第16話 覇王城の安らぎ

 ルノアールの部屋はグレースの部屋からそこまで遠くない場所にある

その廊下で何人ものフリューゲルとすれ違ったがお辞儀をするだけで気軽に話しかけてくれる子は一人もいなかった


このような時だけは王にはなりたくはなかったと思うグレースだった



「どうかされましたか?」



 顔を覗き込んで来たジルニルに作り笑いで微笑み返した、みんなこんだけ普通に話してくれればどれだけ肩が軽いことかまぁこんだけ気楽に話しかけてくれるのはきっと当番だからなんだろうなぁ

 堪えたくても自然にため息が出てしまう



「ご主人様、到着しましたルノアール様のお部屋でございます」



 グレースが小さく頷くとジルニルはトコトコと走りドアをノックした




「ルノアール様ご主人様がお入りになられます」




返事を待たずにジルニルが扉を開く

本来ならば相手の返事を伺ったりするかもしれない、ましてや王ならば聞きもせず入ることだって許されるだろう

だが、これもプライバシーを尊重しての結果だ。


 開かれた扉の先で待ち受けていたのは....天国のような場所だった

そこでは6匹の猫達が戯れていた

 

獣人ではなく正真正銘の猫、その中でも一番目立つのはメインクーンだ、普通の猫よりも圧倒的にでかい、もはや神獣白虎といい勝負できそうなほどの体格だ

 その猫たちの主はいまだに寝ている少女だったで巨大な猫に寄りかかりながらすやすやと眠りについていた



「まだ寝ているようだな、まぁ寝かせておいてやるか」



 寝ているルノアールはとりあえず後回しにしてここに来た目的を実行する


年甲斐もなく猫とじゃれつく、このひと時だけは覇王なんて肩書を忘れ昔の佐藤健太という一人の人間に戻れる

昔から動物には好かれる体質でその中でも猫科だけはずば抜けて懐いてくれる、会話が成立している気さえしている


 グレースは猫のおなかに顔をうずめたり撫でまわしたりしていた。至福の時間はあっという間に2時間が経過しようとしていた




「ご、ご主人様、ルノアール様を起こしした方がよろしいのでは?」


「ん~いいんじゃないか~気持ちよさそうに寝てるんだし」


「で、ですが...もう間もなく玉座の間に集合しなければなりませんし...」


「なに!?、もうそんな時間なのか!?」


「ルノアール様を起こししますね」


「あ、あぁ頼んだ」



 ジルニルがゆっくりとルノアールに近づき初めて気づいたのが声を殺してそうな吐息だ、それはまるで何かを我慢しているような



「ルノアール様、起きてください!ご主人様が来てますよー」


「・・・・・・」



 何度言葉をかけても返事は一向に返ってこなかった




「ルノアール様‼起きてください‼.....もう、お母様早く起きてください」


「しーーーー‼」




 ルノアールからの妙な返しに戸惑うジルニルだった




「起きてたならもっと早く....」




 少し呆れているジルニルを手招きするルノアールの指示に従い耳を傾ける




「実は今....寝たふりをしているの」


「どうしてそんなことを?せっかくご主人様がいらしてくれてるのに」


「んっ....それは今っ...あの子達と体の感覚を共有してるから...」


「へっ?」


「こうして感覚を共有させた状態で目を閉じるとね...んっ...まるでご主人様が体を撫でまわしているような感覚が味わえるの」


「あ、はい...」




 察した状況に唖然となるジルニルごゆっくり~とだけ伝えグレースのもとに戻って行った



 相変わらずグレースは猫とじゃれついていた、そのじゃれつきが人の体にしたらどうゆうことになるかを想像してしまい顔が熱くなる


「ご主人様、ルノアールさまを起こすことができませんでした...」


「ん?なんだか顔が赤い気がするがどうかしたのか?」


「いえ起こすこともできない私がはずかしいなって...あ、そこは」




 思わずグレースが触っていたところを想像してしまう




「ん?あぁ猫の胸の部分て毛が柔らくていいよなぁずっと触っていたくなる」


「ですがそろそろお時間が」


「そうかもうそんな時間か」



 後ろから聞こえてくる吐息が先程より荒くなっておりご主人様に気づかれてしまうんじゃないかと思い冷や汗が流れる


(いくら優しくて寛大なご主人様でもこんなことをお母様がしてるなんてばれたら...)




「どうした?まぁルノもこう見えてしっかりしてるからな、集合時間にはちゃんと間に合うだろう」


(ご主人様それは肯定しかねます)


「じゃあ邪魔したなルノ」




 しばしの別れを告げ玉座に間に向かった



 グレースが去ったあとルノアールは一人余韻に浸っていた



「ご主人様....最高のひと時でした...やはりご主人様は小動物への愛が大きいこれならこれからもきっと

通い続けてくれるでしょう、あのアイテムを手に入れて正解でした―――」



 一人でニヤニヤした後しれっと時計が目に入る、あまりに至福のひと時だったため忘れてしまっていた、今の時間が集合時間の5分前だということに。

 圧倒的なステータスをいかして爆速で身だしなみを整え玉座の間に移動したそれもご主人様達と合わないように別ルートで。

 集合場所に慌てて向かうのを見せるわけにはいかなかったからだ。


 ルノアールが玉座の間に着いた頃にはほぼ全員の、199人のフリューゲルが既に集まっていた

 199人分の視線に少し羞恥心がこみあげてくるが息を整え自分の場所に着くと前方にいるゼルセラが呆れたように話してきた


「ギリギリ間に合ってはいるけど、もう少し時間に余裕も持った方がいいんじゃないのかしら」


「ちょっとご主人様の事で野暮用ができちゃってね」


「ルノが最後で200人全員集まったわね」


 フリューゲルは元々200そしてジルニルが生まれ201人になったそしてジルニルは当番なのでここにはいない

つまり今ここに居る200で全員が揃ったというわけだ

シーラたちも既に到着し玉座の左右に立っていた


 そして間もなく玉座の間にこの城の主が現れる

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