幼馴染失格!!〜幼馴染を『クビ』になった俺が出会ったのは、見知らぬもう一人の幼馴染!?〜

立川マナ

序章

プロローグ

 ゲリラ豪雨……というやつだった。

 まだ小二の頃。窓の外で降り注ぐ雨がまるで滝みたいに見えて、ちょっとワクワクしたのを覚えている。

 そんなとき、母親が青白い顔でリビングに飛び込んできて、俺に訊いてきたんだ。


 ――まりんちゃんがまだ学校から帰っていないんですって。あんた、一緒に帰ってきたんじゃないの!?


 テレビを見ていた俺は、凍りついたように固まった。

 いや、だって――と言いかけた言葉は声にならなかった。


 高良たからまりんは、俺の幼馴染で、五歳のときから知っている。マンションの隣同士の部屋に住んでいて、何をするにも一緒だった。

 そんなまりんを、たった一度だけ、鬱陶しく思ったことがある。まりんと幼馴染なんかじゃなければよかったのに――なんて、思ってしまった。


 その日、まりんは行方不明になった。


 俺はまりんを失いかけた。幼馴染として……だけじゃなくて。もう二度と、会えなくなるところだった。


 だから、誓ったんだ。

 俺はもう二度と、まりんを一人にしたりしない。まりんから目を離したりしない。幼馴染として、まりんを絶対に守り通す、と。


 八年経った今も、もちろん、その気持ちは変わらない。中学も終わりを迎えた今日も、俺は全力で走っていた――。


「まりぃいいいん!」


 校庭を囲むように植えられた桜の木々が、まるで俺たちの旅立ちを祝福するかのように、晴れやかな桃色に着飾っていた。

 はらはらと舞い散る花びらが小雨のごとく降り注ぐ中、卒業生と在校生があちこちに散らばって別れを惜しみ、保護者がスマホを手にアイドルのコンサートよろしく写真を撮りまくっている――が、そんな空気など知ったことではない。

 威風堂々としている場合ではないのだ。

 まりんがいないのだから。

 俺は血なまこでその姿を捜しながら、新たな門出に沸く校庭を一人ガムシャラに駆け抜けていた。

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