第3話 Dead K

 ハロー相棒、このポンコツの名前はKだ。初めて日記を3日続けられたよ。キーボードのK。打つ音が心地いい。食事のメニューを書くことにして正解だった。国から支給されたベントー、一応味が書いてあったんだけど、古い表記で僕にはイチゴ〇〇という液体のパックしか読めない。甘くて美味しかった。他も悪くないけど古臭かったね。きっと期限のキレたものだろう。パックは凍ってたから解凍して、温め作業が必要だった。そんなことちょっと前まで必要なかったのに。全く不便な世の中に逆戻りだよ。おじさんからもらった原始的な火を起こすマッチは最後の一本だけど使ったよ。冷たいベントーとホットイチゴ〇〇はいつもより美味しくなった。ついでに魔法の残り火で僕に楽しい夢を見せてくれた。


 夢の内容をここに書いてしまうときっと僕を頭のおかしい人だと思うかも知れない。


 どうだろうか、これが運よく誰かの目に止まったり、この世界が滅ばずに突然救われるなんてことあるんだろうか。他の人にどう思われたっていい、そんな状況じゃない。よくもまあ2日ものんきに日記を書けたもんだよ僕は。ベントーも残り少ない。水もない。勇気をだしてまた外に出たけど誰かに出会うこともない。あのおじさんはもう死んでしまったんだろうか。僕ももうすぐか?


 いっそこの部屋で死ぬまで文章を書こうか。このポンコツは送受信ができない。ただ日記を打つだけの機械だ。僕が死んでいく記録を残すだけの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る