積もる音
神城零次
それは聞こえない音
雪国の人はアイスリンクでも革靴で転ばずに歩くことが出来る。ウソの様な本当の話だ。関東圏で初雪で転んで骨折など雪国では笑い話なのだ。
雪の積もる音を聞いた事があるとアンケートを取ると雪国でも結果は半々だろう。それは、車の音でかき消される、とか近所にドラムの練習をする子供がいる、とかではない。雪が降ると他に音がしない、積もった雪が音を吸収して、とても静かなのだ。
雪が降る描写で、シンシンと降る雪、とか言う表現あるが雪が積もる音はシンシンでは決してない。あえて描写するならカサカサ、が一番近い。
雪の状態も湿気の多い時のボタン雪や気温が低い粉雪では積もる音も少し変わってくる。どう違うかは、雪国で冬季キャンプをするのが一番だが、おススメはしない。そんなことで凍死されたらたまったものでは無いからだ。
本来雪の積もる音は聞こえない。聞こえるほど室内が静かでなければならないからだ。暖を取るための石油ストーブの音やエアコンの音でも聞こえなくなる。
ならどうするのか? 傘もささずに外に出るのだ。積もった雪を月明かりを頼りに歩き。静かな場所を求める。踏む度に雪がキュキュっと鳴るので、静かな場所で足を止め、天を仰ぎ、耳を澄ます。すると、カサカサ、カサカサと雪が擦れる微かな音が聞こえてくる。
世界に誰も居ないという錯覚に陥ることもあるが、それは決して不快ではない。雪の積もる音を聞くために外に出て、寒い思いをするなんて馬鹿げているが、案外自分がロマンチストである事を自覚する。
自分に振ってくる雪を見つめていると自分自身が上に上がっているのではないのか? そんな事を考えてしまう。それでも自分の足は一ミリも浮いていないのだが。
積もる音 神城零次 @sreins0021
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