第17話 幼馴染王太子とお出かけ①
「やぁ、リア」
クリストフ様との待ち合わせ場所である大時計前に行くと爽やか笑顔で出迎えられた。
「お待たせしましたか?」
「いや、全然」
本当だろうかと視界の端に見える彼の護衛を見れば首を横に振られる。
どうやら待っていたらしい。
「遅れて来るくらいで良かったのですよ?」
「リアを待たせるなんて出来ないだろ?」
もう良いから行くよと手を引っ張られる。
前を歩くクリストフ様を見て、幼少期の事を思い出した。
場所は王城内と限られていたが、クリストフ様は私の手を引いて様々な場所に連れて行ってくれたのだ。
「どうしたの?」
「少しだけ昔の事を思い出していました」
「ああ。昔はこうやって手を引っ張ってあげてたね」
「はい」
「なら今日くらいは昔のように過ごそうよ」
それは許されるのだろうか。
そう思ったが昔の事を思い出していたせいか彼からの申し出をすんなりと受け入れることが出来た。
「不敬罪で捕まえないでね?」
「俺がそんな事をすると思ってるのか?」
「まさか」
呆れた顔で言われるので「冗談よ」とくすりと笑ってみせる。
「全くリアは俺を揶揄うのが好きだな…」
「失礼な事を言わないでよ」
「昔はよく俺を弄んでいたくせに」
「ちょっと人聞きの悪い事を言わないでよ」
昔から私を揶揄って遊んでいたのはクリストフ様の方だった。
隠れんぼをしていたくせに彼を探していた私の後ろをついて回ったり、わざと私の嫌いな物をお皿いっぱいに乗せて「プレゼントだよ」と言ってみたり。
よく考えたら酷い事をされていた気がする。
「私を揶揄って弄んだのはクリスの方でしょ」
「そりゃ好きな子は苛めたくなるだろ」
「なっ…」
「リアの気を引きたくてやっていたんだ。悪かったと思ってるよ」
急に好きと言われると反応に困る。
赤くなった頰を隠す為に俯いていると覗き込んでくるクリストフ様がいた。
私の顔を見るなり「真っ赤だな」と笑う彼の肩を押して距離を取る。
「少しは俺を意識してくれているのか?」
「何度も好きだって言われると嫌でも意識しちゃうわよ」
「そう言われると何度も言いたくなるな」
余計な事を言ったわ。
クリストフ様を見上げると楽しそうに笑う姿があった。
「お願いだから外では言わないでよ」
「外じゃなかったら良いのか?」
「今日は好きって言うの禁止だから」
肩を小突きながら言うと「分かったよ」と拗ねたように返された。
「ああ、好きじゃなかったら良いのか?」
「どういう事?」
「愛してるとか?」
「それも禁止だから」
だって言われたら恥ずかしくなっちゃうじゃない。
その気持ちは声に出さなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。