『ベン。貴方にはいろんなことを強いてしまうわ、ごめんなさい』

「構わないさ。俺の平穏と君の復讐、どんなこと為してでもやり遂げるつもりだ」

『……ありがとう……なら、まずはここに向かってもらうわ』


 そんなやりとりをしたのは、すでに数時間前。

 今の俺は、大量の悪魔と対峙をしながら、その目的の場所へ向かっている。


「邪魔だ!」


 右手のデーモンテックのピストルが火を噴けば、眼前に群がる最下級の悪魔たちの体や頭が吹き飛び、ものの見事に血の噴水装置と化す。

 左手の、新たに入手した二連水平ショットガンの排莢を行い、流れるように装填しすかさず撃ち尽くす。下級の悪魔は最下級と違い多少根性があるのか、ピストルだけでは殺しきれない。

 そんな折に敵が持っていたのが、このショットガンであった。

 こちらも当たれば文字通り『痛い』のであるが、それは致し方ない。

 倒せば、相手の弾丸を奪えることも相まって、積極的に殺傷を行っている。

 ワイシャツと藍色のジーンズが、頭からつま先が、既に血と臓物まみれであった。

 それでも、止まるつもりはない。

 奴らを根絶やしにするまでは、止まるわけにはいかない。

 ここら辺の悪魔は一通り倒せたのか、おかわりが来る様子もない。俺は近場の肉の塊に身を隠しながら武器の状態を確認し、一息ついた。


『……ベン、聞こえる?』

「シィか。あと少しで到着する、心配は必要ないぞ」

『大丈夫、あなたのことは信じているから、心配はそこまでしてないわ……それよりも、そのピストルは問題なさそう?』

「ああ、こいつは有難いぞ。弾切れもしない、威力も申し分ない」

『そう……よかったわ』

「このピストルは、いったい何のために作られたんだ?」

『それは、ごめんなさい。また話すわ、今は……』

「目的の遂行が先か、わかったよ」

『ごめんなさい。それじゃあ、また連絡を入れるわ』

「ああ」


 シィの声は聞こえなくなった。

 今、彼女は秘密基地と呼ばれる場所で、俺に指示を飛ばしている。

 残念なことに、彼女は戦える悪魔ではないと、正直に話してくれた。

 共に戦えると勝手に思っていた俺は、少しだけ肩を落とした。悪魔と共闘なんて、そうそうあるものではない。

 ただ、この状況も決して悪い気はしない。

 少しだけ昔を思い出して、懐かしめる。

 昔と今が違うと言えば。


 相手が人ではなく、悪魔だということだけだった。

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