第30話 強さと得たもの
玉座の間でマーシャ達と雑談をしているとようやくユウカとエミールが目を覚ます
この二人はどちらかと言うと戦闘力が拮抗しているので、ある意味、仲良くなれそうな気がする
目を覚ました二人に声を掛けるとどうやらさっきの事は夢だと思っていたらしい
エミールなら真実だと言われれば信じるだろうが、ユウカはそうは行かないだろう
そんな2人をミーシャがじっと見つめる、何か因縁でもあったのだろうか?
「ねぇ覇王様?この2人って勇者と聖騎士?」
「あぁ勇者の娘と聖騎士長だな、なにか因縁でもあったか?」
すらすらと事の経緯を話す
どうやら、この二人はまだ孤児院に居た頃に世話になったようだ
意外と世界は狭いんだなぁと少女ながらに語っている
15歳くらいの見た目をしているが実際は3万15歳という規格外の
あの頃からいい意味で変わり果てた姿をみたエミールとユウカが驚いているが当の本人が冷静なので特に問題は無いだろう
そんな他愛もない話をしているとユウカの両親が怯えながらお互いを抱きしめ合い玉座の間に入ってきた
何をそんなに怯えているんだ...恥ずかしくないのか?
「お、おぃ、ユゥカ~タス、タス、ケニ、きたぞぉ!」
怯えているせいで口調も音程もままになっていない、助けられるのはお前だろうに...
「それじゃあ、覇王様、私はこれで失礼させてもらいますね」
ユウカが立ち上がり頭を下げる
「3日後の入学試験でまたこの子達と会うだろうから頼むな、あとミーシャとマーシャとも仲良くやってくれ」
「もちろんです!今日だけで6人も友達が出来たので私としても満足です」
「最後に餞別だ、家まで【
はい!と元気良く返事をしたユウカはなんの躊躇いもなく開かれた【
その様子に両親はひどく動揺している、さっさと行けと頭の中で何度も吐き捨てる
隣のミーシャからかわいらしい音が聞こえてくる、。どうやらお腹が空いてるようなので急ぐことにする
【
「さてご飯にするか、ミーシャもお腹空いているようだしな」
「空いてませんから...」
お?かわいい反応
全員を引き連れて食堂に向かう、さて何を食べようかな
歩いている最中ミーシャとマーシャは周りを見ながら「あっちとおんなじだぁ」「あの部屋もあるのかなぁ」などと、実に楽しそうだ
食堂に着くとドミナミが迎えてくれる、相変わらず聖母の様な佇まいだ軽く挨拶を交しそれぞれの席に着く
ミーシャとマーシャだけがやけにソワソワした様子だ、あの世界で俺と戦ったことがあるのならここの城にも来たことがあるはずだ
ならこの場所も来たのか?
「実はここでボス戦があったんだよね...それがさっきの人ともう一人の獣使いの人だったんだけど、ここで何回もつまずいちゃって、随分死んじゃったんだよねえ」
ボス戦?ああそういえば大天使以上のフリューゲル達は全部ボスにしたんだった...最後のエリアで続くボスラッシュ、ゲームにありがちだからなと軽い気持ちでそうゆう仕様にしたはずなんだが...相手は確か―――
ドミナミと...ルノアールだったか? そう思い小声で「ルノ」と呼ぶと即座にルノが目の前に膝を付いた状態で現れる
椅子に座るように指示を出し座らせる
この人この人!って声を張り上げ大興奮のご様子
どうやらこの二人を倒すのに苦労したらしい、ルノは4匹の神獣を召喚し使役して戦うその時なぜか召喚した神獣のステータスがルノアールに加算される、つまり、4匹召喚しただけでルノアールのステータスが4倍に跳ね上がる
しかもその神獣たちは召喚時のルノアールと同じステータスを誇る
さらに、忘れてはいけないのがドミナミの特殊スキルだ、指揮系統と回復系統のスキルを所持しており自分が指揮している仲間のステータスやスキルの効果を上昇させる
さらには蘇生魔法や回復魔法、状態強化魔法などをルノアールの後方で行うため、手の付けようがない
圧倒的なステータスを誇るルノアールに使役される神獣たちだけでも対処が厄介だというのにさらにバフを賭けられるので神獣達でさえ手の付けようがない
そしてさらにさらに、仮に神獣を倒せたとしてもドミナミに蘇生されてしまう、この時蘇生された神獣は再召喚扱いになりさらにルノアールのステータスがさらに上昇することになる
—――まさに悪循環
もしこんなのがゲームに出てきたら100%クソゲーと呼ばれるだろう、理不尽極まりない、
でも、俺と戦ったことがあると言う事はこの二人にも勝っていると言う事、いったいどうやって勝ったのだろう、まぁ範囲攻撃とかそこらへんだろう
案の定予想は当たっており、先ほどシーラと戦った時の様に
そこそこステータスがないとできない技であるがゼルセラと同等のステータスがあれば可能だろう
それでも倒せない俺ってさらに理不尽だな...
ここまで聞いて一つ疑問に思った、【
「あのアイテムは最後に帰るときに入手できたんです!」
成る程、最後の最後のセリフによってトリガーになったのか
まあ、楽しめたようで何よりだ
その後に今後の話をした、正直あれほどの力があればこの世界で自由に生きる事だってできる、俺の元を離れて旅に出るもよし、ここに残って学院や冒険者をするもよし
俺に止める意思はない、あくまでも二人の意思を尊重するつもりだ、確かに普通の少女を最強クラスの化け物にしてしまった責任はあるかもしれないが...
2人で話し合った結果、ここに住みたいと言っている、正確にはこの覇王城ではなく俺の統治する領地に家を建てて住みたいとの事だ
ならば、ある程度の家を建ててやろう、と思ったが、それも自分たちでやるという、まぁあちらの世界のアイテムがあれば大丈夫か、と思いすべてを任せる
今度遊び来ても良いという了承まで貰えた。やったぜ
この二人ならば大丈夫だろう、万が一の事があったとしても蘇生アイテムをたくさん持っているようなので、大丈夫だろう
もう夜も遅いので2人を寝室に案内する、その役目をルノに任せた
自分も当番のマキを連れて部屋に戻る、そしてどさっとベットに倒れこむ、今日は楽しかった、素晴らしい戦闘を見れたし友達が増えた、そして美少女の仲間が出来た
眠りにつくと夢の中というか心の中にシーラが現れ隅で座り込み、とてもつらそうな表情のシーラ
「どうかしたのか、こうして俺の夢の中に現れる時は大体辛い事があったときだろ?」
シーラは時折りこうして夢に現れる、そうゆう時は決まって何かがあった時だ、演算が間違ってた時のような、自分が何かミスをした場合だ
俺としてはミスだなんて思わないが、俺の知能を司る存在としては辛いのだろう、全能と称しながら全てを行えないことに罪悪感でも感じているのだろうか
「お兄様...いえ、マスター...私は、必要ないのでしょうか...私はお役に立つことが出来ないでしょうか...」
「またその話か...何度も伝えたと思うがシーラは役にたっている、俺はシーラに頼りっぱなしだ、だからそう落ち込まなくていい」
「ですが...」
そう言い目を伏せてしまう
「ですが、私は、あの子達に敗北しました...それはマスターの顔に泥を塗る行為であり—――」
言葉を遮る様にそれを否定する、あのスキルを使われた以上、それは仕方がないことだ、俺だって別の人間だったらあれに逆らう事は出来ない
「ですが、やりようはありました...
「なら、もし仮にここで俺がシーラの事を必要ないと言ったらどうするつもりなんだ?」
「私が必要ないのであれば...私は消えるとします」
「なら、結論を言おう、、シーラは俺にとって必要だ、これはどうするんだ、シーラは消えたいのだろ?なら、自分の意思を曲げてまで俺のもとにいるのか?」
「それは...」
シーラは口ごもってしまった、
「シーラ自身はどう思ってるんだ」
消え入りそうな声で小さく呟く、それをわざとらしく聞き返す
「一緒に...居たいです、ずっと...いっしょに...」
「それでいい、俺がシーラにわがままを言う限りシーラも俺にわがままを言えばいい、俺たちは元々一つなんだ、自分の心にくらい素直にならないとな」
鳴きながらそれを肯定するシーラをそっと抱きしめる
すると、俺の夢は終わりを迎えた
目が覚めた時には既に日が昇っており、気持ちの良いくらいの青空が広がっている
時間にして10時ぐらいだろうか、早いとは言えないが自分にしては早い方だろう、と開き直る
体を起こし軽く伸びをする、当番のマキが挨拶してくるので軽く返事をする
その後は他愛もない話をしながら食堂に向かう、どうやら今日の夜は平和だったみたいだ
食堂に着くとマーシャが1人で朝食を食べていた。あれ?一人、あさから双子の息の合った「「おはようございます」」を聞こうと思っていた俺の計画が...
「おはようございます、覇王様」
挨拶を返してミーシャの事を訪ねるとマーシャはため息をついた
「まだ、寝てるんですよ、朝が弱いって言うか...あっちの世界でも途中から昼くらいに起きる様になっちゃって」
怠惰だな...もし仮にマーシャが朝の6時に起きてそっから戦闘をしてたとすると1日だけでも6時間の差が生まれる、それも3万年ともなればかなりの時間の差が生まれる
その生活をこっちの世界でもするとなるとまずいな...
まずは生活習慣から見直しだな、俺が言えた事ではないが...ん?朝早くに起きるマーシャは食堂でずっと何してたんだ?今も食べてるけど...
「マーシャは何をしてるんだ?ミーシャを待ってるのか?」
マーシャは首を横に振る、なんだ、待ってる訳じゃないのか
「実は私あっちの世界で食料系アイテムばかりドロップするんです、とゆうより、食糧系アイテムしかドロップしないんです...」
そんな設定にしたっけ?と考え込むが答えは出てこない、するとマーシャが【
そこにはマーシャのステータスが表示されていた、ここで、どうして
そもそもマーシャのステータスがゼルセラの未装備時と同等のステータスを誇るのだ、そりゃあ強いに決まっている、でもどうしてそんな強さに?と不思議に思い見ていると
徐々にマーシャの頬が赤くなっていく
「あんまり...じっくり見ないでください...」
心臓が槍にでも突き刺されたのかという衝撃を受ける、当然実際攻撃された訳でもないので胸に風穴があいてるわけではない、少女の恥ずかしがる姿はかなりの破壊力があるのだ
どうやら特殊スキルの欄を見てほしい事なので見ていると、かなりの量の所持スキルが並んでいる...見てもわからん
素直に聞くとそのスキルに指を差してくれたそこには【食いしん坊Lv100】このスキルがどうかしたのか?
「このスキルはLv50くらいまでは【食料系アイテムの効果が上昇する】というだけの便利スキルだったんですが...」
そこまでだとただの便利スキルだ、むしろ便利すぎるほどに
「それはLv50になった時のことです、新しくこのスキルに付属効果が出現したんです、それが【ドロップアイテムが食料アイテムに変化する】というものだったんです...」
あっ...もしかして装備が無かったのか...【
「ある時、【
そのふたつが【愚者の悪知恵】と【有象無象】というアイテムらしい、そのアイテムは敵が落とす経験値量を自由にいじれるといったぶっ壊れアイテム
【有象無象】は種族を問わない中立モブを任意の数だけ召喚するというアイテム、これも割と壊れアイテムだ
「それを同時に利用して大量の敵を召喚して経験値をいじって一体倒すだけでレベルが9999に到達する様に設定したんですが...その際にアイテムが増えすぎてしまって...」
この子すごい事するな...そんな利用方法思いつかないだろう...ていうかその使い方いいな...まぁ俺が使ったら世界が化け物で埋め尽くされるんだが...
「その時はレベルアップと転生の繰り返しで食事をする必要がなくてアイテムが溜まっていく一方だったんです、レベルを最大にした【
【
「スキルのおかげで食料系アイテムの収納は問題なかったんですが...使いきれなくて...だからこうして毎日朝から5時間ほど食事をしているんです」
ふっ...食いしん坊ね...お似合いじゃないか...そういえば【空腹付与】と【空腹耐性】【満腹付与】と【満腹耐性】を乗せたっけ...その結果、食べても満腹にはならないし食べなくても空腹にならない
空腹だけだとかわいそうだと思い無限に食べれるようにと思い付与をねじ込んだっけ...
「どれもおいしくてステータスが上昇するので感謝はしてますが...乙女として毎朝この量を食べてるとなると心配なんです」
確かに太ったりしたら嫌だよな...ん?なるほど、それで胸の成長がミーシャよりも著しいのか...
—――いいじゃないか
「幸いドラゴンの消化器官のおかげで体重にそこまでの変化はありませが...」
「そんなに心配なら新しく【
「いいんですか?ならできれば食料アイテムを一つににしてそれをランダムで食べれる様にしていただきたいのですが」
「つまりは使用時に日替わり定食を生み出せるようにしたいと、それをさらに使用毎にするんだな、あとはあるか?」
「なら、料理を選択できるようにもして欲しいんですが...」
「よし、任せとけ【定食の呼び鐘】を作成するぞ」
その場で【
脳内でイメージしたものをそのまま作り出し手のひらに顕現させる
それをマーシャに手渡すとワクワクした様子でハンドベルを振る
すると目の前の机に新しく料理が置かれる、湯気が出ておりまだ温かいことを意味している、卵でご飯が包まれているようだ、俗にゆう、オムライスだ
それをキラキラした瞳のまま食べ始める、あまりにも幸せそうな表情で食べるので自分も食べたくなってしまった
お願いするとすぐにハンドベルを鳴らしてくれる、そのお陰で自分の前にもマーシャと同じオムライスが現れる
スプーンを使用し一口分口に含む...うまい...卵は柔らかくデミグラスソースとの相性がばっちりだ、正直手が止まらん
久しぶりにこんなにうまいものを食べた気がする
あっという間に食べ終わってしまった...
マーシャも物足りなかったらしく二皿目に進んでいる、―――おいおい
食いしん坊がほんとに似合うな...
自分は満腹耐性を切っているので一皿で十分だ
食べ終えたので、今日の話をする、
「とりあえず今日は二人で冒険者登録をしてくるといい、その後家でも作ると良いが俺は少々用事があるからここを出るがなにかあったら【
「はい!了解しました!!」
元気よく返事をし食べるのを再開したので最後に一つ忠告をしてから移動する
「—――食べすぎ注意!」
転移をしエミールと合流した
その頃、ノエル王国の女王、プランチェス・ノエル女王陛下に最大級の厄災が忍び寄っていた
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