第47話 だから勝手に話を進めるな
俺達も各々武器を持ち身構え、リネットは男達から目を離さずマリィと話す。
「あの髭のおっさんと知り合いみたいだけど強いの?」
「知り合いというほどではない。こっちに着いた途端やつに襲われただけだ。あの時はあまりやる気がない感じだったから、実際どのくらい強いかは分からん」
二人が話してるとバサラがいきなり襲いかかってくる!
あまりの速さにマリィは一瞬反応が遅れるもすぐに防御体勢を取る。
俺は直感的にこの攻撃は危険だと判断して、マリィを庇うようにガレットから貰った剣で攻撃を迎え撃つ。
キンッ! と金属がぶつかり合う音がして腕に重たいものを受ける感触が伝わる。
足元に大きな爪痕が地面に刻まれているのを見るに木剣では受けきれなかっただろう。
「ほう? 今ので一人殺ったと思ったんだが、よく受け止めたな」
「お前達は不意討ちが好きみたいだからな。お前もエイドの仲間なんだろ?」
「あんなクソ雑魚と一緒にするじゃねえよ。いいぜ、じゃあ正々堂々と戦ってやるよ」
バサラは右手を広げ口元だけニッと笑う。
「起きろ鬼虎ぁ! お前の好きな狩りの時間だ!」
そう叫ぶと装着されたブレスレットが光を放ち、バキバキと音を立て異形の姿形へと変貌していく。
右腕だけどす黒く人間のものではなくなり、指には大きな爪が生えている。
「俺の相手はそこの青いのと黒いのだ。せいぜい頑張……!」
バサラが言い終わらないうちに一発の銃弾が放たれる。
それをバサラは異形の右手で軽く弾き返しマリィを見据える。
「……不意討ちは俺達の専売特許なんじゃなかったのか?」
「先ほどのお返しだ。ソウタ、お前はサーシャを守れ。こっちをさっさと終わらせるからそれまで粘れ」
俺はマリィの言う通りにしてサーシャの元に走る。
フィオは手に刃の付いたトンファーのを両手に装着してバサラに向かっていく。
「面白い武器だな……。お前、エスプリマを使えないんだってな」
「これブレードトンファーっていうんだって! イデアルム出来てないけどこれがあれば十分だからね」
「十分……ねえ。死んだ後にでも後悔するんだなガキ」
バサラはフィオに異形の手を振り下ろす。
フィオはそれを片手で防御し、もう片方のトンファーを攻撃する。バサラはブレードをかわしながら回転蹴りでフィオを吹き飛ばす。
その後すぐ追撃しようとするが、銃弾が飛んできてそれを中断させられる。
バサラはうざそうな顔をしてフィオからマリィに攻撃を移す。
急速に距離を縮めて「貰った!」と右手でマリィの体を手刀で貫く。
が……確かに当たったはずのマリィの実体はそこにはなく少し驚いて周りを見渡す。
「妙な技使いやがって! どこに行った! 」
「ブリエットプリュイ」
どこからともなくマリィの声が聞こえ、空から輝いた大量の弾が降り注ぐ。
「上か! しゃらくせえ!
光弾に向かって手をかざすと手のひらから衝撃波が発生し、弾が散らばっていく。
「降りてきたところを仕留めてやる!」
バサラが着地地点に狙いを定め待ち構えていたら、先ほど蹴りで飛ばされていたフィオがフォローするように攻撃を仕掛ける。
トンファーを回転させ刃先を胴体に突き刺そうするが、異形の手で掴まれてしまう。
バサラはニヤッと笑い、そのまま持ち上げて地面に叩きつけようとする。
しかし、フィオは持ち上げられた状態で素早く顎に蹴りを繰り出す。
バサラはそれを避けるが少しかすったらしく、体が仰け反らせ手を離す。
「……貴様等中々面白いじゃないか。うまく連携も取れている。だが、この程度じゃ俺には届かないぜ!」
バサラは嬉しそうして再び二人に攻撃を開始する。
「向こうさんは始まってるみたいだな……」
フレッドは三人の戦いを眺めながらそう呟く。
攻撃をしてくる様子はないが木剣を握り警戒をする。
リネット達も武器を身構えたまま、相手の動きに注意を払う。
「これが最後通告だ。サーシャ、君が知ってることを話す気はないかい?」
「いいえ! 例え知っていてもあなた方に話すことは何もありません!」
「そうよ! 人に聞く前にまずあんた達が何を企んでるのか言いなさいよ!」
フレッドは残念そうにそれを聞き、静かにエスプリマを発動させる。
「祈れ……煉獄」
フレッドのブレスレットが光を放ちながら刀の形になっていく。
「それがあんたのエスプリマって訳ね……。あんたには聞きたいことは山ほどあるから必ず倒すわ!」
リネットが先に動いてフレッドに斬りかかっていく。
フレッドは片手にポケットを突っ込んだままだが軽々とその攻撃を捌く。
「ははっ。元気なお嬢さんだ。でも、おじさんには勝てないよ?」
「それはどうかしら?」
リネットは少し距離を置いて短剣を前に突き出すと無数の青い羽根が出現する。
「エルフラッシュ!」
リネットの掛け声と共に青い羽根は一斉にフレッドに襲いかかる。
姿が見えなくなるくらい青い羽根に覆われたフレッドを見て、リネットは勝利を確信する。
「口ほどにもなかったわねおじさん。止めめを刺させてもらうわ」
リネットが止めを刺そうと走り出した瞬間、フレッドを覆っていた青い羽根が全て吹き飛ばされて宙を舞う。
「いやはや、こんな芸当を見れるとはね」
フレッドは覆われた青い羽根を一蹴して、中からニコッと笑い出てくる。
「あの攻撃をまとも食らって無傷なんて……そんなこと……」
リネットは攻撃した相手に疑問を抱き、短剣を構え直す。
それを見ていたサーシャもリネットの援護をする。
「彼の者に大いなる翼を授けん。エル・グロワール!」
サーシャがリネットに向けて言葉を発すると、リネットの背中に光り輝く青い翼が生える。
「ありがとう姉さん! 一気に片を付けるわ! クーデール!」
背中の青い翼が羽ばたきリネットは空高く飛翔する。
二本の短剣を前に突き出し、自身を一本の矢と化してフレッドに突っ込んでいく。
「これで終わりよ!」
だが……高速で落下してくるリネットを、フレッドは避けることなく片手で払いのける。
弾き飛ばされたリネットは落下の衝撃もあって、地面を勢いよくゴロゴロと転がっていく。
かなりの距離を転がりようやく止まるも、起き上がれずかろうじて顔を上げる。
「片手で……。私より強い人はいるでしょうけどそんなレベルじゃないわ。一体なんなのよこいつ……」
リネットが驚きを隠すことが出来ない様子でフレッドを見る。
そんなリネットをよそにフレッドは片手をポケットから出して腰に当てる。
「君達では俺に勝てないのは理解したか? もしまだ少しでも希望を持っているならすぐにでも捨てた方いい」
フレッドは話をしながらゆっくりとサーシャの方に歩み寄っていく。
この状況は良くないぞ! せめてあの二人が帰ってくるまで時間を稼ぐんだ!
「向こうは少し手こずってるようだ。あの二人も逸材ではあったがやはり殺すしかないだろうな。どうするサーシャ? 君が大人しく俺と来てくれるなら考えてもいいが?」
サーシャは諦めた様子でフレッドの条件を飲む。
「……分かりました。あなた達の言う通りにしますから、他の仲間には危害を加えないで下さい」
「いい子だ。善処しよう」
サーシャに笑いかけて手を伸ばそうとするが、俺はその腕を掴んでフレッドを睨み付ける。
「ちょっと待てよおっさん。俺のことは無視か?」
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