幕間3 伯爵令嬢は隣国王子が嫌い?※エミーリア視点
「エト様の事、そんなに嫌いなの?」
教室に戻りながらエリーザに問いかけると苦い顔を向けられる。
嫌いなのね。
「嫌いっていうより苦手なのよ。あの人、人の気持ちを考えないところがあるじゃない」
「そんな事は…」
ない、と言おうとして口を閉じた。
クリスと婚約する前に散々追いかけ回されていた事を思い出したからだ。それに例のデート対決に関しても私の気持ちを考えずに決めていた。
あれに関してはクリスも悪いけどね。
エリーザは「ほら否定出来ないじゃない」と言ってくる。
「でも、悪い人じゃないと思うけど」
「悪気がない分たちが悪いのよ。おまけに隣国の王子様だから無碍に出来ないし」
さっき無碍にしていたと思うけど。
エリーザの中では違うのだろうと苦笑いで誤魔化した。
「エトムント殿下、またビューロウ伯爵令嬢を探していたらしいわよ」
「相変わらず仲良しなのね」
「いつ婚約発表されるのかしら」
エトムント殿下とエリーザの噂をするのは隣のクラスのご令嬢達だった。
最近よく耳にする話題だ。
ただ彼女達の場合は二人の事を肯定的に捉えているのでまだ聞く事が出来る。しかし二人の関係を認められない人達の会話はエリーザへの罵りが大半なので聞くに堪えない。
大切な友人の事なので罵倒台詞が聞こえた時点で注意をさせてもらっている。
ふと隣から殺気を感じてエリーザを見ると無表情で一点を見つめていた。
「噂が落ち着くまでは近寄らないって約束してくれてるのだからそのうち落ち着くわよ」
「だと良いけどね。エトムント殿下が近寄らなくなったら今度は捨てられたのねって言われるわよ」
否定出来ない。
自分の時も思ったが噂とはかなり厄介なものだ。
「くだらない噂を掻き消すような話題を誰か作ってくれないかしら」
「難しいでしょうね」
「分かってるわよ。ちょっと言ってみただけ」
深く溜め息を吐き落ち込む友人の背中をそっと撫でてあげると小さな声で「ありがとう」と聞こえてくる。
どうにかして元気づけてあげたいけど…。
何か出来る事はないかと考えたところでいい事を思いついた。
「今度のお休み、町に行ってスイーツ巡りしましょう」
「愛しのクリストフ様とお出かけしなくて良いわけ?」
クリスとのお出かけも大事だけど、今はエリーザを優先してあげたい。
気にしなくて良いという事を伝えると「じゃあ、行こうかしら」と返される。
「全部リアの奢りね」
「仕方ないわね」
「冗談よ。気遣ってくれてありがとう」
どういたしまして、と笑った。
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