最強は最高にわがままな証

早乙女

序章 転生

プロローグ 死

佐藤 健太さとう けんた』どこにでも居るかはわからないが極々普通の会社員だ

特に役職があるわけでもなくただ坦々と仕事をこなす毎日を過ごしている


27歳、人によっては役職に就くだろうし場合によっては会社を立ち上げている場合だってある

それなのに俺はいまだに只の平社員だ

もちろん、嫌というわけではない会社自体も白か黒かで言えばグレーだ


上司だっていい人だ


「佐藤君、この書類明日までに確認しといて、おねがいね」


「あ、はいわかりました」


この人は西島綾香にしじま あやかさん、同い年の女性でどちらかといえば綺麗な方だ

仕事も出来るし見た目も綺麗で人生苦労してなさそうだなぁ...


正直羨ましい、俺も容姿端麗、成績優秀ならきっと俺の野望...もとい夢も叶っていただろうか

はぁ..


「おい健太!溜息ばっか付いてどうしたんだよ、失恋か?」


こいつは俺と同期の北村実きたむら みのる、俺とほぼ同じような境遇のはずなのにどうしてこいつはこんなにいつも楽しそうなのだろうか、



それになんだ「失恋か?」って失恋どころか失う恋さえこっちは持ってない、いや持ったことすらないわ!



「失恋だと思うならいい人紹介してくれよ」


「そんな相手居たら俺がアプローチするわ!」


「二人とも!そんなくだらない話してないで先に休憩でも入れたらどう?」


「ちーす」


「はい」


綾香さんのお陰で話題が変わってくれた、正直女性経験のない俺にしたら話ずらい...


「一服しに行かね?お前もたばこぐらい吸ってみろよ」


「吸わないよ、体に悪いし臭いし...」


「連れねーな―、じゃあ俺は喫煙室行ってくるわ!健太はどうするんだ?」


「俺は屋上に夕焼けでも見に行ってくる」


とぼとぼと俺は一人で歩きだした、この時間にこの会社の屋上から見る夕焼けは最高にきれいなんだ、何回みても心が溶かされるような気持になる


「あいつ、どうしたんすかね最近...妙に元気ないっていうか、もしかして好きな女でもできたのか?」


「えっ!?健太くん好きな子できたの?!」


「え?けんた...くん?」


意外な言葉に実は閃きを得た、悪者のように不敵な笑みを浮かべる


「綾香さんも何か言ってあげてくださいよ、あいつ女の人と話したことほぼ無いせいで耐性無いんですよね~」


「わかったわ!仕事に影響でたら困るし私がビシッと言ってあげるわ」



すたすたと歩いていく綾香さんは妙に足取りが軽そうな気がした




俺は会社の屋上で一人夕焼けを眺めえていた

会社の屋上は腰ぐらいの高さのフェンスに囲まれている、正直フェンスもボロボロでちょっと力を加えただけですぐに壊れそうだ

缶コーヒーを一口、口に含むブラック特有の苦みが口全体に染みていく


「夢かぁ...俺、魔王になりたいんだよなぁ、それもかわいいロリっ子に囲まれた最強の魔王に」


27歳になってもこんな夢を抱いてる俺は...厨二病って周りから笑われるだろうか...


でも叶えたい、異世界転生という夢を、


『ロリっ子ハーレムの最強の魔王になりたい!!!!』



大声を出したらかなりすっきりした、この屋上に来るのは俺くらいだから今日くらいいいよね


「慣れないことをするもんじゃないな....喉が痛い」



久しぶりに大声を出したせいで喉が痛い、しばらくは大声出すのやめとこう...


「佐藤君!なーにしてるの?」


わぁっ!! 急に話しかけられびっくりし振り返ってみるとそこには綾香さんが不思議な表情で立って居た

動揺し後ろに下がると何かが踵にぶつかりそのまま体制を崩しギリギリの所でフェンスに掴ることができた

だが、フェンスはミシミシと嫌の音たててやがては壊れてしまった



その反動で体はビルから飛び出していく



「これは死んだな...」


落ちていく途中下を見ているのは怖いので仰向けになる、綾香さんが手を伸ばしているのが見える、それじゃ届かないよ綾香さん

優しく微笑みを見せた後、あこがれた魔王のように不敵に笑って見せる



「フフッ!俺の夢はロリっ子ハーレムの最強の『』になることだ‼‼」



言ってやった、最後に、夢を、俺の叶えたかった。夢を。




やがて落下がしている感覚が止まった、ものすごい音がしたけどもう体に感覚は無かった、痛くなくて安心した...痛いのは嫌だから



薄れゆく意識の中で最後に見えた気がしたのは何かが上から落ちて来ていた事だった。




やがてこの事件は大々的に報道されることになった


「男女2名がビルから転落して死亡、その付近でトラックが歩道に突っ込み女子高生1名が意識不明の重症です。なおトラックは落下してきた男女を避けようとして歩道に侵入したようです」


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