第10話 練習の約束




「じゃあ、今日の練習はこれまで!次の練習は火曜日にホールで、あ、あと練習がない日でもホールは使えるから自主練とかしたい人はどうぞ使ってください。あ、あと今からホールをユーフォのレッスンで使用するので残って練習したい人は裏の控え室かホワイエでお願いします」


ミーティングが終わりそれぞれ楽器を持って楽器を片付けたりするためにホールの下手に向かう。


「あの、ゆめみん先輩…えっと、授業の空き時間が被ってたらでいいんですけど一緒に練習していただけませんか?」

「え、私なんかでよければいいけど…うーん、月曜日の一限、二限とか空いてない?」


一瞬、何で私!?みたいな表情をされた気がしたけどすぐに笑顔に切り替えてそう答えてくれる。及川さんの方が教え役としては適役じゃない?と言いたそうな表情だったけど、僕は…僕がチューバを吹きたい。と思えるきっかけをくれた人に教わりたかった。


「あ、えっと一限は空いてますけど二限は授業が…」

「じゃあ、月曜日の一限の時間にやろうか、ごめんね。明日は一限から四限までずっと授業で練習できないけど…」


去年までは合奏研はホールを自由に使えていたようだが今年から月曜日・水曜日・金曜日は午後四時から七時まで他のサークルや部活が使うためその時間帯は練習出来なくなってしまったみたいだ。四限が終わるのは午後四時半、故にすでにホールは使えない時間となっているのだ。


「いえいえ、じゃあ月曜日お願いします」

「うん。わかった。頑張ろうね」

「はい。よろしくお願いします」


僕はゆめみん先輩と月曜日に練習をすると約束をして楽器を片付けようとしたその時だった。


「突然ですみません。ユーフォのレッスンを見てくださっている先生が全体の練習を見てくださるそうなので時間がある方はもう一度楽器を出して舞台に集まってください」


あーちゃん先輩の声に対してあちこちから様々な声が上がったが仕方がないので楽器を持って全員が舞台に集まる。


今回は及川さんも楽器を持って僕の横に座っていた。ゆめみん先輩が客席に一番近い場所で隣に僕、その次に及川さんが座っている。


「りょうちゃん、せっかくだからハンバーグ使ってみて」


ゆめみん先輩がそう言いながら僕の座る椅子の前にチューバスタンドをおいてくれる。


「高さの調整するからチューバ構えてみて」

「わかりました」


僕はチューバを持ち上げてチューバをチューバスタンドの上に乗っける。するとゆめみん先輩が僕に合わせてチューバスタンドの高さを調整してくれた。


「これくらいで大丈夫?」

「はい。大丈夫です。ありがとうございます」

「どういたしまして。じゃあ、頑張ろうね。わからないことがあったら及川さんか私に聞いてね」


ゆめみん先輩は笑顔で僕にそう言って僕の隣に座りチューバを構えた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る