の上の猿やカラスからボコりボコりと蜘蛛の手足が生えてくる。


「これ、この通り…彼らは私と同じ種となったのでございます。思えば、見知らぬこの星に落下し、己が身の腐敗を防ぐことから始まり、つい先月にようやく自身の株分けを果たすことができました」


 暗い中で猫の目が光る。


「今でこそ彼らは私の命令で動き、仲間を増やすことしかできませんがいずれは己が意志を持ち、尖兵となることは確実です…ですから今後の行方を定めるためにも是非我らに助言を」


『…そりゃあ、出来ない相談だな。お前さんが外来生物であることに変わりがないんだから』


 【師匠】の声。気がつけば、近くの高台に人影が見えた。


 すわ、【師匠】本人が出てきたのかよく見れば、それは背の低い女性で彼女は私にスマートフォンを投げるとこう叫んだ。


「見つけるのに時間がかかってすみませんでした…受け取ってください!」


 慌ててスマホをキャッチすると【師匠】が言った。


『【弟子】、早くあの蜘蛛の化け物にスマホを向けろ』


「え…あ?」


 焦りながらも猫に向けるとスマートフォンのカメラが起動する。


『対象、危険レベル3。自動モードに切り替えます』


「…貴女も違うのですか?私の主人とはなっていただけないのですか?」


 青いグリッド線で照準された猫は困惑と悲しみの表情を見せる。


 …その時、私は気付く。


 体が思うように動かない。

 スマートフォンを握ったまま、対象である猫を捕らえた状態。

 その状態でスマートフォンのカーソルが勝手に動く。


『自動照準モード、【破壊】選択』


「ちょ、ちょっと待って。この子が一体何をして…!」


 その時【師匠】が言った。


『すまんな。これは俺にも止められない…何より【上】の判断だ』

 

『…【削除デリート】』


 蒸発の瞬間、私は確かに猫の頭部が「…主人」とつぶやくのを聞いた。

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