覇王の居城

第15話 覇王城の天使

 グレース達は覇王城の入り口前にワープした。



「お、お帰りなさいませご主人様、それにシエラ様キーラ様エミール様も」



 迎えてくれた女性は桃色の髪を靡かせ背中から白い翼をはやした碧眼へきがんの天使だった。

そしてなぜか天使の子は目に涙を浮かべていた。




「泣かなくてもいいだろう数日開けただけじゃないか」


「それでもお留守番はあんまりです...同じ世界ならまだしも別世界にまで行ってしまうんですもの...」




 目に溜まっていた涙もあふれ出し彼女は座り込んでしまった。

 座り込んでしまった彼女の頭にそっと手を乗せる




「安心しろ『テイル』次は置いてかないさ」


「ぜ...絶対ですよ....」




 涙を拭きながら立った彼女の名前はテイル、グレースの生み出したフリューゲルで階級は大天使クラス。




「この後はどうなさいますかご主人様‼」


「そうだな一度自分の部屋に戻るとする...っとその前に戻ってきたことをに伝えとかないとな...」


「ゼルセラ様もきっとお喜びになりますよ‼‼」




 今名前が出た『ゼルセラ』という名はグレースが生み出したフリューゲルの中でもリーダー的存在の人物だ




「妹様方はどうなさいますか?」


「キーラは来たばかりだからな少し歩き回ってみるといい、シエラに案内を頼めるか」


「はい、お任せくださいお兄様」


「わーいじゃあ早速行こ!姉様‼じゃあ兄様もまた後でねーー‼‼」


「走ると転びますよ」




 手を大きく振りながら走っていくキーラとそれをなだめながら追いかけるシエラその姿をなぜか誇らしく思えたグレースだった。

 一息ついた所でテイルにしばしの別れを告げ自分の部屋に戻った

自分の部屋は数日前と特に変わりはなかった、といっても特に隠し事をしてるわけでもないので漁られたとしても大丈夫だ。




「さてと....先にゼルセラに連絡するか...」




 門番の子であんなに泣いてくれたのだからきっとゼルセラの反応はすごいことになるだろうなぁと期待と多少の不安を抱えながらグレースはゼルセラに向けて『伝言メッセージ』を発動した




「おい、俺だ今戻ったぞ」


「ひゃっ‼‼‼」




今何やらびっくりして声が裏返った気がしたが気のせいだろう。




「ご、ご主人様‼お帰りになられていたのですか‼‼」


「ん?あぁ今戻ってきたところだ」


「そうでしたか...でしたら次は当番の子を通して私に連絡をくださいませんか?」


「当番?どうゆうことだ?」


「そういえばご主人様には伝えておりませんでしたね....ご主人様の身の回りの世話の担当を当番制にさせてもらいました」


「あぁそう言う事か...大体察しがついたぞ」


「恐れ入ります」


「あぁそれと一つ皆に伝えてほしいことがあってな...」


「何なりとお申し付けください」


「2時間後に玉座の間に皆を集合させてくれないか?」


「見張り達も含めてというお考えでよろしいでしょうか」


「あぁフリューゲル全員だ。ちょっとした提案があってな」


「提案などなさらずに命令してくれればいいものを」


「そうもいかんだろ、だが今回はきっと皆喜んでくれると思うぞ」


「本当ですか?!首を長くしてお待ちしております」


「あぁじゃあ二時間後に...っとそうだ当番の子はどこにいるんだ?」




 俺の当番なのに俺の部屋に居ないならどこか別のところで待っているのだろうか




「今ご主人様はどこに居られますか?」


「転移で自室に来たところだ」


「でしたら部屋の扉前に居るのではないでしょうか」


「わかった、じゃあまたあとで」


「はい、それでは失礼します」






 グレースとのやり取りを終えた後ゼルセラは頬を紅潮させ余韻に浸っていた


「久しぶりのご主人様のお声...脳に心地いいですわぁ」






 やり取りを終えたグレースはそっとドアを開けた、がドアの前に居る子は扉が開いたことに気が付いてないようだ

まぁドアに背を向けてるから仕方ないのかな?とか思いながら後ろから声をかけた



「お勤めご苦労様でーす」



 それだけ言ってドアをしめた、流石に気付いてドアを開けてくれると思いドアの手前で開くのを待った



「はい!お疲れ様です!!」


待ったが挨拶を返しただけで終わってしまった、あれ?気付いてくれないのかな?流石に傷つくな...




 今日の当番はフリューゲルの、階級は一番下の天使だがフリューゲルの中で唯一の子供なのだ、

 他のフリューゲルは戦闘スキルや探知スキルを覚えているがジルニルはまだ能力吸収のフリューゲルの初期能力しか所持していない

 そもそも、このフリューゲルはグレースがしたフリューゲルであり元の種族とは生態や能力が原種オリジナルとはかけ離れた作りをしている。


 繁殖もできるにはできるがグレースの遊び心のようなのせいで同性同士の交配でのみ繁殖することができる

やっぱり百合は最高だぜとかそんな単純な思いだけこのようにした

 そしてフリューゲルの初期能力は能力吸収のみにした、初期に作ったフリューゲルはその後神々と戦争をした為、その際吸収したスキルを豊富に持っている


 その為、新しく生まれたフリューゲルのジルニルは戦闘を経験していないため所持しているスキルは初期スキルの能力吸収のみである

 この、グレースが作り出したフリューゲルはステータスがカンストつまりは9999万9999であり、例えスキルが使えなくても戦闘では圧倒的強さを誇る


 そのためフリューゲル達は所持スキルの量や能力の強さなどで階級分けされており、上から熾天使、智天使、宝座天使、統治天使、徳能天使、威力天使、君権天使、大天使、天使

 ゼルセラは最上位の熾天使の階級でありジルニルは最下級の天使に分類されている


 なので探知スキルなどを所持していないジルニルは音や自分の目で見て相手を探すしかないのだ、



「今気配というか...ご主人様の声が聞こえた気がするのですが....気のせいでなのでしょうか....」



 きょろきょろとあたりを見渡してみるも人気は無い、その時ゼルセラからの伝言メッセージが入った。



「たった今ご主人様がお戻りになられた、ジルはご主人様の傍に仕えて自分の役目を全うしなさい、それと二時間後に玉座の間に集合せよとの事だ、無いとは思うがもしもご主人様がお忘れになられていた時は失礼の無いように伝えること、いいわね?」


「はい、任せください、あの...恐れ入りますがご主人様はいったいどちらに居られるのでしょうか」


「え?先程連絡を取った際には自室にいるといっていたのだけれど...」


「そうだったのですか!?」


「とりあえず、部屋を確認してみなさい」


「はい、確認してみます」




 ジルニルはゼルセラからの伝言メッセージを終えた後呼吸を整えドアをノックした




「ご、ご主人様、ジルニルです、失礼してもよろしいでしょうか」


 声をかけると先程と同じ声で返事が返ってきた


「入っていいぞ」


「失礼します」



 返事をしてドアを開き部屋に入る



「数日ぶりだな、ジル」


「はいご主人様‼」


「さっきこっそり声をかけたんだが気づかなかったか?」


「も、申し訳ありません」


「ん?責めているわけじゃないから謝らなくてもいいぞ、ちょっと反応を見たかっただけだからな」


「そ、そんな...ご主人様は...いじわるです...」


「ははっそんなに嫌わないでくれ、それより今日は母親達と会ったか?」


「いえ...今日は当番でしたのでご主人様のお部屋の前で待機しいておりました」


「そうか...それはすまないことをしたな...」


「ご主人様が謝られることではありません」


「待機してたってことは...ここ数日の当番はどうしてたんだ?」


「ご主人様のしておりました」


「なん...だと...一日中か?」


「はい...交代の時物凄く寂しそうな顔をされてました」


「この事は少しと話を付けないとな」


「ですが、当番の仕事はここの主であるご主人様のお部屋の警備、とっても大事なことなのです」



自信満々に話す彼女の言葉が心に刺さる




「とは言ってもな...彼女らは楽しみにしてくれてたんじゃないか?」


「それはもう皆ウキウキで仕事してたはずです...ですが、私みたいな下級天使は本来ご主人様とお話しすることさえ...」


「違う」


 ジルニルの言葉遮るようにグレースは言う、グレースは元々階級制度を作るつもりはなかった何故なら強さはともかくグレースにとっては自分が作り出した、いわば子供ような存在だ

グレースにとっては皆等しく家族に他ならない、


 だが組織ともなれば上下関係がないと指示がうまく通らないことがある、だからこその階級制度なのでこのように下級だとかを言われると心が痛くなる


 だからこそはっきりと伝える、間違えない様に何度でも




「それは違う、娘に話をしてもらえない父親は辛いもんさ、正直廊下ですれ違った時でも普通に接してくれればいいと俺は思ってる」


「それはさすがに失礼に当たります...」


「失礼なんて思わなくていい、俺のことは父親だとでも思ってくれればいい」


「ご主人様は私たちのことを娘のように思ってくれてるようですが私たちは造物主であるご主人様は父親よりももっとこう...神格化したような崇拝するような存在なんです」


「そんなに遠い存在にしなくていい、もっと近くに俺を置いといてくれないか」


「ですが...」


「それこそジルの母親たちは俺にも気軽に話しかけてくれるぞ?最初はしっかりとした性格だったがな」


「お母様達がですか...?」


「まぁそれも含めてちょっと用事があるからなさぁ行くぞ、時間も限られてるしな」


「どちらに行かれるおつもりでしょうか?」


「ジルの母親、智天使ルノアールのところだ」



話を切り上げドアを開きグレースと付き添いのジルニルはルノアールの部屋に向かう。

ルノアールの部屋に行くのは正直楽しい、この覇王城で一番のスポットと言っても過言ではない!!

希望を胸に秘め俺は軽い足取りで足早に向かった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る