第5話 百合の秘密の花園

「フフフッ、アナタ最高だわ!」


 セクハラお嬢様は笑い涙を拭きながら私に高評価を下した。

 後ろに控えるメイド達も腹を抱えて笑っている。

 私もう消えたい……


「愛人としてしばらく一緒に暮らすつもりだったけど、とても気に入ってしまったわ。

 アナタ、ワタシの妹にならない?」


 妹?

 私は一人っ子だったから姉妹が欲しくて、しょうがない女の子だったけど……妹って、義妹? お兄さんや弟さんのお嫁さんになっちゃうの?

 え~、どきどきぃ!

 

「ワタシと愛姉妹の契りを交わしましょう、ウフフッ」


 セクハラお嬢様はそう言いながら、私の胸の赤い突起のボタンのスイッチを押した。


「ぽちっ! と……えっ? え~~!」


「カレンダ、エルサ、テルザ、やっておしまい!」


 戸惑う私と、掛け声をかけるセクハラお嬢様。


「ハイ、お嬢様!!!」


「うぃやぁぁぁ‼︎」


 元気の良い返事のメイド三人衆と、絶叫の私。


 おそらく年長のメイドがカレンダで、私の口をタオルでふさいでそのまま縛ってしまった。

 エルサ、テルザは姉妹メイドの名前だと思われる二人は、私の両手両足をロープで縛り上げた。

 三人とも慣れているのか手際が良く、あっという間に拘束されてしまった。


「サア、アナタにはワタシ達と一緒に、清く美しく汚れた醜い男どもなんていらない清純の乙女の愛姉妹になりましょう!」


「ぶぅはっばぁ!(ちょべりば!)」


 口をふさがれて上手く喋れないけど、田舎では現役の死語を吐いて完全拒否した。


「サア、飛び立ちましょう、新しい世界へ!

 アナタを最愛の妹、最高の乙女になるための秘密の花園へ!

 皆んな、花園に連れて行ってあげて!」


「ハイ!!!」


 メイド達は私を担いで部屋から連れ出した。

 秘密の花園って……それはとても美しい所なの?


「秘密の花園……地下の拷問室を使うなんて何年振りかしら? ウフフッ」


 拷問室?


「ぱふ! ぱふぅ!(バック! バック!)」

  ***

 秘密の花園……いえ、地下の拷問室は薄暗く湿っぽくて少しイヤな臭いがした。

 私は鉄で出来た冷たい椅子に座らせられて……しかも大股を開かされた状態で拘束された。


「ウフフッ、大丈夫、痛い事はしないわ。

 ワタシの、ワタシ達の姉妹になるための儀式を行うだけよ」


「ひっ!」


 セクハラお嬢様のマアガレットは私の内腿を優しく撫でながら怪しい笑顔を見せた。


「こーしゅぽー! こーしゅぽー!(はぁ! はぁ!)」


 私の口はタオルから穴の開いたボール状の物を咥えさせられ、よだれが口から垂れるのを止める事が出来ない状態にさせられた。


「ワタシ達の姉妹になれるなんて、とても幸せな事よ。

 フフッ、アナタに天国を見せて、ア・ゲ・ル!」


 ここは地獄ですか? ここは地獄です。[自問自答]

 お父さん、お母さん、お爺ちゃんにお婆ちゃん……駄目な子でゴメンなさい。

 私……死んで地獄で悪魔に拷問を受けてます。


「うふっうふっ!(うえっうえっ!)」


 家のお手伝いをしなくてゴメンなさい。

 畑の仕事をサボってばかりでゴメンなさい。

 友達……作る事が出来なくてゴメンなさい。


「サァ、魔改造を始めるわよ」


 ロウソクに照らされたマアガレットの影がこの世のものとは思えない恐ろしい姿に写った。

 私、これからカラダの隅々までいじくり回されるのね。


 改造されて怪人一号にされてしまうんだ。

 私、この世界では人間ではなくなってしまう……

 

「ぶり?(あら?)」


 だめ! 私、そわそわしたくなっちゃう!

 腿が勝手に動き出した。

 

 私の状態にすぐ気付いたマアガレットは悪魔のようなニヤケ顔に変わった。


「アラァ、アナタ! どうやらオシッコかしら?」


 “こんこん、こんこん!”


 私は頭を縦に振って温水洗浄トイレを要求した。


「見ててあげるから思いっきりどうぞ。

 なんならワタシが受け止めてあげるわ。」


「ぶひぃ!(ひぃぃ!)」


 悪魔はド変態でした。


「恥ずかしがらないで。

 ワタシ達もアナタに見せてあげるから……すべてを。

 恥ずかしい所をすべてさらけ出す事でアナタはワタシ達の本当の姉妹、愛姉妹になれるのよ」


 その言葉を合図にメイド達も服を脱ぎだし裸になった。

 そして四人の悪魔達は私の無毛の秘密の花園を好奇の目で見つめ評価し始めた。


「キャー! カワイイ!」

「ワァ! 子供だぁ!」

「アハッ! お尻までキレイ!」

「全部ツルツルゥ! 赤ちゃんだぁ!」


 デジャブです! 脱毛美容クリニックで聞いた私への評価、そのままです。


 あぁぁ、私はいったい、どれほどの罪を犯したのでしょうか?

 この鬼のような悪魔達、餓鬼と呼んだ方が正しいでしょうか?

 四人の餓鬼の慰みのオモチャにされてしまうほど私は罪深い乙女だったのでしょうか?


「ふんがぁ、とっと!(あっ! も、漏れる、ダメ!)」


 私の危機に餓鬼どもはより目を輝かせ、しゃぶりつくさんばかりの表情で私の秘密の花園をガン見してくる。


「ぼぶっ! ぼぶっ! さっぷぅ~!(いやっ! いやっ! もう出るぅ~!)」


 ダメぇ! 私の秘密の無毛地帯が皆んなの目の前で泉が湧き出す秘密の湿地帯になっちゃう!

 絶体絶命過ぎて、意識が飛んで行きそう!


「ぴぽっ、ぴぽぉ~~‼︎(行くっ、イくぅ~~‼︎)

 ……」

  ***

 今日も天気が良くて裏庭の庭園で飲むお茶はとても美味しいです。

 裏庭の花々も良く手入れがされて、とてもいい気分にさせられます。


「お茶のおかわりはいかがですか?」


 メイドのエルサが紅茶のおかわりの用意をしてくれています。


「ありがとう、いただくわ」


 私はエルサの細やかな動きに惚れ惚れとして眺めています。

 本当はお砂糖が欲しいのだけれど、誰も紅茶に入れないので我慢しています。


 “ごっくん!”


 あっ?

 この紅茶、一味違う気がします。

 この紅茶、一味加えてあるようです。


「ふふっ」


 おそらく誰も気が付かない紅茶のワンポイント・アクセントの味に気が付いた私は、にこやかな笑顔でエルサに答えます。


「エルサ……この紅茶、しそが入っていてとても美味しいわ」


「いいえ、ユリお嬢様、この紅茶には薔薇のエキスが入っています」


「あら、そうですか……」


「はい……」


 会話は止まり沈黙が続く中、見つめ合うふたり……


「ほほほほほっ」

「フフフフフッ」


 “じゅるじゅる!”


 あ~美味し……

 私は再び紅茶をすすり、エルサはそんな私を優しく微笑んで見守ってくれます。


「ユリ、ここに居たのね」


 うしろから私を呼んだのはマアガレットお姉様です。


「マアガレットお姉様、お先にいただいておりましたの」


 私の隣にマアガレットお姉様が座り、一緒に午後のティータイムに加わりました。


 ユリ……そう私の名前は、神代 百合……ここではユリ・カミシロです。

 でも今はマアガレットお姉様の妹になったのですからユリ・リボンヌと名乗った方が正しいのです。


 元いた地球でトラクターに轢かれて私は死んでしまったみたいです。

 それを猫のみゃー助がこの異世界に転移してくれたみたいです。

 みゃー助は異世界転生って言っていましたのだけど、これって異世界転移ですよね。

 ほほほっ。

 凄い力を持っているようですけれど、しょせんはただの猫です。

 転生と転移、間違えるのも仕方ないですね、ただの畜生ですから。

 ほほほっ。


 この異世界は中世ヨーロッパ風な世界みたいですから、スマホやゲームがないばかりか漫画もなく、優雅に退屈しています。

 ただ私の地球と違うのは“ざまぁ”という摩訶不思議な力が使えることです。

 そう、私は“お嬢様”と悪役令嬢”そして“ざまぁ”の乙女ゲームの恋愛シミュレーションゲームの世界にいるのです……たぶん。


「フフッ、この生活に馴染めそうかしら」


「はい、お姉様。

 お姉様とカレンダさん、エルサやテルザのご寵愛のおかげですわ」


 太陽光線で光り輝く金色の髪は眩しく、さらにマアガレットお姉様の美しく輝く笑顔もとても眩しいです。


 エルサが微笑みながらお菓子を用意してくれました。


「サア、お召し上がり下さい。

 ワタシの自信作です」


 ハチミツがたっぷりかかったビスケットのようです。

 私、美味しいものには目がありませんことよ!


 “あ~ん、ばぐ、ばぐ!”


「マア、ユリお嬢様!」


「フフッ、ユリは野生児ね」


 この異世界に来てから、あっという間に一週間が過ぎました。 

 森で意識のなかった私はベットの中で三日間、拷問室で魔改造を施された二日間、二日目に気を失って丸一日またベットで過ごしていました。

 それからニ日立ちまして今日、私は姉妹達と幸せな日々を迎える事が出来ました。


 昨日の朝、改めて自己紹介していただきました概要はこうです。


 まずは隣に座っているのが私のお姉様マアガレット・リボンヌです。

 この地域一体を仕切る領主で、両親は亡くなったらしくメイド達と四人でこの屋敷の主人として暮らしているみたいです。

 歳は私より二つ年上の二十歳で難しい仕事もひとりで行なっているらしいのです。

 私の次に迫る容姿の持ち主で何事にも積極的で、私を見つけるとグイグイ襲って……いえ愛してくれます。

 ちなみに貴族クラスは子爵だそうです。


 メイド長のカレンダ・ヨゥビィはさらに二つ年上の二十二歳で、フルイアというメイドがいなくなったあとから仕えているみたいです。

 礼儀正しくて素敵なお姉さんです。

 ですが私と二人っきりになるとハンターに変貌……いえ手取り足取り教えてくれます。


 エルサ・ヤッセーノとテルザ・ヤッセーノ、二人のメイドは本当の姉妹で、エルサは十六歳、テルザは十五歳だそうです。

 二年前、マアガレットお姉様が一目見てすぐに気に入りメイドとして雇ったそうです。

 エルサは大人しめでテルザはヤンチャな、とてもカワイイ姉妹です。

 二人ともスキンシップが激しくて身体が保ち……はい、身体が保ちません。


「ユリ、お菓子が頬に付いてるわよ」


 そう言うとお姉様は私の頬に付いたお菓子のカケラを自分の口と舌で綺麗に舐め取ってくれました。


「マァ、マアガレットお嬢様ったら! はしたないですよ」


 エルサが呆れ顔で微笑んでいます。


 あれ?


 もうお菓子はついてないはずですが、お姉様は執拗に口の周りを舐めまくっています。


 あれ?


 やっと口から離れてくれたお姉様は私の唇をまだ舐めたそうに見ています。


「ユリ、こんな可愛い子がワタシの妹になってくれて、とても嬉しいわ」

 

 あれれ?


「どうしたの? 元気がなくなったみたいだけれども……」


 私の顔が曇ったのを感じ取ったお姉様は心配そうに顔を眺めてます。


「い、いえ……す、少し日に当たり過ぎたみたいですわ」


「マア、大丈夫なの?」


 お姉様は私の頬に優しく手を添えて、今にもまた唇を奪うかの表情で心配してくれます。


「え、ええ、少しお部屋で休みます」


 私は席を立ち、自分にあてがわれた部屋に戻ろうと急ぎました。


「ワタシが付き添います!」


 エルサが心配そうに駆け寄りましたが断りました。

  ***

 “バタン!”


 部屋のドアを閉めて倒れるようにベッドにダイブした。


「私の名前は百合ですが、百合ではありません!」


 たった今、魔改造という名の洗脳から生還を果した。


 恐ろしや恐ろしや!

 地下の拷問室での百合洗脳から今、目覚めた。

 そう私は神代 百合! 大学生でノーマルだ!

 危ない、すっかり悪の一員として大活躍してしまう所だった。


 確かに姉妹皆んなから愛されるのは嬉しいけど、その先にはエロスが待っている。


 拷問室での魔改造という洗脳から今日の午後のティータイムまでの出来事が、急に鮮明に思い出された。


「泡わわわ……」


 愛姉妹から受けた数々の行為が色鮮やかに……ピンク色で蘇ってくる。

 皆んなにチヤホヤ、モミモミ、ナメナメされた……まさにサバト[魔女の狂宴]の生け贄の私。


「ああ~何枚だぁ、何枚だ!」


 ああっ、皆んなと裸であんな事やこんな事を……思い出しただけでカラダが熱くなってくる……


 “ぽっ!”


 いいえ、大事なのはこれから! 今の私はノーマルに戻ったのですから!

 やんわり拒否れば大丈夫! あんな連中、私なら上手くかわせるわ!


 しかし、衣食住だけは心配ないけど……これが私の異世界転移物語なの?

 ここはエロエロの百合百合のセクハラファンタジーゲームの世界?

 いえいえ、この先には夢のようなハッピーな展開がきっと待っている!


 そのために気を引き締めていかないと……決して浮かれてはいけないと、私は固く強い決意で彼女らに挑むことにした。


 “コンコン!”


「ユリお嬢様、お食事の用意が整いました」


「はぁい!」


 カレンダが呼びに来てくれた。

 カレンダが作る食事が美味しくてたまりません。


 るんるん!

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