第2話 百合のざわわ!
私はなんだか分からない空間に飛ばされた。
「転生にあたってお前にある力を与えよう」
「ある力って?」
“ピカぁッ!”
突然、みゃー助の目が光った。
「眩っ!」
目が痛い。
私はまさかの不意打ちを喰らった。
危険です、いきなり眩しい光を当てるなんて!
「これでお前は向こうの世界に行っても、生きる事に苦労しないであろう」
そう言われても自分の身体に変化がないのだが?
身体を触ってみても変化は見られない。
急なフラッシュで目の調子が悪いだけだ。
なのでクレームを吐いてみた。
「みゃー助にそんな力なんてある訳ないわ!」
「みゃー助ではない、シャアァ!」
「きゃん!」
またもや、みゃー助に威嚇されてしまった。
どうやらクレームには応じる気はないみたいだ。
「もしもの時が来たら“ざまぁ”と叫ぶのだ」
「……ざまぁ?」
私は首を傾げた。
意味不明だからだ……いえ、このすべてが理解不能だ。
「さあ、行ってらっしゃい……ニャン!
ゴロゴロ~ゴロゴロ~」
“クルクル~クルクル~”
世界がクルクルして目が回るぅ!
私の目も回るぅ!
「泡わわわ!
行くぅ! 異世界にぃ〜行、行、イくぅぅ~‼︎」
…………
***
「眩しいなぁ……」
窓ガラスから優しい光が差し、日差しで煌めく白いシーツに包まれて……自分がベットの中で安らいでいるのを感じる。
日差しが眩しいので、空が晴天であるのが分かったので二度寝することにした。
休日はだいたい二度寝がルーティンだからだ。
それに太陽光線は肌に良くないから外出禁止。
シーツに顔を埋めた。
普段使ってる自分のベットと違う感じがしたが、なにか暖かい温もりに包まれて子供の頃に戻った気分で寝心地がよかった。
そのまま寝返りを打とうとして身体を動かしたが、なにかが邪魔をして上手く動けない。
「?」
この暖かい温もりは……
あっ、私……なにも履いてない?
ベットの自分は裸であった。
今まで裸で寝た事は一度もなかったので気分は、どっきどき!
あれ、背中になにかある?
その存在が暖かくて気持ちいい理由かも知れない。
そして裸の自分と同じ感触があった。
「えっ?」
背中の柔らかい物体がもぞもぞと動いてる!
謎の生命体UMAの触手? いえ、これは人間の手?
こ、怖い……怖すぎる!
私はじっと動かず死んだフリをして、やり過ごすことに決めた。
その手は私の身体とベットの間から脇腹を這って……私の胸に!
もう一本の手が私の身体と上のシーツの間から私の脇腹を這いながら……私の大切な秘密のトコロを……
「いやっ!」
私はすぐさまその手を払い除け、ベットから飛び出した。
やっぱり自分は裸だ!
そしてベットの方を見た。
ベットのシーツはもっこりしていて、明らかに生命体がいることが分かる。
「な、な、な、な、な?」
なになになになにな? 恐怖で言葉が出ない。
シーツの中で、それが軟体生物のようにうごめいた。
「ひ~! 何枚だ~何枚だ!」
恐ろしくなった私は目をつぶって、手を合わせて除霊モドキで追い払おうと拝み倒した。
“バサッ!”
ベットのシーツが天使の羽根のように舞い上がった。
「プファァイ!」
キラキラと金の糸が舞った。
太陽光線の反射であったが、それ自体が光を放っているかのように私には感じられた。
「眩しぃ……」
ベットの中からキラキラと輝く長い金髪の若い女性が現れた。
彼女も裸だった。
私のような北方モンゴロイドではなく、コーカソイドの白人のようだ。
彼女は上半身を起こし目を擦りながら、こちらに笑顔を向けた。
私より少し大きめの胸を恥ずかしげもなく、さらけ出したまま。
「オハヨウ」
「ぎょえっぴ‼︎」
彼女は綺麗な日本語で朝の挨拶をしてくれたので、私は驚きのあまり奇声で返してしまった。
だって知らない女性とベットインしてたなんて衝撃的! しかもお互い全裸で刺激的!
違う……今まで出会ったことのない美しい女性が目の前に現れ、感動のあまり声が変になったの。
彼女はマジマジと私の身体を見てる。
私の裸を舐めるように見てる気がするけど気のせいよね。
私は混乱して裸を隠すことも忘れ、この状況を理解するための質問した。
「わ、わ、わ、ど、ど、ど、な、な、な?」
私は今どこにいるんですか? なぜ裸なんですか?
突然の事で上手く喋れない。
「アナタ、森の竹林で裸で倒れていたのよ」
えぇ! 屋外でぇぇ! しかも裸でぇぇぇ!
「それでワタシの屋敷に連れて来てしまったの」
「た、た、た、く、く、く!(助けてくれたのですね!)」
自分が裸なのは分かったけど、なぜあなたも裸?
「あれから3日も寝込んでいたのよ」
え~、そんなにぃ!
「あ、あ、あり、が、が!(ありがとうございます!)」
「フフッ」
彼女はニッコリ微笑むとベットから降りて、こちらへ向かって来た。
やはり下も履いてない全裸の姿で、それがごく自然のコトのように堂々と立ち振る舞う姿に、こっちが恥ずかしくなるくらいだ。
それにしても……均等の取れた体型に白人らしい白く透き通った肌、少しカールが掛かった光り輝く金髪、そしてなにより上品で気品あふれる整った顔には、まだ若そうなのに強い意志のようなものが感じられた。
そう、私が好きな乙女ゲームの小説の誰もが憧れる主役級お嬢様そのままの優雅で気高さが彼女にはあった。
「カラダの隅々まで調べたけど、どこにも傷がなくてよかったわ。
フフッ……隅々までね」
「?」
「森の中で裸で倒れていたから、男共になぶり物にされたかと思ったわ。
それで大きく広げて隅々まで見たの……
フフッ、傷ひとつなかったわ。
嬉しいわ、産まれたままのとても綺麗で清純で……とても可愛かったわ」
「??」
それって……まだ誰にも見せたことのない私の大切なトコロを、全開にして隅々まで……
「うぃやぁぁぁ‼︎
ぎょえっぴ! ずぅどぉるぴぃ‼︎」
あまりの恥ずかしさで私は奇声をあげながら両手で顔を隠して、しゃがみ込んでしまった。
私の行動に驚いた彼女は駆け寄って私の両肩に手を置いて、いたわるように優しく語りかけた。
「やっぱり怖い目に遭ったのね」
いえ、あなたが私の大事なトコロを……
いえ、私が悪漢に襲われたと思って身体の隅々まで調べてくれたんだわ。
それを彼女にイタズラされたと勘違いして……きっとそうに違いない。
彼女は顔を覆った私の両手をゆっくり解いて、ニッコリ笑みを投げかけてくれた。
それから頭を優しく撫でながら私の耳元で呟いた。
「もう大丈夫よ、ヨシヨシ」
あぁ、頭を撫でられたのは十年以上前の事……なんだか子供の頃に戻ったみたい……
「アナタ、ソノ……聞いて良いかしら?
身体中の体毛がないのだけれど……生まれつきなのかしら?」
「ぎょえっぴ……」
最近できたトラウマだ。
私は泣きそうになり、彼女に寄り添って身を委ねてしまった。
「ごめんなさい……イヤな事を聞いたわね」
彼女は私の背中に手を回し、優しく抱き締めてくれた。
同い年くらいの女性と初めて抱き合った。
しかもお互い裸で……
「いい子……」
彼女の体温が上がり汗ばんできたのが、直接私の肌で感じられた。
あぁ、良い香りがする。
“くんくん!”
それは彼女の体臭であった。
その匂いは選ばれし高貴な匂い……薔薇のような香りだ。
なんて素敵な香り……彼女は本物のお嬢様なんだ……
どこか憧れていたお嬢様に抱擁された私は少し興奮して彼女の背中に手を回し、さらに密着してしまうほど大胆になった。
「フフッ」
それを感じた彼女はより強く私を抱きしめた。
それとともに私の胸のなにか硬い突起がふたつ当たった。
それから背中に回した彼女の手が私の身体を優しく撫で始めた。
その手は徐々に下に降りてきて、私のお尻を揉み始めた。
“びくっ!”
「えっ⁉︎」
彼女の手の動きに私の身体が過敏に反応した。
「動かないで!」
彼女のまさかの命令形で私はビビって素直に従った。
マッサージ? これも私の心と身体を癒すため?
「そう、そうよ……されるがままにしなさい」
彼女は艶のある甘い声になり、ヒップの揉みくだしは強くなった。
変! このマッサージにはリラックス効果は得られず、なんだかむずむず、うずうずする。
「あんっ!(このマッサージ、気分が上がるわ!)」
私は血行が良くなり、体温が高くなって汗ばんで来た。
私は一刻も早く安らぎたいのに身体はざわついてる。
「可愛い……ハァ……アナタ、可愛いわ」
声が荒々しくなった彼女は明らかに興奮してるのが伝わる。
調子に乗った彼女の指が、私のお尻から私の中心に向けてツツ〜っと……
“びくびく!”
「うぃやぁぁぁ~‼︎」
私は悲鳴と共に彼女を払い除けた。
おかしい……この人、絶対おかしいわ。
これってチマタでいうトコロの性感マッサージ?
彼女は優しい笑顔から、険しい表情へと豹変した。
「アナタ、帰る場所はあるの? 裸のまま外に出られるの?」
「うっ!(裸は流石にイヤ!)」
ひょっとしてあなたが脱がしたんじゃないの?
「ここに居れば食事も寝る場所も用意してあげられるわよ」
「うっうっ……(それは有難いけど……)」
「ワタシの言う通りにしていれば、なにも困らないわ」
そう言って、また私に近付いて来た。
“ぞぞぞ!”
私はどうする事も出来ず、子鹿のように可愛く怯えるだけ……
「心配しないで……」
彼女は優しい笑顔に戻り、私の前髪を優しく撫でた。
そして私の顔にかかった髪を退けて頬を撫で始めた。
「アナタ、本当に可愛いわ。
肌がとっても綺麗で、シミひとつない」
それは家の畑仕事を手伝わず、部屋にこもりっきりで日焼けしなかったから……
彼女は私のアゴに指を置きクイッと持ち上げた。
彼女の顔がすぐ目の前に。
透明で透き通るような白い肌、高価な金糸よりも高価に感じる金髪、そしてすべてを魅了する魔力を持つ青い瞳……
「ワタシに身を委ねたら……とってもラクになるから……ね」
彼女の顔が私の顔に近付いてくる。
彼女の艶やかな色気と甘えたな幼さを同時に感じさせる唇が近付いてくる。
「?……!」
彼女は私の唇に唇を合わした。
「んんんっ! んんっ!」
初めての経験なので、なにがなんだかワカラナイ
……されるがママの私……
私の唇を彼女の舌で無理矢理開かされ、その舌が私の口の中に……彼女の舌が私の舌に絡み付いて……
「ンハ~ッ」
彼女の息が私の口の中に広がって……頭がぼ~っとする。
全身の力が抜けていく……
目が自然に閉じて彼女にされるがママ……なんだか……私……私……
「はぶっ!」
私は彼女を力一杯振り飛ばした。
「はぁ、はぁ!」
でも自分の身体が思うように力が入らず、唇を離すので精一杯だった。
震える私は、彼女から離れたくて身体を無理に動かし後退りした。
「は、初めてだったのに~!
だ、大事に取っておいたのに~!」
私は震える心の声を精一杯絞り出し、彼女にクレームを吐いた。
泣き出しそうになった。
いえ、もう目から涙が流れていた。
「アラ、それはご馳走様」
彼女は口を押さえていたが目は笑っていて、とても喜んでいる。
私の初めてを奪ったオンナ……
私の純潔を汚したオンナ……
「て、て、敵だ……あ、あなた、敵だ!」
「フフッ、なら、どうするつもり?」
彼女は余裕のある表情で立ち上がり、私を見下すように微笑んだ。
どうしよう……自分にはなにも対抗できる手段がない。
今までの人生、なにもしてこなかった。
学校以外は、家で本を読んだり、スマホいじったり、たまに絵を描いていたくらいで……
私の人生って……あぁ、ネガティブキャンペーンで考えがまとまらない。
“泡わ、わー!”
頭を押さえ首を振ってテンパってたその時、頭の中でみゃー助の声が聞こえた気がした……『もしもの時が来たら“ざまぁ”と叫ぶのだ』……今その、もしもの時だ!
私は彼女に向かって大声で叫んだ。
「ざわわ!」
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